トピックス -企業家倶楽部

2019年09月24日

愛情溢れる好漢/蒲原 寧の人的ネットワーク

企業家倶楽部2019年10月号 サインポスト特集第5部


「厳しさの中に深い愛情がある」。誰しもがそう口を揃え、蒲原に惹き付けられてしまう。常に問題意識を持ち、課題を解決するため常識の枠を超えて突き進む稀有のアイデアマン。そんな蒲原を、多くの人が頼れる「兄貴分」として慕う。(文中敬称略)



「人」を大切にするアイデアマン

アクティブ アンド カンパニー 社長 大野順也 Junya Oono


「人」を大切にするアイデアマン


 人材の紹介から研修、管理まで企業の人事全般を支援するアクティブアンド カンパニー。その代表を務めるのが大野順也だ。蒲原とは、とあるベンチャー企業の会合で知り合い、創業時期が近いことから意気投合。もう10年以上の付き合いになるが、今でも月に一度は会う間柄である。

 蒲原について、「アイデアマン」と評する大野。サインポストが現在注力している「無人AIレジ」も、日常生活における蒲原の気付きから来ている。開発のきっかけを大野が尋ねると、蒲原は「昼間にコンビニに行ったらレジが混んでいて、何とかならないかと考えた」と答えた。

「普通の人は『混んでいるな』としか思わないところ、蒲原さんは生活の中にある問題解決を事業にしてしまう。本人にしか見えていない何かがあるのでしょう」

 これに加えて大野は、「蒲原さんは勉強家でもある」と言う。会社がある程度大きくなると学ぶことを止めてしまう経営者もいる中で、蒲原は普段から経営に関する書籍を大量に読みあさり、経営者のDVDを見て勉強している。さらに、時間があれば様々な勉強会にも足を運び、異業種の経営者との交流を深めている。

「良い意味で経営者としてのゴールを設けておらず、常に様々なことを吸収していこうとする姿勢があります」

 大野は「サインポストの強みは人」と説く。2017年、サインポストの東証マザーズ上場を祝うパーティーに出席した際のことだ。驚くべきことに、そのパーティーでは運営から飲食の提供まで、全ての業務を外注することなく、サインポストの社員が担っていた。しかも皆、気持ちの良い笑顔で応対していたのが印象的であったという。

「エンジニアの方は、専門性が高い業務内容も相まって、人付き合いが苦手なことも多い。しかしサインポストの方々は皆、コミュニケーション能力が高く、良い社員が揃っていると感じました」

 IT企業のエンジニアは、自社ではなく派遣先で仕事をすることが多いため、会社からは言わば放っておかれるケースも発生する。しかしサインポストでは、そのような社員が出ないよう、常に彼らを繋ぎ止めておく雰囲気を大切にしている。これもまた、蒲原の社員へのこだわりなのだろう。

 蒲原が「人」にこだわるのには理由がある。メーカーであれば「商品」という目に見えるものに惹かれて会社の門を叩く人材も多い。しかし無形のサービスを提供する企業は、「このサービスを展開する!」と声高に叫んでも、やってくる人は少ないのが現状だ。したがって社員は、経営者の想いに共感して集まるのである。

 大野は蒲原と同じく無形のサービスを提供する経営者として、「サインポストの社員は、蒲原さんの想いやアイデアに惹かれて入社した人ばかりです。だからこそ、自分自身を旗印に集まってきてくれた社員を大切にしているのでしょう」と分析する。

 そんな大野は蒲原に向け、「世界に打って出ることを意識しているならば、東証一部にとどまらず、ニューヨーク市場上場まで突き抜けてほしいですね。蒲原さんの貪欲さならば、成し遂げることが出来るでしょう!」と壮大なエールを送った。



どんな相手とも誠実に向き合う人物

アイアルマーズ 代表 堀部直紀 Naoki Horibe
どんな相手とも誠実に向き合う人物


 堀部が初めて蒲原と顔を合わせたのは10年前。当時は共に創業1、2年目であった。経営者たちが交流を深めるための場で出会った二人は馬が合い、時間を忘れて語り合った。長い年月が経った今でも、堀部は当時の蒲原の言葉を鮮明に覚えている。

