トピックス -企業家倶楽部

2019年05月07日

アパレルからライフスタイル企業へと変身を加速/ストライプインターナショナル社長 石川康晴 氏 

企業家倶楽部2019年6月号 緊急リポート


2018年2月、ライフスタイルメガストアとして「hotelkoetokyo(ホテル コエ トウキョウ)」をオープンしたストライプインターナショナル。1 周年を迎えますます新境地を切り拓く。石川康晴社長は、この3月「koe(コエ)ドーナツ」1号店を京都にオープン、「アパレルがなぜドーナツ店を」と世間を驚かせた。ライフスタイル企業へと変身を加速する石川社長は、グローバル戦略ブランド「koe(コエ)」を強化し、世界市場を狙う。



斬新なドーナツファクトリー

 一年中観光客で賑わう京都、中でも観光客の往来が激しい新京極通りに新しい名所が誕生した。「koedonuts(コエドーナツ)」1号店である。全面ガラス張りの大きな店舗、中に入ると広いフロアの天井と壁には無数の竹かごが散りばめられ、訪れた人を「アッ」と驚かせる。デザインしたのは、日本を代表する建築家・隈研吾氏である。ワンフロア439平方メートルという広い店内には色とりどりのドーナツが並び、オープンキッチンとしてファクトリーを併設、ドーナツの全製造工程が見られる。たくさんの女性たちが、熱心に働く姿を見学しながら、出来立てのドーナツが味わえるのは格別だ。


斬新なドーナツファクトリー




テーマは「ウェルネス&エシカル」

「どうです。こんなドーナツ屋さん見たことないでしょう!」と、にこやかに出迎えてくれたのは、ストライプインターナショナルの石川康晴社長である。

 ライフスタイル企業へと変身を加速する石川社長だが、なぜドーナツ店に挑戦することになったのか。

「ドーナツは子供からシニアまで幅広く親しまれている最も身近なおやつだが、油で揚げるので高カロリーなイメージが強い。そこでウェルネスとエシカルをテーマに、再定義した。高カロリーなイメージなら低カロリーに、ケミカルな素材が入っているならオーガニック素材を使い、ヘルシーで環境にも配慮したエシカルなドーナツを開発した」と石川社長。まさに石川社長得意の逆張りの発想だ。

 原料へのこだわりは半端ない。「オーガニック」「天然由来」「地産地消」をキーワードに、自家製の有機小麦全粒粉をはじめ、京都美山産の美山牛乳や美卵、国産玄米油、きび糖、和三盆などを使用。店内には特製の石臼を設置、国産有機小麦を挽いている。ここまでやるかと驚くが、素材や作り方にもこだわった新感覚のドーナツを提供するという。

「セブンイレブンがドーナツに参入しドーナツ戦争勃発!」などと話題を呼んだことがあったが、今ではレジ横のドーナツは全て撤去された。セブンは自ら仕掛けたドーナツ戦争に敗退したことになる。その「セブンが成しえなかったドーナツの世界に敢えてチャレンジした」というのだから、石川社長のチャレンジ精神もただものではない。

 京都らしく和を意識したドーナツは、「ほうじ茶」「赤紫蘇(あかじそ)クルーラー」「ベイクドーナツ黒豆」「ヴィーガンドーナツ抹茶」など37種類。イートインでは、ナイフとフォークで食べる新食感のドーナツを提案。地元京都のイチゴや生クリームをたっぷりトッピングした「ドーナツメルト」は、口の中でふわっととろけまるでショートケーキのようだ。何よりも自分のために目の前で作ってくれるのを見ているだけでワクワクする。

 イートインコーナーはスタンディングを含めて80席。そこから製造工程の全てを目で見て確認できるのは安心安全につながるという。


テーマは「ウェルネス&エシカル」

隈研吾氏がデザイン

 ほどなく世界的な建築デザイナーの隈研吾氏が現れた。

 この店のデザインの特徴を伺うと「石川社長の想いを聴き、京都の店らしく生活に密着した竹かごをベースにした。和の繊細さを感じさせながらも、ドーナツらしい楽しさとカジュアルさを表現した」と隈氏。

 京都嵐山の竹を使い、伝統的な六ツ目編みで作られた竹かごを572個使用。ドーム状に仕上げたインテリアはユニークだ。竹かごの網目から漏れる照明は優しく温かみがあり、落ち着いた独特の空間を醸し出す。

 京都大学大学院に学び、京都に馴染みの深い石川社長だが、市内きっての繁華街である新京極のこの場所に、大きなスペースを確保するのは難しい。ではなぜこの場所に出店できたのか。ストライプが東京本社を構える銀座の歌舞伎座タワーのオーナーから、「松竹の発祥地の京都のこの場所でイノベーションを起こして欲しい」と依頼されたと打ち明ける。

 何をテーマにどんな店をつくろうかと試行錯誤し、国民的おやつのドーナツをコエ流のエシカルな視点で再定義することを思いついた。

「隈さんは日本で最もグローバルにリーチできる建築家。歌舞伎座タワーの設計で縁のある隈さんにお願いした」と語る。

「石川社長はアートに大変造詣が深く、企業家としても世界にチャレンジする素晴らしい人、今後も世界展開する際にはぜひコラボしたい」と隈氏は笑顔を向ける。


 隈研吾氏がデザイン

ドーナツ業界に革命を

 工場併設型の店舗については「これからの小売りはエンターテインメント性が必要。店内で高揚感を味わえることが、ネット通販との差別化になる」と石川社長。

 ドーナツだけではない、イラストレーター長場雄氏がメインキャラクターとして“ドーナツ博士”を創り出し、そのイラストを配したカップやTシャツなど関連グッズも揃えている。オシャレでフォトジェニックな空間とドーナツは、京都の新しい名所になること間違いない。

