トピックス -企業家倶楽部

2019年10月31日

トランプ一強が世界を変えるのか/ハドソン研究所首席研究員 日高義樹 

企業家倶楽部2019年12月号 緊急リポート


終わりの見えない米中通商戦争に翻弄される世界経済。米中を取り巻く情勢は混沌とし、各国の足並みは乱れるばかりだ。通商戦争や核の恐怖に対して「自分の身は自分で守れ」と突き付けられている日本は、どのように動くべきなのか。「2020年に控えたアメリカ大統領選でトランプ氏は再び当選し、米中通商戦争はアメリカが勝利を収める」と大胆に予想するハドソン研究所首席研究員の日高義樹氏に、その核心を聞いた。



トランプは再選する!

問 最近出された著書『米中衝突の結末』では、スキャンダラスなアメリカの国内政治や、中国経済の崩壊、日米関係の行く末など、アメリカを中心とした世界情勢についてかなり衝撃的な内容が書かれていました。

 トランプ氏が大統領になった時は「まさか」と思いましたが、2020年に行われるアメリカ大統領選では彼が再選する可能性が高いのでしょうか。

日高 大恐慌のような不測の事態が起こらない限り、トランプ氏が再選するでしょう。

問 アメリカのマスコミは一貫してトランプ氏を批判し、落選する見通しまで立てていますが、それに関してはどう思われますか。

日高 現在、アメリカのメディアの多くは、アマゾンやグーグルといった巨大IT企業の後ろ盾を持っています。これらの企業はトランプ氏の政策に反対しているため、メディアも反トランプ寄りの報道ばかりになってしまうのです。これらの企業がメディアを裏で操っていると言っても過言ではありません。

 日本でも反トランプの報道は多いですが、それはアメリカの反トランプメディアの記事から情報を入手しているからだということを忘れてはいけません。日本のメディアからアメリカの実情を知るのは難しいでしょう。 

問 なぜトランプ氏が再選するとお考えなのでしょうか。

日高 一言で言うと、トランプ氏以外にまともな候補者がいないからです。

 民主党の最有力候補であるバイデン前副大統領は、当初の期待もむなしく没落してしまいました。アメリカのメディアが、バイデン氏の黒人差別的な発言や私利私欲的な行動の数々を取り上げ、一気に不支持が広がったのです。

 彼は職務中に息子を各国の要人に売り込み、ウクライナの石油天然ガス企業の重役に就けたり、中国銀行からほとんど利子を付けずに巨額融資を受け取ったりしていました。このようなスキャンダルからバイデン氏の人気は落ち込み、もはや過去の人になっています。

問 民主党はトランプ氏の対抗馬として戦える候補者がいないという問題を抱えているのですね。前回の大統領選では、トランプ氏がロシアと密約を結んで勝利を得たとの疑いも取り沙汰されましたが、その問題は解決したのでしょうか。

日高 まず、トランプ氏に対するロシア疑惑は完全にフェイクだったと分かっています。正当な選挙で選ばれたトランプ大統領を不当な手段で追放しようという目論見は失敗に終わったのです。現在はロシア疑惑をでっち上げた真犯人が誰なのか調査が進められ、明らかになりつつあります。

 有力な説として、ロシア疑惑はオバマ政権が仕組み、命令して企てたものだと囁かれています。もしそれが裏付けられれば、民主党がさらに不利な立場に追い込まれる大スキャンダルとなるでしょう。


トランプは再選する!

アメリカ一人勝ち状態

問 トランプ氏による中国への輸出規制が原因で、アメリカの農業が打撃を受けているという批判があります。

日高 確かに、アメリカの農業に影響は与えているでしょう。なぜなら、中国はアメリカも含めて世界中から大量の食糧を輸入しなければ約14億人の国民を養うことができないからです。特に欠かせない大豆に至っては、年間500万トンをアメリカから輸入しています。

 さらに、現在は地球温暖化により、ノースダコタなどの寒冷で農業に不向きな州でも大豆が生産できるようになりました。それによってアメリカの大豆の生産高は2倍になっています。大豆の生産高が増加しているにもかかわらず、中国への輸出が減少しているわけですから、アメリカの農業従事者にとっては由々しき事態です。