「僕は日本を変えるために創業した。この国をもっと良い方向に変えていきたい」

 創業したての経営者たちが集まる中で、そんなことを平然と言ってのけるのは少数派だ。「儲かる事業をやりたいわけではない」と強調する蒲原の姿が、堀部の印象に残った。

 蒲原は経営者としてではなく、一人の人間としてどう生きるかを大切にしている。堀部が以前、蒲原の自宅まで車で送迎した際のことだ。蒲原は15歳も年下の堀部に対して、「今日はありがとうございました!」と恐縮するほど深くお辞儀をした。さらに、その日は小雨が降っていたにも関わらず、蒲原は傘も差さずに、堀部から見えなくなるまで頭を下げ続けたのである。

 相手が自分より一回り以上年下の若者だろうと敬意を払い、律儀に礼を尽くす。堀部はそんな蒲原を「いつも人と誠実に向き合う蒲原さんはすごいし、自分もそうありたい」と讃える。

 ビジネスにおいても、蒲原は人の気持ちを汲む。彼は「国を良くしたい」という考えのもと、未来の人々が自分の商材をどのように使っているかを想像して事業を興している。無人AIレジについても、蒲原は人々が気持ち良く利用する姿を想像していた。「扱っているのは最先端のAIだが、根幹にあるのは人の想像力だ」と堀部は説く。

 蒲原は銀行に対するコンサルティング事業から会社をスタートした。一見無人レジとはかけ離れているように思えるこの事業も、蒲原の根底にあったものは同じである。

 銀行のシステムには数え切れないほどの人間が関わっている。しかし、その一人ひとりの気持ちを汲み取り、将来の銀行員、ひいては末端のお客が使っている様子までも想像しながら事業を進めたのだ。

 AIの時代になっても、人を思いやる気持ちは、人間の方がAIよりも遥かに優れている。蒲原は「儲かる」商品を考えるのではなく、人の感情を大切にすることをビジネスの礎とする。だからこそサインポストは、多様な分野にビジネスを展開することができるのだ。

 蒲原は歴史にも精通している。堀部は「蒲原さんはこれまでの世の中の流れに詳しいからこそ、未来の世界を想像できるのでは」と分析する。国内外の技術や、世界における日本の立ち位置まで考えている。先人たちが築いてきた偉大な資産を、自分たちが立派に引き継ごうとしているのだ。

 蒲原の事業は、彼が想いを抱くところから始まる。無人AIレジについて考えていた時も、「夢に手がかかっているんですよ!」と生き生きと未来を語る蒲原の姿があった。そんな彼が率いるサインポストについて、堀部は「トップに夢があり、考えがブレない。そしてそのトップが磨き上げてきた文化の会社であることが強み」と評する。

 サインポストは進化を遂げる一方だが、蒲原の思想の本質は変わらない。日本を変えるため。この国をもっと良い方向に導くため。人として尊敬する蒲原に向けて、堀部は想いとメッセージを語った。

「人生の先輩として背中を見ているので、今後も輝きを放っていただきたいと思っています」



「知力」が高く「純」な経営者 

正林国際特許商標事務所 所長 正林真之 Masayuki Shobayashi


「知力」が高く「純」な経営者 


 2007年にサインポストを創業した蒲原寧は、まずはコンサルタント業で生計を立てることになる。その蒲原が今、最も力を入れているのが新規事業部門である。中でも画像認識システムを使った自動レジシステム「ワンダーレジ」、そして日本のアマゾンGOとして注目を浴びる「スーパーワンダーレジ」は、「世界でアマゾンと我が社だけ」と胸を張る。そうした先端技術の特許や商標など知的財産を守っているのが、正林真之である。

 二人の出会いは3年前、都内で開催された経営者クラブの勉強会の席であった。昨今ますます重要度が増す特許や商標などの知的財産について、経営者たちに講義して欲しいと正林が依頼されたのだ。その講演会に参加していたのが蒲原である。

「特許や商標というのは学歴みたいなもので、すぐには役に立ちません。しかし後で力を発揮する。日本の多くの経営者があまり関心を持たない中で、あの勉強会に参加したこと自体、蒲原さんの経営者としての意識の高さを示しています」

 蒲原は、その頃から新規事業について様々なアイデアを持ち、その技術やシステムに特許取得の必要性を感じていたのであろう。その後、特許について正林に相談し、事業が進展するきっかけとなった。

 3年前の時点では、サインポストの特許数はゼロであったが、蒲原自身、「特許を取るのが趣味」と言うくらいアイデアマンで、新しい技術やシステムづくりに力を入れている。

「自動レジシステムの『スーパーワンダーレジ』は、アマゾンより早く特許が取れて本当に良かった」と胸を撫で下ろす正林。もしアマゾンが先行していれば、無人AIレジの事業は世に出せなかったという。

