トピックス -企業家倶楽部

2019年05月16日

5次元経営のすすめ

企業家倶楽部2019年6月号 視点論点


 米国発のテクノロジー企業「GAFA」の影響力は世界中に及んでいます。この20年で私たちのビジネスのしかた、娯楽、コミュニケーションやショッピングの方法を変えてしまいました。

 GAFAに遅れじと中国のベンチャー企業「BAT」も成長を続けています。彼ら世界の「プラットフォーマー」が、既存の企業と違うのは、ビッグデータを活用しネット上でビジネスを展開していることです。

 これまでのビジネスは、店舗が有る故に営業時間やスペースの制約から逃れられませんでした。分かりやすく既存企業を「3次元企業」と定義しましょう。

 一方の「プラットフォーマー」たちは、ビジネスの主戦場を店舗ではなく、ネット上に移し、「需要」と「供給」をマッチングする「場」を仕組みとして提供しています。

 ビッグデータは人々の過去の有益な情報の蓄積です。膨大なデータからAI(人工知能)を活用した新たな価値を導き出し、ビジネスにフィードバックする動きが益々増えることでしょう。つまり、3次元に「時間」という概念が加わり「4次元経営」に進化させています。

 そして、ここからは各社が独自の「5次元経営」を模索するステージです。前号で特集したネット印刷通販ラクスルの例を見てみましょう。私は日本発のプラットフォーマーになる可能性があると期待しています。ユーザーは今まで印刷会社に相手にされなかった小口の印刷も可能になり、さらに安価にパンフレットや名刺を作って、ビジネスで役立てることが出来るようになりました。

 しかし、ラクスルが成功するポイントは別にあります。それは全国に2万件あると言われる中小印刷会社の経営課題を解決していることです。大手に比べ生産性の低い中小企業は稼働率4割と言われ、非効率な経営をしてきました。

 ラクスルの提案するシェアリングエコノミーの仕組みに加わることで、販売促進にコストや時間を掛けず、得意な印刷に集中できるようになります。客は統一ブランドのラクスルで見つけてくれるのですから、生産性を上げることは難しくありません。

 ネットワーク化された中小企業は仮想的に大手に引けを取らない印刷能力を持ちます。非稼働の印刷所の情報を把握しているので、大口の注文だけでなく、小口にも対応可能になり新たな市場を作り出しています。プラットフォーマーは、自社だけで客を抱え込むのではなく、業界の課題を解決する仕組みを作っています。このように産業全体を見渡す視野を持つことが重要です。

 さらにITを駆使したテクノロジー企業ですから、空間や時間から解放され、これまでのように大口客や売れ筋以外は排除するようなこともありません。月に数回しかないような小口のニーズも拾い積み上げることで、総額が売れ筋商品の合計を凌駕することが可能になります。この「ロングテール理論」についてはまた別で触れましょう。

 プラットフォーマーは、ユーザーのメリットだけでなく、そこに関わる中小企業など同業他社にも実利があります。共存共栄という「共感」が成長の推進力となる「5次元経営」と言えるでしょう。

 高次元になればなるほど、他社は真似することが難しくなり、差別化要因になります。エイチ・アイ・エスは、「割安感という価格戦略」で差別化を図りました。ユニクロは、「品質に対する信頼」という次元を付加して、世界企業に成長しました。ソフトバンクは、次に何を仕掛けてくるのか「ワクワク感」を演出することにかけては定評があります。

 あなたの会社はどんな強みを活かして、「高次元経営」を目指しますか。まずは業界の課題に正面から向き合うこともプラットフォーマーへの第一歩となります。    (T)



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