トピックス -企業家倶楽部

2019年03月29日

デジタル時代に御朱印ブーム

企業家倶楽部2019年4月号 ビジネストレンド





 朱印が静かなブームだ。寺社巡りが若い女性や外国人観光客にも人気となり、全国各地の神社仏閣が季節や時期を問わず参拝客で賑わう中、朱印を求める人も増加している。

 朱印とは寺社に参拝した証として、神職や寺務員により寺社印、社紋、社務所印が押され、さらに寺社名・祭神・本尊の名前や参拝日時などが墨書されたもの。手書きだけでなく、判子もあり、敬称として御朱印と呼ばれる。朱印は拝受所、朱印所などに行けば、初穂料数百円で拝受が可能だ。

 月例法要などに合わせた期日限定や色鮮やかな図柄入りの朱印を求めて、長蛇の列ができることもしばしば。朱印は信仰の「しるし」であるわけだが、昨今の過熱ぶりに観光名所の記念スタンプラリーと混同する人もおり、「寺社以外のスタンプが押されている帳面はお断り」という注意書きも見られるほどだ。

 その朱印用の帳面というのが御朱印帳。こちらも各寺社の拝受所等で購入できる。一部例外はあるものの、一冊の御朱印帳の中に、仏閣と神社の両方の朱印を頂くことが可能。八百万の神を拝み、信仰に大らかな日本人は、神道も仏教も共に信仰する神仏習合という独自の形を発展させた。明治維新後に全国で起こった仏教排斥運動である廃仏毀釈(きしゃく)の影響を大きく受けた地域や寺院もあるが、現在では神社も仏閣も共に、日本の大切な遺産であることを否定する人はいないだろう。




 なぜ今、御朱印なのか。

 AI時代が到来した今、ビッグデータによる解析で、多くの仕事が人工知能に取って代わられ、生活が大きく変わっていくと言われている。しかし、よく考えてみれば、私たちは既にデジタル世界の住人なのだ。

 今や大人も子どもも、オンオフ問わずデジタル機器に囲まれ生活している。一日中パソコンのモニターに向かって仕事をし、メールでやり取りをしている取引先の相手や、自社の他部署スタッフと会う機会が無いことなど珍しくはない。休日はネットゲームをプレイし、サイトが薦めてくる動画や音楽を鑑賞。友人とはスマホのチャットアプリで文字とスタンプだけのコミュニケーションをし、クリック一つで買物も完了。ネットで発信し、繋がっていく世界だ。そこに物理的なモノや人の移動は不要である。




 一方、朱印は基本的には、実際に寺社に参らなければ入手できない。寺社の所在地へ出かけ、参道を歩き、境内に入り、本殿または本堂に参拝してようやく拝受する。旅行先で、その土地や寺社の簡単な歴史を調べてから向かう人もいるだろう。

 周囲の自然と調和した敷地、四季折々の花が咲く庭を散策する。本堂や塔などの建築物、安置された仏像や仏具、宗教画などのアートに出会うこともできる。宝物館がない小規模の寺社であっても、そこは美術館や博物館に劣らない芸術品の宝庫だ。造立以来、数百年に渡って人々が守り、引き継いできた信仰の場所。教科書で学んだ歴史が実在していたこと、先人が繋いできた命の先、そしてこれから続く時の真ん中に自分が存在していると感じられるかもしれない。

 デジタルトランスフォーメーションにより、時代の変化のスピードは更に増していくと言われる。AIには理解不能だろうが、御朱印を拝受する行為が、人間にとっては癒しや希望になり、文化や歴史に触れる経験になる。加えて経済活動にもなっているのだから、万時好都合と言えるだろう。



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