「スーパーワンダーレジ」の画期的なシステムは、JR東日本との提携によって18年秋に赤羽駅で行った実証実験で、大変な反響を得た。今や両者は新会社を設立。名実ともに無人AIレジが始動することになる。

 こうした新規事業も、世界に先駆けて自動レジシステムの特許を取ったからこそ成立し得た。そう考えると、3年前に蒲原が正林と出会えたのは願ってもない強運だったと言えよう。

「蒲原さんは大変知力が高く、勉強熱心で純な心を持つ人」と正林。

「外見や行動から一見やんちゃに見えるが、根本に温かさがある。人間的に彼を尊敬している」と語る。蒲原は人間味があり、「この人のために手伝ってあげたい」と思わせる人物なのだ。こうした人柄こそ蒲原の財産であり、決算の数字には現れないが、企業を発展させるために重要な要素と言える。

 互いに多忙のため、年に3回くらいしか会わないが、仕事ではきっちりフォローしている。単に頼まれた特許の申請をこなすのではなく、「どういう事業を進展させるために、どのような知財を守るのか。そのための具体的な方法は何か」を共に考え、アドバイスして実行するのが正林の仕事の流儀だ。

 そんな正林はサインポストの強みについて「蒲原さんのアイデアを会社の財産にしていこうと努力していること、社員が皆高い上昇志向を持っていて、常に前向きであること」と評す。

「同じ歳で馬が合うんでしょうね」と語る正林。最後に「個人的にずっとお付き合いしたい人。純なところを大切にして、事業を発展させて欲しい」と結んだ。



厳しさの中に優しさがある人

ストラテジックパートナーズ 代表 芦田 博 Hiroshi Ashida
厳しさの中に優しさがある人


 2017年、ストラテジックパートナーズ(以下ストラテジック)社長の芦田は、経営者の勉強会で蒲原と知り合った。芦田は広告代理店におけるCMディレクターの経験を活かし、経営戦略に基づいた広告制作で業績を伸ばしており、蒲原が社員採用のための映像制作を依頼したことで深い付き合いとなった。

 サインポストは当時から既に金融系ITコンサルティング企業としての地位を固め、営業せずとも口コミで仕事が舞い込むような状況であった。したがって、それ故に生じる人材不足解消が急務だったのだ。

 蒲原を始めとして社員にも聞き取りを行い、映像が制作された。単なる企業紹介ではなく、就活生に求めるものや、企業として展望している未来の姿などを盛り込むのだが、蒲原は企業理念を書籍にまとめるほど大切にしており、その紐解きは容易いものではない。だからこそ、この案件は芦田が自ら担当した。

 蒲原は指示やメールが簡潔で、意思決定も迅速だ。また常に研鑽を積み、自身の哲学を持っているため、一般的な常識論では当たれず、芦田も事前の勉強が欠かせない。しかし、ひとたび彼の考えを理解できれば、全てを任せてくれる度量があった。

 仕事への考え方は厳しいが、「それが社員の将来のため」というのが蒲原の信念。実際に入社時は大変だと感じていた社員も、すぐに数億円規模の仕事を任されるなど、成長とやりがいを感じるという。そうした声を元に、映像は完成した。

 その後、ホームページのリニューアルも手掛け、サインポストが注力する新事業「無人AIレジ」の紹介映像、会社のイメージ映像と制作は続いた。

 ホームページの改訂作業中にはサインポストの上場が決まり、計画に無かったIRページの作成が加わった。上場日に完成していなければ、初動の株価に影響する恐れもある。この時はストラテジックの社員の昼夜をいとわない働きで、何とか前日にリリースすることができた。

 サインポストの上場記念パーティーでは、蒲原がストラテジックの名前を挙げ、感謝を述べてくれたことに感激した。蒲原とサインポストの戦略を理解し、マーケティングツール制作に全力で取り組んできた芦田は、報われた思いであったという。

 スーパーワンダーレジの映像で蒲原が最も重視したのは「買い物の楽しさ」。利便性だけを強調するのではなく、実店舗におけるショッピング特有の楽しさを伝えたのだ。そうした楽しさは、現場で家族や友人と共有するなど、通販では体験できないものであり、これこそ実店舗の価値とも言える。