問 農業従事者が反発しているため、トランプ氏は当選しないという見方をするアメリカメディアもありますが、選挙に影響はあるのでしょうか。

日高 批判を受けていると言っても、アメリカにおける農業従事者は国民のたった2%しかいませんので、選挙に影響は無いでしょう。むしろこのような批判も、反トランプのメディアが大袈裟に報道しているに過ぎないのです。

問 アメリカは食糧もエネルギー資源も豊富で、自国だけで潤っていますね。

日高 そうですね。現在アメリカではシェールオイルが500万バレルほど採掘され、天然ガスも出ています。今までヨーロッパはイランから石油を輸入していましたが、アメリカがシェールオイルをヨーロッパに輸出するようになってからイランの石油は全く売れなくなってしまいました。中国とアメリカによる「イランをめぐる覇権争い」といった話も出ていますが、すでにアメリカに軍配は挙がっているのです。


アメリカ一人勝ち状態

人民元大暴落の日は近い

問 今や日本のインバウンドは3000万人を超えましたが、そのうち約25%が中国人と言われ、中国の存在感がますます大きくなっています。しかし、ご著書では中国経済について「崩壊が近いほど疲弊している」と書かれていて、驚きでした。

日高 表面的には経済が急成長しているように見せかけていますが、中国経済は悪化の一途を辿っています。中国国内の経済が衰退し、アメリカとの通商戦争が経済危機に拍車をかけているという状況です。

問 習近平政権は「中国経済は7%成長している」と言っていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

日高 7%の経済成長は幻想に過ぎません。あらゆるデータを水増しし、数字上は経済が成長しているように見せかけているだけです。

 今までの中国経済は不当に元を安くすることで、輸出攻勢を続け、貿易黒字を保ってきました。そして、資産が増えた国民は住宅や株に積極的に投資し、さらに富を増やすことができた。しかし、中国経済が停滞し、輸出額が著しく低下した今、人々の収入は減っています。加えて、バブルによって高騰した不動産などの値段は政府によって高く維持され、金利も4%近い高金利のままなので、国に借金を返すことも難しくなりました。

 一方、国営企業に対しては低金利でどんどん融資をしています。安い金利での融資を継続するために、お金を大量に刷るという悪循環を続ければ、遅かれ早かれ、人民元は大暴落するでしょう。

問 人民元が暴落すると、アメリカも影響を受けるのではないですか。

日高 そうなった時に備えて、トランプ氏は18年に国家緊急経済防衛政策を発動しました。中国国営企業のアメリカ進出を禁止し、アメリカ企業に中国とのビジネスを控えるよう警告しているのです。

 中国の技術革新はいわばアメリカ・シリコンバレーのコピーのようなものです。そこから技術を得ることができなくなれば、中国自身が技術を発展させる力を持たない以上、「中国サプライチェーン」は崩壊するでしょう。

問 「人民元暴落は免れないから備えよ」ということですね。なぜ歴代の大統領はトランプ氏のような強硬姿勢を取ってこなかったのでしょうか。

日高 オバマ前大統領をはじめ、今までの大統領は大きな経済圏である中国に対して宥和的な態度を取ることで世界経済が守られると考えていました。しかし、それは大きな間違いでした。

いわゆる「オバマ・ドクトリン」と呼ばれるオバマ前大統領の宥和政策は、中国の侵略行為や北朝鮮の核開発に繋がりました。結果として、中国によるダンピングが世界経済を歪め、北朝鮮は立派な核保有国と言えるほどの核兵器と基地を完成させてしまったのです。



トランプはアメリカ一般国民の代弁者

問 アメリカ大統領選でトランプ氏が再選すれば、中国はさらなる苦境に立たされるのでしょうか。

日高 トランプ氏の思惑としては、大統領選が終わるまでは大恐慌が起こらないよう中国に緩い規制をかけて締め付け、再選を果たすと同時に強い規制で追い込もうという戦略です。今は高い関税をかけて輸出を規制しているだけですが、将来的には人民元を国際通貨から除外してしまうでしょう。

