トピックス -企業家倶楽部

2019年11月05日

100ブランドを創出し1兆円企業を目指す/ストライプインターナショナル社長 石川康晴

企業家倶楽部2019年12月号 翔ける! ユニコーン企業


2016年、社名をクロスカンパニーからストライプインターナショナルに変更。事業ドメインをアパレルから「ライフスタイル&テクノロジー」へと舵をきった石川康晴社長。この3年半、次々と新事業を立ち上げ、変身を加速する。10年後は100ブランドを創出、1兆円企業を目指すと大胆な夢を掲げた。その真意はどこにあるのか。



100人×100億円で1兆円

 2019年10月、石川社長は本誌インタビューで今後の夢について語った。「今後100人のリーダーを育てて100ブランドを創り出し、1兆円企業を目指す」

 その真意はこうだ。

 「今、既に30ブランドあるが、売上げ200億円以上のブランドがいくつか育っている。今後は100人のリーダーを育てて100のブランドを創り、1ブランド100億円企業に成長させれば1兆円企業になれる。勿論ここにはM&Aも入ってくる。優良な会社を人財ごと引き取る」

 「現在、優秀なリーダーを獲得することに注力、連日、面接に励んでいる」と石川社長。口説き文句は「僕と一緒に100億円のブランドを創りませんか!」。

 求めるリーダーの条件は3つ。「創造力、論理性、コミュニケーション能力」という。3つともリーダーには欠かせない。「世界中の天才、優秀なリーダーがストライプインターナショナルに来て欲しい」

 そう語る石川社長の目は輝いていた。

 先般オンワードが600店の閉鎖を発表、三陽商会が東京・乃木坂にある本社の売却を発表するなど、日本のアパレル業界を取り巻く環境は依然厳しい。一人気を吐くのは、売上高2兆3000億円、営業利益2576億円を叩き出すファーストリテイリングだけだ。そんな中、石川社長がまた大風呂敷を広げた……と思う人もいるであろう。



ライフスタイル&テクノロジー

16年2月、社名をクロスカンパニーからストライプインターナショナルに変えると発表。石川社長は「事業領域をアパレルから『ライフスタイル&テクノロジー』に変えていく」と宣言した。「アースミュージック&エコロジー」(以下アース)など若い女性向けのブランドで名を馳せ、アパレル業界のニューリーダーとして成長を続けてきた石川社長だが、「アパレルのみでのグローバル戦略は難しい時代になった」と危惧、アパレルだけから事業領域の転換を敢行した。その決意を社内外に示すための社名変更だったと言えよう。あれから3年半、新規事業を次々と立ち上げている。

 まずはライフスタイルから見ていこう。石川社長が考えるライフスタイルとは「衣食住+遊」という。「遊」とはエンターテインメントのことである。

 18年2月、渋谷の一等地に「ホテル コエ トウキョウ」をオープン、衣食住+遊を具現化するライフスタイルメガストアをスタートさせた。1階には焼きたてのパン売り場を併設したフードスペース、2階にはアパレル、3階はホテル。そして1階のフードスペースでは毎週末、音楽イベントを開催している。

 「洋服だけでなく食と音楽を複合することで、お客様との関係を強固にしたい。そのための体験型ストア」と語っていた石川社長。毎週末の音楽イベントを目的に集まるお客も多いという。ホテルについてはインバウンド中心だが、連日満員、稼働率95%を叩き出す。

 あれから1年半、すっかり渋谷の顔として親しまれている。

 それだけではない。この「ホテル コエ トウキョウ」は、様々なイベントスペースとして活用されている。ルイヴィトンなどを手掛けるLVMHグループやディオール、IT企業など様々な会社からのオファーが舞い込んでいる。

 渋谷のハチ公前口から徒歩5分という好立地、スタジオのような1階のフードスペースには、音楽装置も完備。場所、設え、オシャレな空間がイベントスペースにピッタリという。19年秋、隣に渋谷パルコが完成すれば、さらに注目度が上がるであろう。


