トピックス -企業家倶楽部

2019年10月10日

「先進国クラブ」を変える中国/日本経済新聞社客員 和田昌親

企業家倶楽部2019年10月号 地球再発見 vol.22


和田昌親(わだ・まさみ)

東京外国語大学卒、日本経済新聞社入社、サンパウロ、ニューヨーク駐在など国際報道を主に担当、常務取締役を務める。




 OECD(経済協力開発機構)という良く知られた国際組織がある。「先進国クラブ」と言う人もいる。70年前の先進国の集まりが巨大化して、今、中身は大きく変質した。現代史の教科書を書き換える時期が来たのだろうか。

 第二次世界大戦後の1961年、欧州主要国16カ国にアメリカ、カナダを加え、OECDはスタートした。現在の加盟国数は36カ国に増えている。

 組織設立の契機になったのはアメリカの欧州救済計画「マーシャルプラン」である。戦災で苦労した仲間が団結して復興をめざし、当時の共産圏諸国とは一線を画す。その組織は身内だけを大切に守る日本の「互助会」のようなもの、と考えるとわかりやすい。

 パリに置いた本部は経済復興の決意を示すかのように立派だった。なんとルイ王朝と関わりのあるシャトー(城)の中にある。日本の高級官僚の間では、このシャトーに出向勤務し、セレブ生活を希望する人は多いらしい。

 OECDの目的ははっきりしている。「先進国間の自由な意見交換・情報交換を通じて、①経済成長、②貿易自由化、③途上国支援(OECDの3大目的)に貢献すること」とされている。つまり、「先進国」として「途上国」のために尽くそうというわけだ。理念は立派だが、どこか、上から目線の雰囲気が漂う。

 それなら「先進国」と「途上国」をどうやって区別するのか。

 OECDには「ODA(政府開発援助)を受け取っているリスト」というのがあり、このリストで1人当たり国民所得が一定額(2018年は約1万2000ドル)より低い国を「途上国」の目安としている。1964年に戦後復興が進む日本は原加盟国以外で初の加盟を果たした。

 しばらくはそれでも良かった。しかし、20世紀末から徐々に基準に達しないと思われる「途上国」がOECDに加盟申請してきた。その中には国民所得は一時的に高くてもODAを受け続けている国も存在する。

 たとえばメキシコ。1994年のNAFTA(北米自由貿易協定)締結と同時期にOECDに加盟したが、「この国が先進国なの?」と話題になった。当時はアメリカ、カナダと共にNAFTAを構成するメンバーなので、同じ発展レベルに「繰り上げ卒業」させたと見る向きもあった。

 メキシコに続き、南米ではチリが2010年に加盟。コロンビア、コスタリカ、ブラジルも加盟準備中といわれる。ブラジルに至っては19年初頭の新政権発足を機に、加盟へと動いたようだ。だれもが「途上国」と思っている国の加盟が増えると「先進国クラブ」の看板に陰りが見えてくる。

 加えて、先進国でも途上国でもない「巨大新興国」の中国が登場した。先進、途上の区分けが無意味になったといえる。

 中国は世界で第2位のGDPを誇り、各国に投資をし、習近平国家主席は「世界制覇」の目標を公言する。OECDには未加盟だが、「柄の大きさ」は堂々たる「先進国」だ。しかし、誰も表立って「先進国」と認めることはない。

 でも、そんな区分けはどうでもいいと中国自身は考えているのではないか。「米に対抗できる大国」であることが最重要で、時と場合によって「我々は途上国」と“角”を隠す。その中途半端がきっと居心地が良いのである。

 中国はWTO(世界貿易機関)のデジタル情報ルールづくりでも地球温暖化対策でも、「途上国」であること理由に、厳しい規制をのがれようとしている。また日本は「途上国の中国」に1979年から無償援助だけで3兆円ものお金を提供していたという笑えない歴史もある。

 中国やGDP8位のブラジルは「先進国」でも「途上国」でもない21世紀型の「巨大な新興国」と呼ぶべきなのだろう。OECDよ、さあどうする?



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