 この1号店が軌道に乗れば、東京はもちろん、高所得層が多い中国の広州やドーナツ発祥の地である米国のエシカルマインドの高い都市への出店も考えている。

「ドーナツ業界にイノベーションを起こし、グローバルに展開していきたい」と意気込む石川社長。飽くなきチャレンジ精神に火がついたようだ。


 ドーナツ業界に革命を




進化するホテルコエトウキョウ

 このコエドーナツだけではない。衣食住+遊を具現化するライフスタイルメガストアとして、渋谷にオープンした「hotel koe tokyo(以下ホテル コエ トウキョウ)は1周年を迎え、新たな展開を見せている。

 2月初旬は1周年を記念し、音楽イベントを開催、2階のコエでは記念のグッズを販売、コエファンを喜ばせた。そして2月15日、3階のホテルの飲食スペースは、一日限りのスナックがオープン、関係者で盛り上がった。


 進化するホテルコエトウキョウ










空間貸しという新ビジネス

 2019年4月3日、「ホテル コエ トウキョウ」がピンク色で染め上げられた。200メートル手前から目を惹くショッキングピンクの色は女性たちを駆り立て、中へと誘う。中に入ってビックリ。いつもの1階のフードスペースは、ディオールのイベントスペースへと変身、人々の笑顔で溢れていた。

 今や「ホテル コエ トウキョウ」は、さまざまなイベントスペースとして活用されている。ルイヴィトンなどを手掛けるLVMHグループやスーパーカーのランボルギーニなど、ラグジュアリブランドからのオファーが続々と入っているという。今回のディオールへのスペース貸しもその一環だ。

 渋谷のハチ公前口から徒歩5分という立地、広い1階のフードスペースには、音楽装置も完備。2階へと続く大階段を上がると、ゆったりとしたコエのショップフロア、3階にはホテル。この場所、この設え、この空間が、イベントスペースとしてピッタリなのだ。

 最近はIT企業のイベントも入っているという。

 さらに面白いのは、撮影の現場としての活用だ。茶室を設置したホテル空間は、対談場所などにも使われるという。秋には映画とのタイアップも考えていると語る。

「当初はこうしたスペース貸しのビジネスは予測していなかった」と石川社長。新しい利用価値に驚いている。


 空間貸しという新ビジネス

「ホテル コエ トウキョウ」をブランディング

 コエとしてだけでなく、「ホテル コエ トウキョウ」の方がブランドを創りやすいと石川社長、ブランディングに力を注ぐ。

「今後は『ホテル コエ トウキョウ』のパン、スイーツなどを創りたい。ホテルブランドの商品は高いというイメージがあるが、我々らしくカジュアルな発想で挑戦したい」と語る。

 すでに1階の「koe lobby」は、ブレッド&ダイニングとして、焼きたてのパンを提供、お客を喜ばせている。最近は食パンが人気だが、その食パンブームに逆張り?とばかりに、バゲット専門店を提案した。「パンラボ」主宰の池田浩明氏が監修。実際のメニューやパンは渡邊大シェフが考案したというが、なかなかユニークで、評判を呼んだ。そしてこの3月には第二弾として、「花よりバゲット」を提案している。

 京都の「コエドーナツ」はその一環となるが、今後はこれにスイーツなども加え、「ホテルコエトーキョウ」ブランドの商品を創り出したいという。

「衣食住+遊」を体現できる場として「ホテル コエ トウキョウ」のブランド確立に熱心な石川社長。様々な変化を受け止め、実験中というのが現状だ。ブレッド&ダイニングはもとより、アパレルの売り場も23時までオープン、キャッシュレスに対応。

 週末にはさまざまな音楽イベントを実施、渋谷の大人の遊び場として定着しつつある。こうしたアーティストとの交流も、「ホテル コエ トウキョウ」のブランドづくりには最適だ。

 さらにここではジェンダーレスを重視し、アパレル商品の3割はジェンダーレス商品という。今はかっちりしすぎない「ゆるい」ことがトレンドと語る石川社長、1階にはジェンダーレスを表示したレストルームも完備している。日本はまだこうした対応は遅れているが、逆に積極的に対応しているのも、常に世界を見つめる石川社長らしい。

 この秋には隣にパルコが完成、2020年にオリンピックが開催されれば、人の流れが変わる。そのど真ん中にある「ホテルコエトウキョウ」の価値はますます高まることであろう。「1年で渋谷のランドマークになれた」と語る石川社長の強気もうなずける。

 この1年でしっかりブランディングし、2020年春から本格的に拡大していきたいと語る。


「ホテル コエ トウキョウ」をブランディング




エシカルを追求

 コエはエシカルをテーマに立ち上げたライフスタイルブランドだ。だからこそ京都のコエドーナツでも、ウェルネス&エシカルをテーマに据えている。

 そして19年5月からは、ショッピングバッグを有料化し、プラスチック素材から紙製にすると宣言した。海洋環境の負荷削減を目指すためだ。日本のファッション業界でここまで踏み切った企業はまだない。石川社長の本気の取り組みに拍手を贈りたい。

 グローバルブランド「コエ」をきっちりブランディング。今後200店を出店したいと意気込む石川社長、チャレンジの手を休めることはない。ライフスタイル業へと舵を切ったいま、時代の波に乗り、どう進化させていくのか、石川社長から目が離せない。



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