「どんな場所のどんな小さな店舗でも使えるオープンスタンダードな製品であることに、理念と優しさが込められています」

 このように、蒲原と信頼関係を築いてきた芦田だが、一度だけ「信用できない」とたしなめられたことがある。企画書に誤植があったのだ。クリエイティブ出身でアイデア重視の芦田は、書類が疎かになるきらいがあったが、そこを見透かされて以来、気を付けるように心掛けている。

 そんな芦田が蒲原を見習いたいとしているのは、有言実行であること。蒲原は「創業から10年以内に上場する」と言い続け、宣言通り創業10周年に東証マザーズ上場を果たした。自分に言い訳を作らず、日々精進する蒲原を、芦田は尊敬する。

「いざという時のパートナー」を自負する芦田は最後に、蒲原に対して「今後、経営は体力になるので、肝臓は大切に」とメッセージを送った。



愛情の深い兄貴分

佐藤総合法律事務所 マネジメント・メンバー 穴田卓司 Takashi Anada
愛情の深い兄貴分


 2002年、三和銀行と東海銀行が合併し、UFJ 銀行(現三菱UFJ銀行)が誕生。この出来事が、穴田と蒲原を引き合わせることとなった。それまで三和銀行に勤めていた蒲原と東海銀行勤務の穴田は、合併を機に行われた泊まり込みの支店長研修で、偶然にも相部屋になったのだ。

 初めて会った時の蒲原の印象について「ガッツがあり、兄貴分でした」と語る穴田。蒲原とは同期であったが、何度も相談に乗ってくれて、時には厳しい言葉も辞さない彼を慕っていた。

 銀行員時代、蒲原は三和銀行と東海銀行のシステム統合に関する仕事を担っていた。大きなシステムを統合する際、工程をいかに設計し、安全性に配慮していくかを考える彼のプロジェクトマネージャーとしての緻密な仕事ぶりに、穴田は感嘆したという。

 システムの開発に重きを置くIT業界の中で、システム統合における手順や障壁に対してどう計画的に向き合っていくのかを追求するサインポストの経営姿勢は、蒲原が銀行員時代にプロジェクトマネージャーとして実力を磨き上げた過去があってこそ成り立っているのだろう。

 穴田は「蒲原さんの取り組んでいることは2つ」と説く。

 1つは発明だ。サインポストの開発した無人AIレジは、レジの長い待ち時間と人手不足への問題意識からヒントを得ている。「子どもが見て驚きを持つような発明をしなければならない。それは言わば魔法のようなもの」というのが、蒲原の美学だ。

 もう1つは、お客に寄り添うホスピタリティ精神の向上。これはサインポストの真髄でもある。「自分もリスクを取りながら、お客の苦労を全く同じように味わって解決していく姿勢を持っていて、それが現在の仕事の源泉になっている」と穴田は語る。

 蒲原からよく「穴ちゃん、これ違うよ」と指摘を受ける穴田。常に「世のため、人のため」を考える彼の発言は、「つい自己保身に走りそうになる自分の心中を見透かされているかのよう」と驚嘆する。

「蒲原さんは常に捨て身。失うことを恐れていません。社会のためになることに取り組もうという心意気では、私より遥かに上を行っている」

 蒲原には、命の危険にさらされた過去がある。その実体験があるからこそ、今生かされている自分が世の中のために何ができるのか、常に意識しているのだろう。

 蒲原の魅力について、「世界一愛情のある人間」と穴田は評する。サインポストの離職者が少ない秘訣は「一人ぼっちにしない経営」だ。必ず初日からお互いに声を掛け合い、何でも教え合う。厳しくも、愛を持って人に接する蒲原の人としての魅力がうかがえる。

 現在はゴルフ仲間として、蒲原と半年に1回以上は会う仲の穴田。彼にとって蒲原は、多くのアドバイスをしてくれる兄貴分的な存在であることは変わらない。「いつも言葉がキツすぎますけどね」と苦笑しながらも、穴田は蒲原からの指摘を受けると素直に納得してしまう。蒲原が好かれるのは「誰もが、彼から滲み出ている愛を感じるから」と説く。

「彼は人として大事なことを忘れない人間。そして、それに向き合い続ける方です」

 自分の犠牲を顧みず、社会のために奔走する蒲原に敬意を表し、穴田は最後に「蒲原さんは生涯の友人です」と笑顔で締め括った。



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