ライフスタイル&テクノロジー

新感覚のドーナツ店を提案

19年3月には京都のど真ん中、新京極に「koe(コエ)ドーナツ」をオープンした。「ウェルネス&エシカル」をテーマにしたこれまでにない斬新なドーナツ店だ。竹カゴを使ったユニークな内装は日本を代表する建築家・隈研吾氏がデザインしたことでも話題となった。ファクトリーを併設した広い店内には色とりどりのドーナツが並び、製造工程を見ながら出来立てのドーナツを味わうのは格別だ。

 オープンして6カ月、月商2000~3000万円を確保、年商3億円の店になると石川社長。売上げは日本全国1000店あるドーナツ店のトップに躍り出た。

 「ドーナツは国民的おやつ」と見込んだ石川社長、そこにヘルシー&エシカルの要素とエンターテインメント性を注ぎ込み、お客の心を掴んだ。

 京都という場所がら午前中はインバウンド、午後からは修学旅行生など国内の観光客、そして夕方からは地元のお客が多いという。

 今後の展開については客層を分析、外国人、国内観光客、地元客という3つの客層が均等に混在している立地を狙うという。実際の候補地としては浅草、鎌倉、大阪難波、札幌、福岡、海外としては上海の新天地を挙げた。

 「新しい分野はやってみなければ分からない。実際にやってみれば1年でノウハウが掴める」と石川社長は自信を見せる。


新感覚のドーナツ店を提案

アパレルも多様なブランドが成長

「ライフスタイル&テクノロジー」を掲げても、まだ主力はアパレルだ。新規ビジネスに投資できるのもアパレルでしっかり稼いでいるからと言える。

 「衣」についてはもともと得意分野だが、中身が変化している。アースの成長に頼ってきていたが、現状は多様化している。アースより年代が上でカジュアルなブランド「グリーンパークス」は店舗数340、売上げ300億円とアースをしのぐ規模に育っている。

 買収した会社キャンが持つブランド「サマンサモスモス」も売上げ250億円に、そして今年3年目に入ったブランド「アメリカンホリック」は、既に売上げ200億円に育ってきている。

 ストライプ=アースというイメージが強かったが、アースの1ブランドだけに頼ってはいけないという石川社長の号令の下、グリーンパークス、サマンサモスモス、アメリカンホリックなどが育ち、多様な客層をカバーする戦略が実ってきている。

 こうしたそれぞれのブランドの成長ぶりも、石川社長の100ブランドで1兆円企業の夢を後押ししていると言える。



サブスクファッションの「メチャカリ」

テクノロジーの分野として本格的に参入したのがファッションレンタルの「メチャカリ」である。シェアリングエコノミーが普及する中、3年半で黒字化に成功した。他社がなかなか赤字から脱出できない中、なぜメチャカリが黒字化できたのか。

 1カ月借り放題5800円という価格。しかも全て新品だ。それはSPAであるストライプの強みと言える。現在150ブランドを投入しているが、実は自社ブランドは20足らずで、あとは買い入れという。その買い入れ商品も新品というから利用者には魅力だ。

 現在有効会員1万1000人。110万ダウンロードを達成している。100万ダウンロード達成を記念してこの秋、驚きのキャンペーンを実施するという。

 なんと1カ月借り放題で39円というあり得ない価格を打ち出した。これを3カ月続けるという。

 狙いは有効会員2万人、150万ダウンロードの獲得だ。1カ月約6000円で有効会員2万人を獲得すれば、年間売上げ14億円を確保できる。定額制のサブスクだからこそ経営が安定する。今後も会員獲得に注力、ゆくゆくは有効会員20万人を目指すという。



ストデパで地方百貨店を支援

テクノロジーの領域ではファッションECモール「ストライプデパートメント」(以下ストデパ)がある。これは18年2月、ストライプとソフトバンクが合弁会社を設立し、35~49歳の女性(F2層)を対象に開設したECポータルサイトである。既に取扱いブランド1000を超えるが、今後さらに拡大し「日本一のファッションECデパート」を目指す。

 19年9月12日、渋谷のホテル コエ トウキョウには多くの記者が詰めかけていた。ストライプがストデパの新しい施策を発表、リアル百貨店とのア著書発刊のトークイベントで熱く語る石川社長ダースの記者発表会で (左石川社長、右トキハの植山常務)37・企業家倶楽部 2019年12月号 ライアンスに乗り出すというのだ。

