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2019年11月28日

モチベーションカンパニーへの道 vol.39 デジタルデータを駆使した企業変革を支援する/ヴォガロ代表 米田純也  J u n y a  Y o n e d a

企業家倶楽部2019年12月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.39


(文中敬称略)

 インターネットが登場して早25年。ちまたではデジタルトランスフォーメーションが叫ばれ、デジタル情報を利活用してマーケティングなどの企業活動を推進する流れが生まれている。

 そんな中、デジタルデータを駆使した企業変革を支援しているのが、米田純也率いるヴォガロである。現在注視しているのはファッション、ブライダル、暮らし、教育、ツーリズムの各領域。取引社数は260社に及ぶ。

「私たちの強みは、業界ごとに異なる課題を知り抜いており、成功に至るためのノウハウを保有していること」と語る米田。ヴォガロはこれまで、密な繋がりを持つ顧客企業と二人三脚で課題に取り組んできた。業界を絞っていることもあり、同じマーケットにいる複数の経営層と議論する機会に恵まれたため、世の中の変化にも敏感に応じることができている。



Eコマースの売上げ500%増

 では、ヴォガロは顧客企業に対して、具体的にはどのような変革をもたらしているのだろうか。特徴的な事例を2つ見てみよう。

 まず紹介する彼らの顧客は、東証一部上場の老舗流通企業である。売上げは約1000億円。ヴォガロは、この会社がライセンス契約している約20ブランドのうち、かなり認知度の低い一商品のデジタルマーケティングを託された。

 結果は一目瞭然だった。Eコマースにおける同商品の売上げは前年比500%増。それまでの1年間で蓄積されてきた商品の口コミデータ量をわずか1カ月で突破するほど話題となり、リアル店舗への来店数も前年比250%増加した。それまではマイナーと言わざるを得なかったブランドであったが、約20ブランド中2位の業績に躍り出た。

 また、とある有名外食企業からは、デジタルを駆使した人材の獲得と定着を依頼された。彼らが欲していたのは「企業家精神を持っていて、グローバル志向の人材」。しかし、当時のサイトは保守的であり、ミスマッチが生じていた。
「お客様の求める人材は、通常の就活サイトでは来そうにありませんでした。そうした場合、ターゲットとなる方々の行動パターンを分析し、それに合ったウェブサイトの構築やプロモーションを行わねばなりません」


 そう考えて行った的確な発信が功を奏し、応募総数こそ前年と大して変わらなかったものの、求めるターゲット層のエントリー数は2倍になった。



自ら流行を創出する

 米田が事業を立ち上げたのは2002年。当初はウェブの企画、制作、開発などを専業で行っていた。既にインターネットビジネスの興隆期ではあったが、創業した瞬間、大手交通インフラ、大手メーカー、学校法人などから依頼が殺到した。

 当時は「ウェブ制作」と言っても、まだ「名刺や看板代わりにウェブサイトを作りたい」といった要望が多かった。しかし、そんな中で米田は圧倒的にデザイン性、操作性の高いサイトを構築し、好評を博した。

 04年に法人を設立した際、米田は会社の強みを研ぎ澄まそうと、10年間は事業を多角化しない方針を決定。「顧客企業の課題解決のためにウェブ制作を行う」ことにかけては日本一と言われる企業を目指した。

 転機となったのは11期目。インターネット技術の目覚ましい進化もあり、ウェブ制作だけでなく、企業のデータをビジネスに利活用していく事業体へと大きく舵を切ったのだ。

 社名を変えたのも、このタイミングである。元々はフランス語で「流行の中に」を意味するインヴォーグという名であったが、デジタルデータを駆使して顧客の業績を伸ばしたり、ビジネスモデルを変えたりしていきたいとの想いから、フランス語のヴォーグ(流行)とイタリア語のレガロ(贈り物)を掛け合わせ、「流行を届ける」という趣旨の造語として「ヴォガロ」と名付けた。


「顧客や社会に必要となるプロダクトを作り、人々の生活を変える架け橋になりたい。これからは流行の中に身を置くのではなく、自分たちが流行を創出していく。そんな想いを込め、社名を変更しました」



顧客企業のCDOを担う

 こうして順調に業績を伸ばしていったヴォガロだが、スピード重視の経営に組織が悲鳴を上げた。幹部や主要メンバーが相次いで退職。60名近かった社員数は一気に40数名にまで落ち込んだ。

「完全にトップ依存症。私や経営チームがどんどん意思決定を行った結果、私たちがいなければ会社が前に進まない状態になっていました」 当時を振り返り、「この時は本当に辛かった」と表情を曇らせる米田。そんな中で手を差し伸べたのがリンクアンドモチベーションだった。同社のサービス「モチベーションクラウド」を導入し、多角化していた事業ごとの組織状態や課題を分析。リーダーを正しく評価する仕組みを作り上げた。結果、組織の状態は良くなり、社員数も50名にまで復調した。

 こうして持ち直したヴォガロが目指すのは、顧客企業の外部CDO(最高デジタル責任者)としてデジタルを駆使した戦略の策定と実行を担うことだ。

 現在、世界の時価総額ランキングを席巻しているのがIT企業なのは言うまでもない。デジタルデータを利活用して飛躍するこれらの企業の裏には、必ずと言って良いほどCDOの力がある。

 だが、アメリカではCDOを置いている企業が3割強とされる一方、日本におけるこの比率は7%に過ぎない。「日本の中でデジタル変革をしたい企業は多いが、その戦略指揮を執れる人材がいない。この問題を私たちが解決する」と米田は熱く語る。

 ただ、いくら素晴らしい戦略を実行しても、組織が機能しなければPDCAは回らない。そこで、組織や人材の開発を受け持つパートナーとして、ヴォガロはリンクアンドモチベーションと業務提携も行った。



関西の空洞化に一石を投じる

 米田の問題意識は地方創生にも及ぶ。兵庫県尼崎市の出身で、関西圏を中心に活動してきた彼は、西日本の元気の無さを肌身で感じているのだ。「創業時からの取引先でも、倒産してしまった会社がある。ベンチャー企業には勢いが無いですし、大手企業の中でもイノベーションが起きていません。市場は縮小傾向にあります」

 確かに数字を見ても、18年に日本で上場した企業数全90社のうち、関西勢は大阪6社、兵庫4社の計10社にとどまる。「第二の都市」と呼ばれる大阪だが、本社機能を東京に移転する企業も増えており、関西の空洞化は進む一方だ。

「東京にはあらゆるものが一極集中しているので、店舗を作れば売れる。しかし、大阪ではそうはいかない。デジタルを通じて地方企業のビジネスを変えていくことに意義がある」

 地方企業の「チェンジメーカー」。これも、彼らの目指すところである。

 ヴォガロにとって、ウェブマーケティングで注目を集めるのはお手の物。しかし、「実態が無ければ、一過性のブームで終わってしまうため、本質的な問題解決にはならない」と米田は説く。


 ただ「儲かる」ではなく、中長期で業界や社会の課題を解決していく製品を作り、そうしたブランドストーリーと共に浸透させる。それがひいては、人々のライフスタイルを変え、「日本の幸福度を上げたい」という米田の夢にも繋がってくるのだろう。



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