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2019年05月23日

物語コーポレーションに学ぶ13期連続増収増益を支える人財採用戦略/物語コーポレーション・社友 臥龍こと角田識之

企業家倶楽部2019年6月号 元気な会社の人づくり


少子高齢化の影響から人手不足倒産が激増している。特に宿泊業や外食産業などは「採用難」と「高い離職率」のダブルパンチに苦しんでいる。その中にあって外食産業の雄・物語コーポレーション(以下当社と記す)は逆風の中、逞しく前進している。13期連続の増収増益で、グループでの店舗数(海外含む)470店舗、売上高793億円。当社が掲げる企業文化は「物語的大家族主義」と呼ばれている。この企業文化から生まれた「採用力・育成力・定着力」の一端をご紹介する。



1.物語的大家族主義

 当社の理念小冊子には、「物語コーポレーションは『個』の尊厳を『組織』の尊厳より上位に置く企業です」と定義されている。最初、これを一読したときには、「正気か?」と驚いたものだ。筆者も上場企業に籍を置いた経験があるが、その中で見聞きしたことは、「組織」のメンツや見栄のため、「個人」の尊厳が軽視され、損なわれた風景ばかりだった。これは組織の大小を問わず、島国かつ村社会構造の日本特有の風土と思われる。これに真っ向から反旗を翻したのが、当社の実質的創業者・小林佳雄氏(現:取締役会長)だった。



2.意思決定と議論

 ここ5年前より日本企業の生産性の低さが指摘されてきた。しかし一向に改善が見られない。とうとう政府主導で「働き方改革」なるものまで打ち出されてきた。働き方改革の本質は、「一人当たりの生産性の向上」つまり「生産性改革」である。IT(クラウド)やIoTなどの投資も勿論必要であるが、一切費用の掛からない「生産性改革」がある。それが「意思決定」と「議論」だ。「意思決定による倍速化」×「議論による局面最善手」=「生産性倍増の法則」

 実は当社の13期連続増収増益の中核エンジンは、上記の「生産性倍増の法則」なのだ。ではやればいいではないかと思われがちだが、事はそう簡単ではない。2010年に小林佳雄氏が「カンブリア宮殿」に出演したとき、進行の村上龍氏が「意思決定、これは日本では最も理解されないものの一つ」とコメントしていた。事例を挙げてみよう。

 海外で数か国の企業代表が事業開発案件のテーブルに着いた時、呆れられるのが、日本人の「この結論は本社に伺ってからご回答します」という発言だ。「あなたの会社は、この場で意思決定できない人を派遣しているのですか?」

 あるいは日本企業では当たり前に使われている「根回し」や「空気を読む」も、一歩世界に出れば、非常識でしかない。当社では、社内ルールに「根回し禁止」と明文化されている。事前に、常務のご意向はこれこれですと聞かされたのでは、議論の起きようがない。会議とは会して議論することだ。議論を尽くしに尽くして、この問題の解決やこの課題の実現には、これが最善の策であると意思決定することなのだ。

 実は、製造業が主役の時代、日本企業の生産性は、世界でも1位か2位だった。2000年代に入り、サービス業に主役が移ると、生産性は急低下していく。世界でも競争に勝つ「物造り」では出来た議論が、「人」が軸になってくると何故か鈍る。周りの空気を読まないで個人が意思決定し、自己表現が出来る。上司の顔色を窺ったり、場の空気を読んだりしないで本気の議論が出来る。こういう風土創りに、小林佳雄氏は心血を注いできた。ということは、求める人財も「意思決定と議論が出来る人」となる。採用活動においては、この人財像が明確でなければならない。これが、人財と風土の相思相愛関係を生みだすコツだ。相思相愛でないから早期離職が生まれるのだ。



3.仮面を脱いだ就活

 当社の入社式は4月1日。今年迎えたのは118名。この新人達の、当社へのファーストコンタクトの場面が実にユニークだ。ほぼ全員が「意思決定セミナー」受講が、入社へのきっかけだ。一般的には会社説明会と呼ばれる場面だが、ここで講師として立つのが小林佳雄氏。

