トピックス -企業家倶楽部

2019年11月19日

常識に囚われずウェディングの新しい価値を創り出す/テイクアンドギヴ・ニーズ 社長 岩瀬賢治 

企業家倶楽部2019年12月号 トップに聞く


ハウスウェディングという新しいウェディングスタイルを創造、最大手として業界を牽引するテイクアンドギヴ・ニーズ(以下T&G)。2015年、創業者の野尻佳孝氏から社長を引き継いだ岩瀬賢治氏は、お客一人ひとりに合わせたサービスを提供、堅調な業績を創り出してきた。既存のルールや慣習に囚われず、果敢にチャレンジする岩瀬社長に強さの秘訣を伺った。聞き手:本誌副編集長 三浦貴保


問 団塊ジュニアたちが40代半ばを過ぎ、結婚適齢者が減ってきています。今、ウェディング業界の市場はどうですか。

岩瀬 市場は1兆5000億円と言われますが、今のところ年間平均1.2%ずつ減っています。

問 微減程度で良かったですね。御社の事業について教えて下さい。

岩瀬 大きな事業は3つです。1つは弊社の生業でもある国内のハウスウェディング。2つ目がトランクホテルというホテル事業。3つ目はハワイやグアムなどのリゾートウェディングの事業です。この3つが大きな柱です。

問 たくさん施設をお持ちですが、今国内ではどのくらいですか。

岩瀬 全国で66施設です。結婚式がない時は一般企業のイベントも承っています。ここ3年くらい「ママ・マルシェ」など自社イベントも活発にやり始めました。

問 今の若い人の結婚式に対する変化はありますか。

岩瀬 マスコミでは派手婚とか地味婚だと言われますが、実は多様化しているだけでそんなに変わっていません。一番小さいものだと、家族と本当に仲の良い友達だけで沖縄やハワイで挙げるリゾートウェディングがあります。一方、ホテルで立派にやられる方もおられるので、この幅が非常に増えたと思います。

問 御社の結婚式は憧れの的だと思いますが、金額的にはいくらですか。

岩瀬 平均で390万~400万円ですね。一般的にはこの15年ずっと上がっているのですが、弊社はこの単価を維持しています。早い段階で施設を作れたので、新規投資はリニューアル程度です。2億円投資して、翌年に120~130%の売上高にもっていけますし、効果は5年くらい続きます。



強みは一組ごとのオリジナル企画

問 御社の強みはどのように分析されていますか。

岩瀬 一つは貸切であることと、最初のご相談から結婚式当日まで一人のウェディングプランナーが担当することです。またそれぞれのお客様にオリジナルのものを提供することを前提に企画しています。会場のデコレーションも1組1組デッサンを描いて、そこから作ります。もう一つは、規模の原理でコストを抑えられていることです。またウェディング業界のルールを変えていけるポジションにいることも大きいですね。

問 強みであるウェディングプランナーは何人いるのですか。

岩瀬 グループ全体で社員は2600人ほどいますが、その中でウェディングプランナーは500人弱くらいです。全国に66会場あり、1日2組、半年前くらいから準備をすることを考えると、このくらい必要です。

問 一人で企画から結婚式当日までですから責任重大ですね。プランナーの平均年齢はいくつですか。

岩瀬 27~28歳です。自分よりも年上の方にプランを立てるということになります。

問 プレッシャーは大きいですね。ところで業界のルールはどのように変えているのですか。

岩瀬 外部とのコラボレーションを積極的にやっています。あとは品質を高めるために、カスタマーセンターをつくっています。これまで顧客満足度を認識し、改善していくという会社はなかったのですが、私たちはお客様1組1組に電話でヒアリングし、データ化して、改善に活かしています。

問 外部とのコラボはどのように。

岩瀬 例えば、リクルートマーケティングパートナーズと一緒に内装用の資材をレンタルするという仕組みを始めました。事業の継続が難しい地方の結婚式場が増えています。競合が減っていくことはプラスではありますが、あまりにもプレイヤーが減っていくと業界には良くありません。そこは弊社の力で、できることはサポートしたい。レンタルの事業やCRMなど自社のために作った仕組みを他社にも販売することを始めています。閉鎖的な業界なので他社とのコラボは今までありませんでしたが、この3年くらい積極的にやってきて、いろんな成果が生まれました。


強みは一組ごとのオリジナル企画

ホテルマンから転身

問 岩瀬社長は以前は名古屋でホテルマンをやられていたそうですが、T&Gに入社したきっかけは。

岩瀬 2002年に転職しました。最大の理由は、ベンチャーとして日本の結婚式を変えるという高い志があった。会社がだんだん大人になっていくことと志がうまく重なった時にとても良い企業になるのではと考えたのです。それを一緒に作り、ど真ん中に居られたら楽しいと思いました。

