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2019年05月09日

IT業界から次世代の価値を創る/SHIFT社長 丹下 大

企業家倶楽部2019年6月号 トップに聞く


銀行のATMやスマホのアプリ、これらのサービスを私たちは当たり前のように利用している。しかし、私たちが安心してサービスを享受できるのはソフトウェアが品質保証・テストを経ているからだ。この品質保証サービスを展開し、進化を続けているのがSHIFTである。品質保証・テストを担う人材に対する人事制度にも力を入れる同社の丹下大社長に、これからの人材のあり方について伺った。聞き手:本誌編集長 徳永健一



5兆円の潜在市場に切り込む

問 御社が行っているソフトウェアの品質保証・テストとはどのようなものでしょうか。

丹下 ソフトウェアプログラムが意図した通りに動くかを検証するサービスです。欠陥や不具合を検出するだけでなく、製品としての品質の要件を満たしているか調べ、品質レベルを向上、維持する業務など多岐に渡ります。スマートフォンアプリやATMを利用する際、正しく動作するか不安を感じながら利用することはありませんよね。しかし、完成したばかりのソフトウェアは高確率で正しく動作しません。利用者に正しく動作するのが当たり前という状態で商品を提供するためには、ソフトウェアテストが欠かせないのです。

問 具体的にどのようなソフトウェアに活用されているのですか。

丹下 例えばネットショッピングを利用する際に、ウェブ決済や住所情報などのデータ伝達に不具合があっては安心できません。しかし、弊社が画面上で見えない管理システムまで全てテストしているので、利用者は安心して買い物ができるというわけです。

問 現在、市場規模はどれほどでしょうか。

丹下 14・8兆円という巨大な日本のIT市場の中で、品質保証・テストに関する市場はその3分の1を占める5兆円とも言われています。しかし、外部企業にアウトソーシングされる業務はたったの1%程度しかありません。開発を専門とするITエンジニアが自身で品質保証・テストまで行っているのが現状です。

問 品質保証・テスト市場の潜在性は計り知れないですね。開発エンジニア自身が品質保証・テストを行う問題点は何でしょうか。

丹下 たとえ開発に優れたエンジニアだったとしても、品質保証・テストに対して優れた能力を持っているとは限りません。この2つには全く異なる資質が必要にもかかわらず、IT業界ではこの2つの分業体制が作られていないため、品質保証・テストのコストが高まり、品質低下にもつながっています。

 世間のイメージとして品質保証・テストは下請けの仕事だと捉えられていますが、実は誰でもできる仕事ではありません。そこで弊社では、品質保証・テストにおいて高い能力のある人材を集めるために、「CAT検定」という独自の検定制度を作り、人材発掘に活用しています。そして、優れたテストエンジニアが仕事に対してしっかりやりがいと対価を得ることができる、そんな取り組みをしています。



合格率6%を突破した頭脳が集結

問 「CAT検定」とはどのような検定なのでしょうか。

丹下 ウェブ上で30分ほどかかるテストで、品質保証が保たれる条件などを素早く、正確に答えることができるかを見ています。合格率はわずか6%と狭き門ですが、このテストにより、品質保証・テストの生産性が3倍も高いという自社データも出ています。

問 6%の狭き門を突破する合格者はどのような方でしょうか。

丹下 プログラマーとしての能力ではなく、創造的に様々なテストの場合分けを考えられる地頭の良さを持つ人ですね。30分以内で終わらせるということが前提ですが、受験者には時間制限は設けていません。その人に備わる能力を見たいので、伝える必要がないと考えています。


合格率6%を突破した頭脳が集結

IT業界のひずみを改善したい

問 丹下社長がソフトウェアの品質保証・テスト事業を始めた経緯は何でしょうか。

丹下 創業当初主力としていたコンサルティング事業で、大手IT企業の受託を受けた時、その企業の品質テストを請け負っていた会社のあまりにも非効率的な実態を目の当たりにしたことがきっかけです。労働集約的・属人的・非効率的なIT業界のひずみを改善することにビジネスチャンスを見出し、2009年にソフトウェアの品質保証・テスト事業へと大きく切り換えました。会社として、社員が幸せになり、お客様も搾取されず、ユーザーが安心安全にソフトウェアを使える世界を築きたいと考えています。

問 最も苦労されたことは何ですか。 

丹下 自分の天職を見つけることですね。創業当初から2010年頃まではコンサルティング以外にも、モバイルサービス、広告媒体、仮想通貨など様々な事業を行ってきました。その中で何が1番自分に向いているのか考え、B2Bビジネスが向いていると結論付けました。そして、多くの人を雇うことで、新たなコミュニティを作り、資本主義や社会主義ではない、第3の世界を作りたいという想いに至りました。「SHIFT」という社名には、資本主義をシフトさせたいという想いが込められています。



