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2019年09月17日

受賞者の喜びの声 宇宙活用が当たり前になる日は近い/アクセルスペース 代表 中村友哉 

企業家倶楽部2019年10月号 第21回企業家賞





 本日は大変名誉な賞をいただき、光栄に思っております。

アクセルスペースも設立11年目を迎えることができました。今でこそ宇宙ビジネスがメディア等で取り上げられるようになり、日本でも数十億円、場合によっては100億円を超える金額を調達している企業が出てきました。ただ、これはここ数年の話であり、私が起業した頃は「宇宙ビジネスなんて上手く行くのか」と思われていました。

それでも、私は大学時代に加わった超小型人工衛星を開発するプロジェクトに魅せられてしまったのです。研究者になるつもりなど全く無かったのに博士課程まで進み、自分の仕事にしたいと考えました。



起業するしか道は無かった

 ところが、超小型人工衛星を商用化している会社など世界のどこにも無いことが分かり、愕然としました。人工衛星のエンジニアとして学生時代を過ごしてきたものの、卒業する段になって就職先が無い。しかし、研究者になるのは自分の想いとは違うという中で、たまたま私の所属していた研究室が、大学発ベンチャー設立支援のための助成金を受けていることに気付きました。その時に初めて「ああ、会社を創れば良いのか」と思ったのです。

 現在は、多くの大学で企業家育成のための教育に触れる機会が沢山ありますし、私の在学中も起業したい人向けの講座はありましたが、私にとっては別世界の話でした。もし当時、経営の勉強をしていたら、宇宙分野で起業などしなかったと思います。あまりにリスクが大きすぎますからね。

 ただ、自分たちの培ってきた衛星製造の技術で、社会に役立つものを作りたいという熱意だけはありました。それを実現する方法が起業しかないのであれば、これを選ぶしかないと考えたのです。



ウェザーニューズ創業者石橋博良氏と出会う

 人工衛星の話をすると、珍しいので食いつきは良い。ところが当然、衛星を買うという話には至りません。どのように使えば良いのか全く分からないからです。

 助成金を貰える期間は2年でしたが、売上げが立たない状況が1年以上続きました。「さすがにまずい」と思った時に現れたのが、ウェザーニューズ創業者の石橋博良さんです。

 気象ビジネスは宇宙と背景が似ています。彼は、元々国が担っていた部分を、民間企業としてビジネスにしていく大変さを身に染みて分かっておられたのです。

 学生上がりの3人が宇宙領域でビジネスを立ち上げようとしている。おそらく100人中99人は「そんなバカな」と言う。しかし石橋さんは「これはすごく大事なことだ。一緒に新しい価値を作ろう。私たちは単なる受注者・発注者という関係ではない。共に価値を作っていく同志だ」と言ってくださいました。

 こうして会社設立から最初の7年間はウェザーニューズの衛星を作り、技術を培いました。このような実績もあり、2016年にはJAXA(宇宙航空研究開発機構)から衛星開発の案件を受託することができました。ベンチャー企業が国の衛星を作るなど、従来は考えられませんでしたから、これはとても大きなことです。



超小型衛星で地球を常時観測

 ただ、私たちはお客様に頼まれて衛星を作るだけでなく、事業を成長させなければなりません。そのために始めた事業がアクセルグローブです。これは、自分たちの衛星を作って沢山打ち上げることにより、世界中を常時観測できるプラットフォームを作る構想で、将来的にはインフラになると考えています。

 私たちは超小型衛星に注力しています。これを大型衛星との性能勝負にもっていっても意味が無い。安価に作れる小型衛星の利点は、多く打ち上げ、撮影頻度を高められることです。

 創業時も周りの人は皆「無理だ」と言いましたが、アクセルグローブも専門家からすれば、「こんなことをできるわけがない」とのこと。「アメリカにも同じような事業を展開している企業がいくつかある。それで勝てるのか」というわけです。確かに私たちの衛星は、小型化した結果として従来の大型衛星よりもスペックでは劣っているかもしれません。しかし、お客様が欲しいものは「世界最高精度」ではなく、ニーズに合わせたサービスなのです。

 昨年末、私たちはアクセルグローブのための最初の衛星を打ち上げました。そこからのデータも取れ始め、5月末にはサービスを開始することができました。既に契約希望の依頼も来ています。



全く新しいインフラを構築

 今後、宇宙を活用したビジネスは当たり前となるでしょう。私たちがプラットフォームを作り、毎日世界中を見る。

 様々な業界が、私たちのデータを判断材料の一つとして使い、サービスを提供していく時代は必ず来ます。私たちが目指すのは、その際の新たなインフラになることです。

 もちろん、ライバルもいます。ただ、有力な企業がひしめいているアメリカは、航空宇宙産業においては非常に閉鎖的な体質を持っています。技術が最先端なので、他国と協力するのがなかなか難しいのです。

 その点では、私たちは有利な立場にあります。社員も3分の1は外国人です。社内は国際色豊かで様々な意見が飛び交い、活気に溢れています。このようなポイントを活かして、一気にグローバルに展開していきたいと思います。

 今後ともよろしくお願い致します。



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