トピックス -企業家倶楽部

2019年05月20日

論理的に思考し物事の核心を突く/秋山 勝の人的ネットワーク

企業家倶楽部2019年6月号 ベーシック特集第5部


常に自然体で自らの考えを明文化する秋山。その論理的な思考があればこそ、周囲の経営者たちをして「事業創出の天才」と言わしめるほど数多くの新規事業を成功させてきた。一見複雑に見える物事の核心を突き、シンプルな構造へと組み換える秋山独自の思考方法は、常に驚愕の的だ。(文中敬称略)



新規事業創出の天才

アバージェンスCEO 大西秀亜 Hidetsugu Onishi


新規事業創出の天才


 ベーシック社外取締役の大西秀亜と秋山との出会いは2013年、出資先の株主向け報告会でのこと。大局を把握しながらも押しつけがましくない秋山の発言に、大西が興味を抱いたのがきっかけだった。

 その後ベーシックのオフィスを訪ね、秋山から会社についての考え方や方向性などの話を聞くと、波長が合うと感じた。大西はファーストリテイリングで執行役員CFOを務め、11年にはコンサルティング会社を設立した身であったが、14年初頭にはボランティアでベーシックのオブザーバーとして定例会議に参加するようになる。そして同年6月、上場に向けた体制変更に伴って正式に顧問となった後、16年3月には社外取締役に就任した。

 秋山は物事を分かりやすく概念化して伝える能力が高く、そのプレゼンを聞いた者は証券会社やベンチャーキャピタルの人間でもすっかりベーシックのファンになってしまうほど。しかし、そんな秋山と部下との間には視点のギャップがあった。大きな意思決定をする際、大西は同レベルで議論できる相手として必要とされたことが何度もあり、秋山が部下との連携方法を模索していることが伺われた。

 一般的に事業をゼロから立ち上げるのはハードルが高いと言われているが、秋山はそれをいとも簡単に行い、かなりの確率でものにしてしまう。ベーシックが「社会のあらゆる問題を解決する」ことを掲げる中、秋山は問題解決に対して通常とは異なるアプローチを取ることで、それをすんなりビジネスに仕立てるのだ。そうした秋山の姿を見てきた大西は「新規事業創出の天才で、羨ましいくらいの才能」と称賛する。

 秋山は多くの事業を興し、ある程度成長させては売却を繰り返してきた。中でもウエディングポータルサイト事業売却の際は、責任者も含めて会社ごと売却先への移籍となったが、なんとその事業責任者は秋山の妻であった。

 プライベートでも付き合いのある大西は、仲睦まじい夫婦の様子や、良き家庭人である秋山をよく知っている。だからこそ、感情を差し挟まず公私を切り分け、全体最適を考えてビジネスを粛々と進められる秋山の胆力に驚き、そのユニークさを改めて感じたという。

 大西は事業部を増やし過ぎることには否定的だったが、「問題解決」が秋山の根源的な欲求であり、新規事業創出が彼のモチベーションを向上させていることは否めないため、表立って反対はしてこなかった。

 しかし、さらなる企業の成長を目指していくためには、利益を生み出せる部門と今後伸ばしていく部門をコントロール可能な数に絞る必要がある。「現在ベーシックが進めている大規模な部門改編は、熟慮の末の決断なのでしょう」と大西は推察する。

 新しい役員陣には、優秀な人材が集結した。秋山の人間的魅力や発信力に惹きつけられ、自然に人も情報も集まってくるのだ。そして、秋山はその優秀なブレーンに権限を委譲し、ワンマン体制からチーム経営への移行に注力している。自らも経営者である大西は「任せるのは大変」と秋山の心情を思いやる。

 ベーシックの強みは「従来のビジネスで得てきた知見の集積」と大西。そして、今はそれを最大限に活用して成長事業を伸ばしていく段階だ。

「ワクワクするような夢がある」成長事業だけでなく、しっかり足元の利益を生み出すマッチングメディアなどの既存事業があることこそ同社の魅力である。「一緒に大きな目標を達成しましょう」。



発想力に長けた戦略家

識学社長 安藤広大 Kodai Ando
発想力に長けた戦略家


 組織コンサルティングを手掛け、今年2月には東証マザーズ上場を果たすなど勢いに乗る識学。同社を率いる安藤広大が秋山と出会ったのは、2016年のことだ。識学に興味を持った秋山が、知人を介して連絡してきたのがきっかけであった。