 登壇した石川社長は「リアル百貨店向け新サービス『ダース(DaaS)』をスタートさせる。提携先の百貨店のECサイトの開設と運営はストデパが代行する。ダースを活用してもらうことで百貨店側の売上げ拡大に貢献、ストデパは優良会員を獲得できる」と語った。昨今の地方百貨店の衰退を危惧する石川社長、ECを始めたくてもノウハウもヒトもいない地方百貨店に少しでも貢献したい考えだ。

 まずは大分県の百貨店トキハ、石川県の大和の2社と業務提携、この日はトキハの植山浩文常務が駆けつけた。今約20の百貨店と交渉しているが、ゆくゆくは50店まで拡大したいという。

 このストデパの展開で活躍しているのは、社外役員として招聘した前三越・伊勢丹社長の大西洋氏である。「百貨店のプロとして積極的に動いてくれている」と石川社長。このこともストデパ展開の大きな力となってこよう。プラットフォーム事業に参入して1年半、着々と成長しているようだ。



中国とベトナムで大躍進

海外展開にも余念がない。中国ではアースブランドで展開、リアル店舗は取扱いも含めると30店舗になる。中国で今躍進しているのは「アリババ」が展開するTモールでの販売だ。今期は売上げ200%と絶好調だ。

 19年7月、都内のホテルで開催されたアリババグループのイベントに石川社長が登壇した。創業者のジャック・マー氏に代わって社長を引き継いだダニエル・チャン氏、アリババジャパンの香山誠社長らが揃う中、石川社長は中国での成功の事例を披露した。

 Tモールでの販売だけではない。中国のアースのリアル店舗にアリババのセンサーを設置、お客のデータを蓄積、このデータを活用することで効率的な販売ができるという。アリババが提唱する「ニューリテール」のパートナーとして、さらなる連携を強化する考えだ。

 そして今、石川社長が力を入れているのがベトナムだ。17年にNEM(ネム)グループのアパレル部門を買収したが、これが絶好調だ。この9月、ホーチミンで靴を展開するVASCARA(バスカラ)を買収、ネムとバスカラを足すと200店舗となり、ベトナムのファッション市場で1位に躍り出た。「当面は中国とベトナムを強化していく」と石川社長。海外展開にも気を抜くことはない。



「学びなおす力」で想いを伝える

新分野に様々なチャレンジを続ける石川社長だが、アートの収集家としても有名だ。既に200点の現代アートを保有し、ストライプの社内はもとより、岡山市など様々なところに展示している。19年9月27日からは岡山芸術交流を主宰、「故郷岡山を芸術の街にしたい」と力を注ぐ。

 そしてこの9月、自身の想いを綴った著書『学びなおす力~新時代を勝ち抜く「理論とアート」』を発刊した。

 ここでは幾つになっても学びなおすことの重要性、「アートで学ぶ組み合わせの妙」など、石川社長の想いが熱く綴られている。

 9月18日に都内で開催されたトークイベントには、石川社長ファンが詰めかけた。そこでは若い時からアートに関心があったわけではなかったことを打ち明け、アートと親しみ、多様な考えと向き合うことで、創造力とバランス感覚が養われることなどを熱く語った。

 そこには敏腕経営者としての石川社長ではなく、一人の人間として悩み、学び、今を生きる自然体としての姿があった。

 この多様性こそが石川社長の魅力と言えよう。だからこそ、自分一人ではなく、100人のリーダーと力を併せて、1兆円企業を目指したいという想いが沸きあがってきたのであろう。「我が社はユニクロと違い、多様なブランドで1兆円企業を目指す」と語る石川社長。

 10年後に100人のリーダーと100ブランドを創り、一つのブランドが100億円企業に成長すれば、1兆円を達成できる。こうした考えは、石川社長ならではの戦略と言えよう。まさに多様性に満ちた現代に相応しい。

 今期の売上げは1400億円だが、まだ48歳、10年間思いっきり突っ走っても58歳だ。時代の波頭を捉え、今後どこまでいくのか、その行方が楽しみだ。



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top