資本主義の次へSHIFT

問 ポスト資本主義とは具体的にどのようなものでしょうか。

丹下 一言で言うと全ての人が信用を享受できるということです。例えば、有名人などのカリスマ的な人が宣伝する商品は売れますよね。それは資本家に代わる信用を持った人だけが一人勝ちしているということなのです。そんな信用を全ての人が当然の権利として持つことができる世界にしていきたいと思っています。

問 丹下社長が考える信用とはどのようなものでしょうか。

丹下 今まで、信用は学歴や資格、役職が判断要素になっていました。しかし、それは単なるタグ付けでしかありません。良い大学を出たからといって頭が良いとは限りません。例えばゴミを拾ったり、困っている人を助けたりすることは良いことであるはずなのに、評価されにくいがためにやらない人が多い。だとしたら、良いことをした時にスコアが貯まった方が良いことをしようというモチベーションにもなり、社会が良い方向へと変わると考えています。

問 肩書ではなく、人間の本質的な部分で信用を測るということですね。

丹下 その通りです。例えば、新卒から10年間、同じ会社で頑張り、年収が800万円もらえるまでになったとします。しかし、その会社で積み上げてきた実績や信用は転職する時にリセットされてしまいます。新しい会社では実績がないため、年収を下げられてしまう。信用を構成する要素が転職する時に途切れてしまうのはおかしいですよね。資本主義においてはお金が信用の代わりでしたが、資本主義から次の主義へとシフトさせるためには、信用や経験値を保存し、どこでも共通して使える状態が必要不可欠です。弊社では信用スコアを付ける取り組みをしており、それをデータベース化し、社内だけでなく転職した時にもその信用スコアが引き継げるような会社を目指しています。

問 お金ではなく、人としての信用を資産として持ち続けられるようにサポートしているのですね。 御社の信用スコアのデータはどのように取っているのでしょうか。

丹下 例えばイベントの出席率です。せっかく会社に所属して、色々な人から学べる機会があるのに、それを利用しないのでは一人で仕事をしているのと同じです。会社の資産を積極的に使おうという意思の表れとしてイベントの出席率をスコアリングしています。

 また、フォロワーがいるかどうかも信用スコアの重要な指標としてデータを取っています。 

問 フォロワーの有無はどのようにデータを取っているのですか。

丹下 上司部下関係なく、誰と働きたいかというアンケートを取っています。このデータと昇給率の相関関係は如実に出ていて、フォロワーが10人以上いる社員は昇給率も必然的に上がっています。

問 フォロワーを重要視する理由は何でしょうか。

丹下 例えば、1000万円貯金があって、素晴らしい会社を作った人がいたとして、普通だったらそのノウハウを共有して欲しいという人はたくさんいるはずです。しかし、友達がいなかったら、誰からも声が掛からないでしょう。同じように社内においても、あの人となら一緒に仕事がしたいと思ってもらえることによって、会社の中で働きやすくなるだけでなく、仕事を任されやすくなるので、それを積み重ねた結果チーム力が向上するのです。そのような意味でフォロワーを重視しています。



やりがいと給料の掛け算で社員をブーストする

問 信用スコアのデータはどのように活用しているのでしょうか。

丹下 実は従業員の内の800人の社員の給料は全て私が管理しています。半期に一回査定をして、毎年10%ほど全員の給料が伸びています。その査定の際に信用スコアを活用していて、フォロワーが多ければ、チームの仕事で能力が発揮できるので、当然給料に反映されます。信用スコアを通じて、私では分からないような目に見えない部分まで評価できるのです。

問 信用スコアという明確な判断基準で評価することで、社員の方のモチベーションが上がりそうです。

丹下 人間は怠惰な生き物なので、セルフプロデュースしたり、モチベーションを上げたりしようとする人は多くありません。だからこそ会社として、社員を後押ししていきたいと思っています。正当に評価して、やりがいのある仕事を提供できているか、結果として給料を上げ、満足度を高められているかを常に気にしています。

問 最後に今後の目標を教えて下さい。

丹下 弊社の人事システムを活用し、優秀なエンジニアが正当な評価と報酬を得られ、幸せに働ける会社を目指したいです。そして、信用を全ての人が享受できるような資本主義の次の社会を作って行きたいと思います。

P r o f i l e

丹下 大 (たんげ・まさる)

1974 年生まれ。広島県出身。京都大学大学院工学研究科機械物理工学修了。株式会社インクス(現SOLIZE株式会社)に入社し、たった3 名のコンサルティング部門を5年で売上げ50 億円、140人のコンサルティング部隊へ成長させる。2005年9月、コンサルティング部門マネージャーを経て、SHIFTを設立。代表取締役社長に就任。2014年11月に東証マザーズ上場。海外展開も含め、更なる事業拡大を意欲的に進める。



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