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2019年06月11日

日本初の「自然エネルギー100%大学」を達成、千葉商科大の挑戦/千葉商科大学名誉教授 三橋規宏

企業家倶楽部2019年6月号 緑の地平 vol.47


三橋規宏 (みつはし ただひろ)

経済・環境ジャーナリスト 千葉商科大学名誉教授

1964 年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、論説副主幹などを経て、2000年4月千葉商科大学政策情報学部教授。2010 年4月から同大学大学院客員教授。名誉教授。専門は環境経済学、環境経営論。主な著書に「ローカーボングロウス」(編著、海象社)、「ゼミナール日本経済入門25 版」(日本経済新聞出版社)、「グリーン・リカバリー」(同)、「サステナビリティ経営」(講談社)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「環境経済入門第4 版」(日経文庫)など多数。中央環境審議会臨時委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長など兼任。
 



旧野球グランドを活用しメガソーラー設置  

 千葉商科大学(CUC)は、先日の記者会見でキャンパス内の消費電力と同じ量を自前の設備で発電できる体制が整ったとして、日本初の「自然エネルギー100%大学」を達成したと発表した。

   私事にわたって恐縮だが、CUCは私が新聞社を退職後、10年近く教鞭を執った大学だ。環境経済学が専門だったためエコキャンパスづくりに挑戦したいと思い、学生主導の「ISO14001」(環境マネジメントシステム)の認証取得に乗り出した。環境に関心を持つ学生が中心となりISO学生会議を設立し、数年かけて様々な課題を克服し、2003年3月末に認証を取得した。千葉県の大学としては最初のISO認証取得大学、全国の大学の中でも確か13番目か14番目だったと思う。

   こんな経験もあり、CUCがエコキャンパスの新しい目標として、「自然エネルギー100%大学」を目指して頑張っていることは原科幸彦学長から折に触れて伺っていた。

   キャンパス内の消費電力を自前の自然エネルギー発電で100%賄える大学は日本だけではなく、世界の大学の中でも珍しい。それだけにCUCの試みは環境に熱心な世界の大学からも注目されており、「どのように達成したのか」などの問い合わせが多いため、英文でも図入りの達成過程を説明している。

   日本初の「自然エネルギー100%大学」の達成は、教職員、学生、そしてC U Cエネルギー株式会社(CUC内に設立された地域エネルギー事業者)がスクラムを組んで取り組んだ成果だが、同時にCUCの置かれた特殊事情も幸いしたと思う。

   第一はCUCが校名でも明らかなように経済学や商学などを中心とする文科系大学だったことだ。電気を大量に使う工学部や医学部などの理系学部を備えた総合大学では、電気の使用量は文系大学よりはるかに多く、自然エネルギー発電だけで補うのは至難の業だ。その点文科系大学のCUCでは、電気使用が教室内照明、エレベーター、冷暖房、コンピュータ管理など通常のオフィスビルとそれほど変わらない。

   第二はメガソーラー(大型太陽光発電)の設置に恵まれた土地を所有していたことである。同大は野田市に野球グランド(約4万7千㎡)を所有しているが、現在は使われていない。そこにメガソーラーを設置できた。



キャンパス内の消費電力を自前の発電で賄う

   具体的に説明しよう。

   CUCは14年4月に同地に発電容量約2・88MW(メガワット)の太陽光発電を設置し、発電した電気を東京電力に売電する事業を始めた。17年度には年間約315万kWh(キロワットアワー)まで発電できるようになった。一方キャンパス内の電力消費は年間約365・1万kWh だ。この差、約50万kWh を埋めるため、キャンパス照明のLED化、自動販売機の集約・省エネ化、利用していない教室や冷暖房の消し忘れをチェックする節電パトロールの実施などに取り組んできた。その結果19年1月に電力創出がキャンパス内の消費電力をわずかに上回った(101・0%)。この結果を踏まえ自然エネルギー100%大学達成を発表した。

   もっともこの段階では、キャンパスで使う消費ガスまでカバーできていない。キャンパス内で消費するエネルギーの約2割を消費ガスが占める。自然エネルギー100%大学を実現するためにはさらに創エネ、省エネを推進する必要がある。CUCは2020年を目標に校舎屋上への太陽光発電の設置などによって出力を増やし、キャンパスで使うすべてのエネルギーを100%自前の自然エネルギー発電で賄う計画を掲げている。

   これで一件落着のはずだったが、記者発表で大学側が「RE100大学」と表現したため、一部の専門家から批判が出た。



「RE100大学」表示には批判

   RE100とは、「RenewableEnergy 100%」の略称である。日本ではリニューアブル・エナジーのことを再生可能エネルギー、自然エネルギーなどと称している。環境に熱心な企業が自社の事業活動に必要な電力のすべてを再生可能エネルギーで賄うことを目標に掲げ自主的に参加する国際的な取り組みが「RE100」運動だ。

   14年に発足し、現在世界の140社を超える企業が参加、日本ではリコー、積水ハウス、イオン、城南信用金庫、ソニー、コープさっぽろなどの環境先進企業約15社が参加している。

「RE100大学」を名乗るためには①発電事業者または仲介供給者から再生可能エネルギーを購入するか②再生可能エネルギー電力を自ら発電することが必要だ。ただし固定価格買取制度(FIT)で発電した電力は除外するルールになっている。固定価格で割高の電力を買い取った電力会社が、その分を電気料金に上乗せするため、最終的には上乗せされた電力コスト(環境価値)を消費者が負担するためである。このルールに従えば、CUCは「自然エネルギー100%大学」ではあっても、「RE100%大学」とは言えないことになる。

「RE100」に参加している日本を含めた世界の企業は、そのほとんどが再生可能エネルギーの購入で自社事業の消費電力を賄っている。再生可能エネルギーの発電コストは通常の石炭火力などよりも割高になるため、参加企業の多くが割高の電気代を負担している。経営的には収益圧迫要因になるが、環境重視企業として消費者、国民の評価が高まることで、企業のイメージアップにつながる。

   アメリカでは47の大学が「RE100大学」を名乗っているが、そのほとんどが企業と同様に再生可能エネルギーを購入することで賄っている。CUCのように自前の発電施設でキャンパスの消費電力を賄っている大学ではない。


「RE100大学」表示には批判

さらなる自然エネルギー100%大学への挑戦に期待

   その点で、同大がFITを活用しているとはいえ、自前の太陽光発電でキャンパス内の消費電力をすべて賄える体制を確立したことは高く評価されるべきだろう。既存の「RE100」の定義から言えば、同大が記者会見で「RE100大学」を名乗ったのは明らかに勇み足だが、気にするほどのことではない。

   それどころか、これを機に、既存の「RE100」とCUCが掲げてきた「自然エネルギー100%大学」との違いが明確になってきた。目下の世界の緊急課題は地球温暖化の抑制だが、そのためにはグローバルレベルで自然エネルギー100%を達成することが理想だ。企業の場合はその達成のため割高の再生エネルギーの購入で対応しているが、CUCの場合はもっと広い視点で購入だけではなく、自前の再生可能エネルギー発電に積極的に取り組む姿勢を強めている。

   同大はエコキャンパスづくりのキャッチコピーとして「自然エネルギー100%大学」を今後も引き続き使い、購入に力点を置く「RE100大学」とは異なる路線を追求する方針だ。



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