トピックス -企業家倶楽部

2019年06月07日

問題の本質を捉え顧客ニーズに応える/ベーシックの強さの秘密

企業家倶楽部2019年6月号 ベーシック特集第2部


正解の無いマーケティング領域において、ベーシックは素早い試行錯誤こそ成功への近道と説き、様々な指標をデータによって可視化することでこれを可能としている。顧客が抱える問題の本質を捉え、その解決に全力を注ぐプロ集団の強さの秘密に迫る。(文中敬称略)



強さの秘密1・時代の追い風

マーケティングの主役はウェブへ

 インターネットが誕生して早30年。ITはあらゆる業界に浸透し、いかなる企業にとっても必要不可欠な要素となっている。もはや「IT企業」という言葉の定義すら曖昧になっているほどだ。

 さらにスマートフォンが普及したことで、人々が情報を収集する際にはウェブで完結するようになった。したがって、各社が顧客へのアプローチを図る際にはウェブを通じて行えることが絶対条件となったが、そうしたウェブマーケティングを専門にしたIT人材を置ける企業は少ないのが現状だ。

 そうした悩みを解決してくれるのが、ベーシックの提供するSaaS「ferret One(フェレットワン)」である。

 一口に「ウェブマーケティング」と言っても、素養の無い大部分の人にとって、具体的には何をどのようにすれば良いのか分からない。そこでフェレットワンを導入した企業には、ベーシックが担当者を派遣。「何のために、誰に向けて、どのようなサイトを作るのか」といった初歩の初歩から二人三脚で指導を行う。

 初期費用は一律10万円。エントリープラン、スタンダードプラン、プロフェッショナルプランという順にグレードが上がり、それぞれ月額10万円、20万円、35万円となっている。当然、上位プランとなるほど機能が充実する。

 ベーシックが標榜するのは「ウェブマーケティングの大衆化」。クライアント企業には、貴重な経営資源を商品やサービスといった「本業」に投じてもらい、ベーシックはウェブマーケティングのプロとして、その部分のノウハウを提供しようという考えだ。

一気通貫したサポート体制が売り

 では、フェレットワンによって、企業は具体的にどのようなことが可能となるのだろうか。

 大手清涼飲料水メーカーのキリンビバレッジは、新規事業の立ち上げに当たって、フェレットワンを導入した。同社は、少人数体制で事業を拡大していくためにはウェブマーケティングが不可欠と判断。サービスの企画は納得感を持って進められていたものの、ウェブを通じた集客に関してはノウハウが無かったため、ベーシックに声をかけた。決め手となった理由は、フェレットワンならばウェブによる集客の体制が確立するまで一気通貫したサポートを受けられるためである。

 通常、ウェブマーケティングを行う場合、ウェブサイトの制作会社、サイトから情報を収集して分析する会社、集客のノウハウを提供する会社といった具合に、ニーズに応じて様々な企業に頼まなければならない。

 しかし、こうした複合的な手法では効率が悪く、スピード感も出ないのは明白だ。刻々と変化する外部環境に迅速に対応せねばならないという時、いちいち外注先企業までお伺いを立てねばならないのでは、ストレスが溜まる一方だろう。可能であれば、自社内でウェブマーケティング活動を全て完結してしまうのが望ましいに決まっている。

 ただ、そこに立ちはだかるのが現実の壁だ。ベーシックでSaaS事業部長を務める岩川聖史は「マーケティング活動もデジタル化に伴って高度化している。プロのマーケターですら時代に追いつくのに必死だ。ましてや一般企業が本格的なウェブマーケティングに取り組むのは難易度が高い」と業界の動向を述べる。

 そこでフェレットワンでは、クライアント企業の困りごとを本サービス一つで解決すべく、ウェブサイトの構築はもちろん、そこを訪れたお客のアクセス解析、行動履歴の可視化、問い合わせの管理、メール配信による集客など、幅広い機能を取り揃えた。更にベーシックは、SaaSである強みを生かし、お客からの要望に応じて次々に新機能を追加するなど、フェレットワン自体の進化にも余念が無い。

 導入企業としては、自社のウェブフェレットワンの料金体系マーケティングに関する情報が分かりやすく整理された状態で把握でき、使い勝手も良いため、内製化が可能となる。

 数多いマーケティングツールやノウハウを全て組み込み、誰もが簡単に使えるようにしたフェレットワン。これは言わば「ウェブマーケティングを行うための環境が整えられる簡易キット」のようなものだ。こうしたソリューションを提供することにより、ベーシックは「ウェブマーケティングの大衆化」を実現しようとしている。



強さの秘密2・本質を掴む

クライアントの本気度を試す

 ただし、フェレットワンさえ導入すれば、それだけで自動的に集客ができるかと言えば大間違いだ。フェレットワンはあくまで、企業がウェブマーケティングを効率的に行うためのツールであり、成果に繋げるためには自社の企業努力が欠かせない。アマゾンや楽天に自社商品を出品したからと言って、お客に対して有効なアプローチをしなければ全く売れないのと同じである。