 既に有名な経営者であった秋山と会うのは緊張したが、彼は偉ぶるような様子など微塵も見せず、率直に疑問などを尋ねてきた。

 まずは識学について一度話をしたところ、秋山は一週間ほど悩んだ末、導入を決断。当時秋山は、組織に緩みが生じて会社の成長が鈍化していると感じており、再度社内を引き締めるため、識学の仕組みを自らしっかり理解したいと考えていた。

「秋山さんはご自身で様々な成功や失敗を繰り返して来られたので、識学の思考法に対する理解度はとても高かったですね。これまでの経験の答え合わせに近い形で学ばれていた印象を受けました」

 実際に識学のプログラムを終えて、「考えが整理された」と語った秋山。その体験を自身の手で社内に落とし込むため、資料まで作成したという。しかし、これを自前で組織に共有するのは難しく、安藤と会う中で、今度は識学を社内により浸透させるプログラムを導入するに至った。

 企業として成長していかねばならない中で、厳しくすべき局面は必ずやって来る。しかし、そうしたストレスが掛かると、どうしても辞めてしまう社員は出るだろう。秋山の悩みの種はそこにあった。

「秋山さんは優しすぎた。競争環境で生き残るため、会社の引き締めは避けて通れない道です。秋山さんも、長い時間軸で見た時にそちらを選択したということでしょう」

 安藤曰く、経営は戦略と組織運営の二つに分かれる。中でも重要と考えるのが組織運営だ。

「環境と共にニーズが変化する以上、戦略は陳腐化します。したがって、トップが戦略で当て続けるのは難しい。ならば機能的に正しい戦略を選択できる組織にしなければなりません。もちろん、トップの意思決定による戦略・戦術は重要ですが、組織として正しく市場環境を見極めて動けることの方が大事です」

 一方、秋山は戦略の経営者だ。それだけでは会社が伸び悩むことを認識したからこそ、組織運営の優先度を高めて識学の導入にも至ったわけだが、0から1を生む事業創造力には安藤も目を見張るものがある。

「市場のニーズを見抜いて事業を作ることに関して、秋山さんは私に無いものを持っています。市場の捉え方や、豊富なビジネスアイデアを聞くと、いつも勉強になります」

 あまりにも秋山の発想力が長けているので、安藤は「自分はその方向で勝負するのは止めた方が良い」と悟ったほどだ。組織運営を徹底することで、その中からアイデアが出てくるような経営を目指している。

 そんな識学も、ベーシックの「フェレットワン」を導入したことにより、ウェブマーケティングで成功を収めた。安藤は「識学的な組織運営とフェレットワンは非常に相性が良い」と説く。

 フェレットワンは申し分の無い機能を擁しているが、「自ら成果を上げよう」という意識の社員が集まった自走型の組織が作れていなければ、その豊富な機能も使いこなせない。そして、そうした組織の構築に一役買っているのが識学というわけだ。

「今は会社が変わる、一番ストレスの掛かる時期です。ただ、ここを乗り越えたその先に、秋山さんの理想とする会社が待っていますので、それを信じて頑張ってください」



刺激し合える経営者同士

フィードフォース 代表 塚田耕司 Koji Tsukada
刺激し合える経営者同士


「常に問題の本質は何かを考えている人。まさに核心を突く人です」

 そう秋山を表現するのが、デジタル広告関連事業などを手掛けるフィードフォースで代表を務める塚田耕司だ。

 塚田と秋山の出会いは約16年前に遡る。塚田が以前経営していたウェブ制作の会社と、秋山が在籍していたトランス・コスモスが、共同でメールマーケティングを提案するお客がいた。その営業同行の際、初めて秋山と顔を合わせたのである。

 塚田が驚いたのは、営業における秋山のアグレッシブな姿勢。普通であれば、お客に遠慮してしまうものだが、秋山は臆することなく、何か問題があれば「それは違います」とハッキリ断言していた。

「まさに裏表の無い対応でしたね。お客様の課題の本質をしっかり捉え、何が必要なのかを提案する姿勢は強く印象に残っています」

 出会った当時から今に至るまで、問題の本質を突く秋山の姿は変わっていない。

 その案件を機に仲良くなり、たまに食事に行く間柄となった二人。とある席で、塚田は秋山から「独立したい」との想いを聞いた。秋山には必ず上手くいくと確信したビジネスアイデアがあったが、それが自社では認められなかったため、独立という考えに至ったという。