問 トランプ氏が中国締め付けを強化すると、中国国内はどうなるのでしょうか。

日高 モンゴル、ウイグル、チベットなどの少数民族が独立運動を起こすでしょう。これまでは貿易黒字によって得た資金から軍事力を強化し、彼らを弾圧してきましたが、資金がなくなりつつある今、彼らを押さえつけることはできなくなります。

もしこれらの民族が独立運動を起こしたら、ロシアもそれを手助けするでしょう。なぜなら、中国と広く国境を接しているロシアは、いつ中国がかつての領土を奪い返そうと軍事行動を起こすのか戦々恐々としているからです。独立運動はロシアにとって、中国から自国を守る絶好のチャンスと言えるでしょう。

問 トランプ政権によって世界は良い方向に向かって行くのでしょうか。

日高 何をもって良いとするかによりますが、少なくともトランプ氏はアメリカ一般国民の声を代表した政策を行っています。従来のアメリカ政府が行ってきたのは、軍需産業や石油・鉄鋼会社、そして一握りの人達のための政策ばかりでした。

しかしトランプ政権により、事実としてアメリカ経済は良くなり、最低賃金は上がり、普通の人が恩恵を受けられるようになりました。そして何より、彼は世界の秩序を変えようとしている。多くの人々がトランプ氏に熱狂するのはこのためなのです。



核の傘無き日本が核を持つ日は来るのか

問 今や多くの日本企業が、中国市場でビジネスを拡大しています。

日高 「ものが売れればそれで良い」という考えだけで中国ビジネスを展開するのは危険ではないでしょうか。現時点でも多くの海外企業が中国でのビジネスに危機感を抱いて撤退しています。人民元が大暴落してからでは遅いので、もっとよく考えた方が良いですね。

世界の企業は、中国によるウイグル民族への弾圧や、チベット民族に宗教の自由が無いなどの人権問題も憂慮していますが、日本企業はマーケットとしての側面しか見ていないように感じます。

問 日米同盟はこれからどうなるのでしょうか。

日高 日米同盟は日本国憲法と共に誕生しました。「国内のことは憲法で、国外のことはアメリカが保障しましょう」というわけです。しかしトランプ氏は「外国にアメリカ軍を駐留させておくのは金の無駄遣いだ」と考えています。日米同盟の終わりはそう遠くないでしょう。

現在、日本では憲法改正の動きがありますが、それは性善説に基づいた憲法が今の時代にそぐわなくなってきていると多くの人が感じ始めているからです。北朝鮮の金正恩、中国の習近平、ロシアのプーチンといった様々な脅威に晒されている今、日本に求められるのはやはり、アメリカ無しでも自国を守れる国になることです。日本が長年「核兵器の無い平和な世界を作ろう」と唱え続けることができたのは、アメリカの核の傘に守られていたからに過ぎません。

問 アメリカの核の傘が無くなる中で自国を守るためには、日本も核を持つべきだとお考えですか。

日高 核兵器は「使えない兵器」だと言われていますが、「使わない兵器」なのです。核保有国は核による甚大な被害をよく認識しているため、核保有国同士が攻撃を仕掛ける事態は、よほどの状況でなければ起こりません。


今、日本は自ら抑止力を持つ必要に迫られています。「核攻撃を仕掛けられれば報復攻撃を行う」という断固たる姿勢を貫かなければ、日本の安全は守れない。それくらいの心構えでいなければなりません。


日本人が70年以上に渡って持ち続けた平和主義は通用しない世界に突入しています。私たちは新しい世界観を持って、これからの日本を作っていくことが必要なのです。

Profile

日高義樹(ひだか・よしき)

1935年愛知県生まれ。東京大学英文学科卒業。1959 年、NHKに入局。ワシントン特派員をかわきりに、ニューヨーク支局長、ワシントン支局長を歴任。その後、ハドソン研究所客員上級研究員を経て現職。全米商工会議所会長首席顧問として、日米関係の将来に関する調査の責任者を務める。主な著作に、『トランプが日米関係を壊す』(徳間書店)、『戦わない軍事大国アメリカ』(PHP研究所)などがある。



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