 フェレットワンの導入に当たっては、ベーシック側からクライアントに条件を提示している。それは、「ウェブマーケティングの担当者を置くこと」。前述の岩川も「本気でウェブマーケティングに取り組もうとされている企業にこそ使っていただきたい」と語る。

 もちろん、そう言うからにはベーシック側も全力でコミットする。契約が成立すると、サイトの初期設定からマーケティング計画、デザインなどをクライアントと共に詰めて行く。約4カ月でウェブサイトの立ち上げまで漕ぎ着け、それまでに企業のウェブマーケティング担当者にはフェレットワンの使用方法をしっかり伝授。5カ月目からは、導入企業側だけでマーケティング活動を推進できるようにする。ベーシックは言わば、クライアントと伴走するトレーナーのような立ち位置を占めているわけだ。

忠実にビジョン体現に向かう

 大企業におけるウェブマーケティングでありがちなのが、月次で降りて来る巨額のマーケティング予算を使って、外注のウェブサイト制作会社やSEO(検索エンジン最適化)のコンサルティング企業に全てを丸投げするパターンだ。しかしこれでは、自社にウェブマーケティングに関するノウハウは全く蓄積されない。

 ベーシックがフェレットワン導入企業に「本気」を求めるのも、最終的に彼らがベーシックの手から離れ、自力でウェブマーケティングを行える状況を作れなければ、ビジョンが達成されたとは言えないからだ。クライアント企業内にノウハウが蓄積され、誰が担当者になってもウェブマーケティングの手法が引き継がれてこそ、真に「ウェブマーケティングが大衆化された」と言える。ベーシックはただ、「自分たちが目指すものは何か」という本質に忠実に動いているのだ。

マーケティングに正解は無い

 では具体的には、どのようにフェレットワンを駆使してウェブマーケティングの精度を高めていけば良いのだろうか。

 一つの解は、ABテストかもしれない。フェレットワンでは、実際に制作した二つのページを使い、簡単にABテストを行うことができる。写真やキャッチコピーを変えてユーザーの反応を見れば、自ずと答えは出てくるというものだ。

 また、ウェブサイトのページごとの集客状況をつぶさに観察することで、人々が何に興味を持っているのか見えてくることもある。マーケティングの施策を打った際には、その期間のサイトへのアクセスを確認すれば、如実に効果の有無が分かるだろう。

 だが、ベーシック社長の秋山勝は「マーケティングに正解など無い」と本質を語る。考えてみれば当たり前の話だ。競合他社がとった手法をそのまま自社で真似すれば上手く行くかと言うと、そうとは限らない。企業規模、客層、他事業とのシナジー、社風……挙げればキリが無いほど様々な要素が積み重なる中で経営判断を行い、その最終的な結果として出てくるのが「業績」という名の数字である。

 こうした中で成功を掴むための方法はたった一つ。とにかく素早く様々な施策を試し、その結果に応じて新たな手を打っていく、すなわち「PDCAを回す」ことだ。

 組織コンサルティングを手掛ける識学社長の安藤広大は、フェレットワン導入の成果について「私たちは元々PDCAのスピードが速い会社だったので、フェレットワンとは非常に相性が良かった。ウェブマーケティングも上手く行っている」と満足気に語る。

 それもそのはず。同社ではフェレットワンを導入したことによってウェブマーケティングの内製化が促進され、3カ月で150万円のコスト削減に繋がった。また、1件の顧客獲得にかかる費用は50%以下となった。

 ただ、PDCAを回すためには、原因と結果を可視化できるような数値的なデータが必要だ。行った施策の効果を検証した後、失敗事例については原因を究明して修正し、成功事例についてはその再現性を担保しなければ成長に繋がらない。成功・失敗の属人化を防ぎ、データを武器とするためのツールがフェレットワンと言えよう。



強さの秘密3・ユーザー志向

マーケター向けメディア「フェレット」

 ウェブサイトもあり、その方向性も決まっている状態でウェブマーケティングを任されたものの、右も左も分からない。そんな初級から中級のマーケターが、課題解決のために情報収集する上で有効なサイトを目指しているのが、メディアサイトの「ferret(フェレット)」である。会員数は約43万人を誇る(2019年4月現在)。

 記事を見ていくと、「30代・40代がいま使っているSNSは?」「ビジネスエリートが使いこなすGoog leスプレッドシートのテクニック」「ユーザーに好まれるTikTok広告とは?」といった、ウェブマーケティングを行う際に参考となりそうなタイトルが並ぶ。

「ウェブマーケティング講座」といった、ベーシックがこれまでの取り組みから得たノウハウを凝縮した無料コンテンツもダウンロード可能。また、初級者を中級に押し上げるネタとして、活躍しているマーケターへのインタビューや、企業のウェブマーケティング成功事例なども掲載している。