「秋山さんの場合、起業自体が目的ではありませんでした。彼が考えたビジネスアイデアを試す上で、一つの手段として会社を興したと言えます」

 今でも3カ月に1回の頻度で食事をするが、その席では先輩経営者として塚田がアドバイスをするのではなく、対等な立場でお互いの会社やビジネスについて熱く語り合う。そこで塚田は、毎回のように秋山の「アイデア」や「物事を見る視点」に驚かされるという。

 中でも印象に残っているのは、「値引きによる弊害」について秋山が熱弁した時のことだ。「なぜ値下げをしてはいけないのか」を、秋山は「会社の成長性」や「営業のマインド」といった様々な視点から理論的に掘り下げて話していた。これを聞いて塚田は、「値引きというたった1つの事柄について、これほど多様に、そして深く考えられるとは、やはり秋山さんは常人ではない」と感じた。

 ベーシックの会社としての強みについて、塚田は「やり切る力」と説く。例えば、ある企業がウェブサイトを作成する場合、数多くあるサービスの中から1つしか選ばれない。つまり、ベーシックが狙っているのは「お客にとって最高の選択肢にならなければ使ってもらえない」という非常に厳しいマーケットである。「このような難しい市場に腰を据えて、ナンバーワンを獲るためにやり切れるのは並大抵のことではない」と塚田は讃える。

 さらに、ベーシックのサービスが選ばれる理由としては、コンサルティングが付随している点がある。同社は「本格的に取り組みたい」というお客に対しては、課題解決のため親身になって要望を聞く。

「『本気で問題解決をしようという気が無ければ、一緒にはできません』との前提をしっかり伝えた上で営業活動を行う方針は、まさに秋山イズムが会社に根付いている証拠です」

 最後に塚田は、長年共に歩んできた同志である秋山にエールを送った。

「お互いの会社が小さかった頃から励まし合ってここまで来ました。会社の課題について相談できる相手がいるのは本当に助かります。これからも経営者同士、お互いに頑張りましょう」



動じることなく勝負できる男

日本創生投資 社長 三戸政和 Masakazu Mito
動じることなく勝負できる男


 中小企業に対する投資、事業承継・売却、経営再生支援などを行う日本創生投資。同社を率いるのが三戸政和だ。

 前職のベンチャーキャピタル時代、三戸の元に「投資を検討してもらえないか」と秋山が訪ねてきた。通常そうした訪問の際は、自己紹介や会社概要の説明がメインとなり、面談には1時間もかからない。だが、秋山との場合は違った。

 当時、まだ駆け出しのベンチャーキャピタリストであった三戸に対し、持ち前の人当たりの良さでフランクに話をした秋山。気付けば、面談時間は優に3時間を超えていた。

 その中で秋山は、自身の経歴から起業の経緯、さらには今後の展開に至るまで多岐に渡って語った。

「とにもかくにも、思考が深い経営者だと感じました。緻密に考えることができ、全ての行動に理由があり、勝率を最大限に高めることができる方だと思いましたね」

 こうして交友関係が始まった二人。三戸が秋山と話す中で印象的だったのが、「いくら沢山のお金を持っていても、幸せにはなれない」との言葉だ。秋山は、前職時代に上司であったオーナー社長が、何百億円という潤沢な資産を持ちながらもプライベートの問題で悩んでいる姿を見てきた。その経験から、お金ではなく、やりがいや人生の豊かさに価値観の軸を持つようになったという。

 この話を聞いた当時は、リーマンショック前であり、ベンチャー企業を取り巻く環境としてはやや拝金主義的な風潮があった。三戸は「社会の流れに惑わされることなく、自分の価値観をしっかり持っており、軸がブレない人だ」と改めて秋山の人間性に魅力を感じた。現在は、お金ではない価値観が社会のスタンダードになりつつある。秋山は、世の中の一歩先を既に見据えていたとも言えるであろう。

 三戸は秋山から「尻込みしない心」も学んだ。10年前、秋山はウエディングサイトのビジネスを手掛けようとしていた。ただ、当時からその業界は一社が一人勝ちしている状態で、戦いを挑むこと自体がタブーであった。

 ベンチャー企業は本来、規模や投資体力の面から、目の前の勝ちやすいビジネスで勝負をするのが定石。しかし秋山は、果敢に正面から戦いを挑んでいったという。「大きく勝負することを厭わず、尻込みしない秋山社長の胆力には感銘を受けた」と三戸は語る。