問 名古屋から東京の本部に来られたのはいつ頃ですか。

岩瀬 東京の勤務になったのは07年です。古臭いホテルで働いていた身としては、異常に見えました。やはりベンチャーなので、必要以上に自分たちを大きく見せますし、既存のモノを壊すことで自分たちの存在価値を見出すことが多く、大変刺激を受けました。


ホテルマンから転身

5年間は口を出させない

問 15年に社長を任されましたね。野尻社長からは何かお話がありましたか。

岩瀬 僕が社長を引き受けたのは「5年間は口を出さない」ということを野尻と約束したからです。実際、野尻は創業者にも関わらず、口出しをしてきません。なかなかできないことですから、その点、野尻はすごいなと思います。

問 社長に就任してどんなことに注力してきましたか。

岩瀬 T&Gという会社が好きで最前線で働いてきて、そこで働く社員のこともよく知っていることが僕の強みだと理解しています。幸い業界の最大手ですから、T&Gという会社をたくさんの人に知っていただく新しいサービスを生み出してきた。業界を牽引していくポジションにあることをしっかり認識してもらえる事業を4~5年かけてやりたいと思います。これまでのルールや慣習に囚われず、小さくてもゼロから1を作ることを意図的に実践してきました。

問 ターニングポイントはありましたか。

岩瀬 一つのターニングポイントは07年度に赤字になった時です。ベンチャーで大風呂敷を広げて、頑張ってきてもどこかで頑張りきれないことがある。その時に、ちゃんと反省ができて、良い会社になろうと思うことができて、今があるというのが一番大きいと思っています。

問 今、一番力を入れていることは何でしょうか。

岩瀬 1つは自分たちが提供している結婚式の品質を良くしていくことです。世の中の変化にどう対応していくか。とにかく外に目を向ける、外と手を組む、外と新しいものを生み出すことを心掛けています。社内にいると、良い化学反応が起きない。とにかくやってみて早くPDCAを回していくことが大事です。

野尻佳孝会長


5年間は口を出させない

「EVOL2027」をきちんと実践

岩瀬 冒頭で申し上げた3本柱。グループ全体で1000億円の売上げを超える計画を、27年に向けて考えました。中身は国内ウェディングが500億円、リゾートウェディングが200~300億円、ホテルは300~400億円です。

問 国内は既に500億円以上あるのに、減ってしまうのですか。

岩瀬 今520億円ですが、頑張っても利益構造を改善できない店を、勇気を持って閉店する。そして営業利益率を上げていくのが一つのテーマです。海外は今100億円ですが、結婚式をするチャペルを広げて日本人だけでなく中国の方のリゾートウェディングも加速させます。

問 ホテル事業はどうですか。

岩瀬 野尻が頑張っていて、27年までに10のホテルを作ることを発表しています。政令指定都市には、別のホテルブランドを作っていこうと。宴会場を持ちますので、結婚式のシェアはどんどん高まっていく。ホテルとリゾートウェディングの事業を手掛けるのは野尻を含めて創業メンバーで、ゼロから1を作ることが好きな人たちです。何も考えずに走ってもらう環境を作るのが僕の仕事だと思っています。開業のコストもかかりますので、毎年どのように利益計画を作るか、主力事業のウェディングでうまく補填しながら調整していく必要があります。

問 課題はありますか。

岩瀬 変わろうと思っていても、変わるスピードが遅いことです。成功体験があればあるほど、難しい。会社のステージを変えようとしていますが、必要とされるスキルや力が変わるだけなのに、全部が変わってしまうのではと危惧している節がある。そうではないことをどう理解してもらうかが今の課題です。今までとは違う概念で作った事業やサービスが収益を生み出し、世の中から評価されるような事実を作っていきたいですね。 

問 岩瀬社長の夢は何ですか。

岩瀬 親会社の社長としてT&Gグループが、ホスピタリティ産業に常にイノベーションを起こしていくことです。「EVOL2027」を実現していくことで、それを認識してもらおうと思っています。一方、国内ウェディングとしては常に業界のリーダーであり続けたいです。

■ Profile

岩瀬賢治(いわせ・けんじ)

1967年愛知県生まれ。大学卒業後、名古屋観光ホテル入社。レストランサービス部門に配属後、販売、宴会、営業企画、宿泊などあらゆる部門でホテル運営の経験を積む。2002年テイクアンドギヴ・ニーズに入社。「ハウスウェディング」スタイルを確立してブライダルマーケットに新市場を創出し、数店舗で支配人を務める。05年、大阪エリアのグループマネージャーに就任、07年本社に異動し、営業統括部長をはじめ5 部門の統括部長を務める。09年6月、取締役就任。2015年6月、代表取締役社長就任。



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