 一部上場企業の会社説明会で、トップが2時間半、熱弁を揮うという事例を、筆者は他に知らない。しかも会社のことはほとんどしゃべらない。しかしこのセミナーを受講した学生の入社志願率は約50%と、とても高い。会社のことから先に話すと、焼き肉、ラーメン、お好み焼きなどの話となる。残念なことに、学生の外食産業志望率は低い。

 しかし、後悔しない人生の決め方、会社の選び方、その本質は「本物の意思決定」にあることを知った学生は、心の中でこうつぶやく。“ 自分が商社や保険会社や銀行を志望していたのは、親の期待、友達への見栄だったのではないか?これは小林さんの言う「偽物の意思決定」ではないのか?かっこいい生き方は「本物の意思決定」で生きることではないのか?この生き方を本気でさせてくれる会社は、物語コーポレーションではないか?”つまり、業種で選ぶのではなく、生き方で選ぶ「意思決定」に目覚めるセミナーなのだ。なお、このセミナー内容は、DVDとなってアマゾンで販売(検索:意思決定)しているので、是非見て欲しい。

 入社志望の学生は、会社見学会や3回の面接を経て内定に至るが、この中では先輩方が自ら意思決定し、実にイキイキと働いていることを体感する。よくある面接は、会社側は「採用したいからよそ行きの仮面をかぶる」、学生側も「採用されたいからよそ行きの仮面をかぶる」の仮面面接だが、当社では仮面を脱いだ「本気面接」を行う。お互いが仮面のままで結婚しても、すぐに現実が待っている。これでは早期離職の原因を作っているようなものだ。

 就活生が一番驚くのは、内定を出した後、「内定をもらったからといって、就職活動を止めてはだめ。人事を尽くしてから、やっぱり物語コーポレーションと言って欲しい」と言われることのようだ。内定を出した限りはもう他は回らないでという「オワハラ」が横行する中、どこまでも「本物の意思決定」を迫る当社の姿勢に、“ この企業文化は本物だ”と感じる学生も多い。


3.仮面を脱いだ就活

4.日本一長い入社式

 4月1日の入社式に筆者も参列したが、テレビ局3社、新聞社4社、雑誌社1社が取材に入っていた。理由は2つ。1つは9時から17時までの日本一長い入社式、そして10か国29名の外国籍社員が各国の民族衣装で参加する点だ。

 では何故、日本一長くなってしまうのか?それは「個」の尊厳を、組織運営の都合よりも上位に置くからだ。118名全員に、親や知人からの激励音声メッセージが流れる。外国籍社員へのメッセージには字幕が付く。そして一人ひとり固有の内容で書かれた「入社激励書」が授与される。その後、一人ひとりが「決意表明スピーチ」をする。118名分を読み上げ、握手する社長の加治幸夫氏は大変だ。仮に他の上場企業で、同様のことを発案したとして、「社長、6時間壇上で、入社激励をおねがいします」と言えるだろうか?当社でこれが出来るのは、「個」の尊厳を最上位に置く企業文化があるからだ。

 そして一人ひとりの決意表明においても、数人がマイクを使わない地声で語るという「意思決定」をしていた。そして全員に共通していたのが、「何々したいと思います」ではなく、「何々します」との言い切りだった。人の意思力は語尾に現れると言う。幾人かが、「何々したいと思います」と言いかけて、必死に「何々します」へと思考修正していることも伝わってきた。


4.日本一長い入社式

5.まとめ

1 理念型採用

 規模や業種で採用するのではない。理念で採用するのだ。何故なら、企業の目的は理念の実現。その同志を求めるのが採用活動。

2 人財像と風土のマッチング

 人財という種を蒔いて、それが発芽し、成長するのは、その種に適した風土があるからだ。人財像を明確にし、その人財(学生)に風土を「見える化」することだ。

3 採用はトップの志事

 人手不足倒産の時代。採用活動を現場に丸投げしては危険。採用はトップの志事と位置付ける。

臥龍こと角田識之

感動経営コンサルタントとして7社の世界一企業の実現など、数々の企業のV字回復を支援している。また、物語コーポレーションの社友として、経営陣のメンター役も務めている。



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