 ベーシックの強みについて、三戸は「トライアンドエラーを繰り返すことができる環境」と分析する。ビジネスの賞味期限がどんどん短くなっているベンチャー業界では、「とにかく打席に立つ」という精神が一番重要になってくる。

 以前ベーシックがうどん屋の海外展開を始めた時には、流石の三戸も「秋山社長は何を目指しているのだろうか」と疑問に思った。だが本人に真意を聞くと、緻密に計算された戦略の下で事業を展開していた。「打率の高い秋山社長が打席に立ち続けたら、強いに決まっています」と三戸は舌を巻く。

 これまでに1000人を超える起業家を見てきた三戸。秋山との交友を深める中で、彼が「一挙手一投足に思想や哲学がある、深みのある経営者」だと再認識している。

「秋山社長は緻密に計算しながらも、大ナタを振るえる方です。周りに流されることなく、自分の世界観を創り出せる経営者として、他に類を見ない社会的価値を世に創出してもらいたいですね」



少年のような兄貴分

ストリートスマート 代表 松林大輔 Daisuke Matsubayashi


 少年のような兄貴分


 ワークスタイルの変革などを提案しているストリートスマート。同社を率いる松林大輔と秋山との出会いは数年前、知人からの紹介がきっかけだった。以来、密な交流が続いている。

「長い付き合いのような気がします。ビジネスの話で盛り上がり、とんとん拍子に一緒に仕事をする間柄になりました」

 秋山の第一印象は「チャレンジをスピーディーに行う起業家」。松林は「秋山さんとは毎週のように会っているのに、会う度に新しい事業やアイデアの話が出てくるので、話をするのがとても楽しい。新しいものを常に生み出している人ですね。秋山さんの方が年齢も経験も上ですから、私の兄貴分です」と慕う。

 アイデアを実際に形にするのは大変な労力だ。特に、秋山の新規事業を開発するスピードは常識を遥かに凌駕しているため、周囲との摩擦や誤解も起こりやすい。お互い経営者ゆえの悩みや組織作りの相談をし合う仲である。

 また現在では、最先端テクノロジーと生産性に関するカンファレンス「SPIC」の共催など、個人的だけでなく、会社同士の付き合いも密になっている。ウェブマーケティング支援を事業の柱とするベーシックと、リアルなオペレーションの運用を得意とするストリートスマート。ビジネスとして相性も良い。

「秋山さんは事業ありきの起業家、私は人ありきの起業家。良い悪いではなく、タイプの違いです」と語る松林。秋山の言動は常に人より先、それも最先端を行く。「秋山さんは新しいものを生み出す天才ですが、そういう人は周囲に理解されがたい一面もあるのが常です」と松林は苦笑する。

 そんな秋山から「皆に言ってもなかなか伝わらない」との相談を受け、「それならうちがマニュアルを作成しますよ」と仕事に繋がったこともあった。第三者の口から説明されて、理解が進むこともあるのだ。

 松林にとって、秋山の人脈の広さもまた印象深い。

「常に誰かとチャットしていますね。ひょんな話から人を紹介されたり、仕事の話に繋がったり。私が何かのサービスを紹介すると、既にその運営会社の社長と知り合いだったこともあります」

 秋山には、自身が純粋に面白いと思った事業や人を応援する気風がある。その一つの形が、ベーシックの運営する起業家支援プログラム「BSKET」だ。

「彼は面白いと思ったものを放っておけないんです。私も社員からは、自分の思ったようにやりたいワガママ少年と言われていますが、秋山さんは私などよりもっと純粋で、夢中になって走っている。その純粋無垢さが人を惹きつけるのでしょう。どこまでもオープンマインドで、打算的なところがありません」

 困っているといつも親身に相談に乗り、フラットに話を聞いてくれる秋山。彼は松林にとって大好きな先輩であり、その生き様は人として、また起業家として憧れの存在だ。そんな秋山に、松林は後輩として想いとメッセージを語った。

「秋山さんの背中を追っている後輩はたくさんいます。そうした後輩をけん引するためにも、もっともっと大きく羽ばたいていってほしい。お互い経営者として大変なこともありますが、これからも後輩にとって面倒見良く応援してくれる、ありがたい存在であり続けていただければと思います」



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