ユーザーの求める情報を腐らせない

 ユーザーが求めている記事を提供するため、ベーシック自身もSEO対策には余念が無い。グーグルが「この記事はユーザーにとって必要」と判断すると、結果的に検索された際の順位は上がっていく。つまり、検索結果の順位を上げることは、ユーザーにとって有益な情報を提供できていることの証でもあるのだ。

 フェレットには約8000に上る記事があるが、その中の2割にあたる1600記事が、全体のPV(ページビュー)を支えている。したがって、これらを軸に、古い記事でも通年的にニーズがある題材であれば、随時アップデートを行う。また、必要に応じて、より裾野を広げた記事も取り入れて行く。

 ベーシックでマーケティングプラットフォーム事業部長を務める達山裕一は「地道な事業ですが、ユーザーが求めている情報を腐らせてはいけない。顧客のニーズに対する答えを常に提供できるメディア、それが勝てるメディアへと繋がる」と語る。

PVに至る過程を徹底分析

 ユーザーのニーズには顕在ニーズと潜在ニーズの二つがある。顕在ニーズに関しては、グーグルで多く検索されているキーワードを抽出し、そうした記事を提供できているかを見れば良い。

 潜在ニーズについては、ユーザーに気付きを与える情報を提供せねばならない。そこで、こちらではSNSを活用し、ニーズがあると思われる記事を掲載して反応を見る。これまでのSNS投稿から、潜在ニーズをくすぐりやすいネタの目星は付いているという。

 また、PV一つとっても奥が深い。PVとは、ユーザー数× ユーザー一人当たりのページ閲覧数である。したがってメディアとしては「いかにユーザー数を増やすか」という軸と「いかに一人のユーザーに多くのページを読んでもらうか」という軸の二点を考えねばならない。

 ユーザー数を伸ばす上でも、「新規ユーザーに来てもらうためにすべきこと」と、「一度はサイトに来たものの離れてしまったユーザーを再び取り込むための施策」の二つがある。

 一方、ユーザー一人当たりのページ閲覧数を考える場合、当然ユーザーが2ページ目を読んでくれるかが鍵を握る。記事の下や右にあるオススメ記事に飛んでもらえなければならないわけだが、そのためには最初の記事をストレスなく読んでもらうことが不可欠だ。したがって、このケースでは「読了率」を指標とし、その数値を上げれば自ずと次のページに行ってもらえる確率が高まる。

 このように、最終的な結果指標としてのPVばかりに目を向けるのではなく、そこに至るまでの過程を細かく分析して施策を打つわけだ。

 フェレットは、「問題解決」というベーシックの軸に立脚したメディアだ。「やる気のある人が不足を感じないように、学ぶ機会を提供したい」と達山。これも全て、「ユーザーが欲する情報を発信する」というユーザー志向の結果である。



強さの秘密4・企業文化

一切の忖度無し

  ベーシックを支えるのが、個性豊かな社員たちだ。彼らが形成する企業文化は、他社とは一線を画している。

 まず特徴となるのが、変化を恐れない気質。経営陣が刷新され、会社が大きな転換期を迎える中、「私たちのような新参者が入って来ることによって反発が起こってもおかしくないと思っていたが、みんな温かく受け入れてくれた」と経営企画部長の角田剛史は驚く。

 そして興味深いのは、「忖度」無く言いたいことを言い合える風土だ。何か意見や提案がある場合、普通ならば「直属の上司に相談の上で発言すべき」などと考えてしまうものだが、そうした「根回し」は一切無い。

 ベーシックが活用する社内コミュニケーションツールの中には、様々なチームの社員が横断的に入っており、自分の役割を超えてプロジェクトの流れを注視している。全く関係の無い別チームの社員が意見を差し挟むこともしばしば。分からないことや納得の行かない部分があれば、「その方向性は本当に正しいのか」といった具合に遠慮無く突っ込む。

 こうして、全員が把握した状態でプロジェクトが進んでいくため、全社的に納得感のある形でビジネスが構築されていくのだろう。そして、こうした風土が、顧客企業に対しても本気度を求めるなど、「言うべきことは言う」スタイルに繋がっている。

プロフェッショナルを貫く

 ベーシックを率いる秋山が社員に求めるのは、プロフェッショナルオリエンテッドという考え方。常に「我々はプロの集まり」との意識を持つように説いている。プロの定義は「有言実行できること」だ。

 したがって、採用すべき人材像は「プロ」か「プロになりたい人」。ベーシックの事業や、それを通して成し遂げようとしている「ウェブマーケティングの大衆化」といったビジョンに共感していることが大前提となる。

 これに秋山が追加した条件が「素直で良いヤツ」。変に斜に構えず、まずは一直線に突き進むような人材こそ、吸収力が高く、成長していけることを知っているが故だろう。

 世の中の問題解決に奮闘するプロフェッショナル集団、ベーシックの更なる飛躍に期待したい。



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