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トピックス -企業家倶楽部

2020年02月05日

資産価格上昇が期待される日米経済

企業家倶楽部2020年1/2月合併号 【2020年日本経済を読む】武者リサーチ 代表 武者陵司 Ryoji Musha







長期好況の終わりではない ミニサイクルの回復局面

 現在が米国の長期好況の終わりなのか、それともミニリセッションの底入れ局面なのかが、ここ一年間の経済論争の焦点であった。多数派の意見は2009年以来10年にわたって続いた史上最長の景気拡大の終焉が間近、というものであったが、その可能性は当面なくなり、20年中も景気拡大が続くとする見方が大勢となっている。最も懸念される米中貿易戦争の影響も、限定的とみられる。オランダやオーストラリアでは20年を超える景気拡大が続いた例があり景気拡大に寿命があるわけではない。

 ただ長期景気拡大の中でもミニサイクルがあり、市場はその影響を受けている。最近では15年春ピーク、16年春ボトム、18年春ピーク、19年春ボトムとなっている。18年半ばからのミニ後退は、スマホや自動車の買い替えサイクルでピーク感が強まっている時に、米中貿易戦争が勃発し、不透明感から多くの投資案件が棚上げされたことによって起こった。しかし今、買い替えサイクル一巡とともに、米中貿易戦争の不透明感も解消されつつある。ミニサイクルは19年で底入れし20年にかけて反転する可能性が強いのではないか。

 この3~4年の景気ミニサイクルは、貿易と投資によって変動しており、いずれも製造業の景気循環といえる。米国の場合、製造業の国民所得に占める割合は11%と中国29%、ドイツ22%、日本21%に比して著しく小さく、循環の波が小さくなっている。製造業分野では、自動車もスマホも鉄、セメントも今や中国が世界最大の市場であり、世界の景気循環は米国以上に中国が波を作っているのである。

 米国では技術革新・産業革命の寄与により史上最長の景気拡大が続いている。新技術の下で企業の生産性が高まり業績が好調、また人々のライフスタイルが、例えば”所有からシェアへ”などと大きく変化し、新しいサービス事業分野が生まれている。雇用は全分野で拡大しているが、教育医療、娯楽観光、専門サービスなどが特に好調である。こうした技術革新によるサービス業の景気は大きく波打つことなく着実に拡大している。


長期好況の終わりではない ミニサイクルの回復局面

懸念は米中貿易戦争 だが中国の譲歩で一時休戦に

 最大の関心事は米中貿易戦争であるが、それは一時休戦、再戦、再休止という繰り返しが延々と続くだろう。言わばしばらく続くニューノーマルといえる。米中ともに深く経済的に相互依存しており、直ちには関係を断ち切れない。また米中とも政治的にリセッションを許容できず、金融財政などのマクロ手段を繰り出している。ニューノーマルのもとで貿易、投資を含む経済活動が営まれ、景気変動もあり、景気回復が起きる。また中国に集中しているグローバル・サプライチェーンの再構築が進む。中国で生産している企業、中国に供給を頼っている企業は他国への移転をより加速させるだろう。中国では貿易で起きるマイナスを国内需要の振興でカバーする努力が続く。

 米中交渉の主導権は米国側にある。中国が譲歩しないとして制裁関税を100%、200%と引き上げれば、米中貿易は激減し、中国経済は直ちに破綻するだろう。中国の経常収支は対米黒字約4000億ドル、非対米赤字約3500億ドル、合計500億ドルと極端な対米依存になっており、米国と対決し続けるわけにはいかないことは明白である。結局中国は折り合わざるを得ず、一時休戦を余儀なくされよう。


懸念は米中貿易戦争 だが中国の譲歩で一時休戦に

香港での民主派勝利 米国での香港人権法成立で中国窮地に

 香港区議会議員選挙で民主派が圧倒的多数を占めた。香港で唯一、真の民意を反映できる直接選挙でのこの成果は、中国における一国二制度の形骸化の野望を完全に砕くものである。米国では上下両院の圧倒的多数で成立した香港人権法を大統領が批准した。国際社会の監視圧力は極めて大きい。非人権的対処は中国の国際的評価を決定的に失墜させるので、今や香港への武力介入・制圧という選択肢はないだろう。しかし他方で香港の混迷を長引かせ、香港経済の悪化・衰弱を引き起こし、香港の持っている金融・通商機能を深センや上海に吸収するという選択肢もない。香港は、中国にとって通商と金融の対外ゲートウェイであり、その役割の喪失は中国にとって致命的である。米国と協議し米国の意に沿う形で、民主派に譲歩して事態を沈静化させるしかないだろう。米国議会における香港人権法の成立と、香港区議会議員選挙における民主派勝利は、現在進行中の米中通商協議において中国側に譲歩と早期決着を迫る誘因にもなるだろう。



世界製造業のミニ景気循環 半導体主導で底入れへ

 米中貿易戦争が一時休戦になると、世界経済回復が視野に入ってくる。先に触れたように世界の景気循環は製造業活動の変動によってもたらされ、製造業活動の変動は中国の需要に最も強く影響される。18年以降の世界経済ミニ循環の落ち込みは、中国内需の悪化によって引き起こされたが、今はその底入れ局面にある。落ち込みの主因である自動車需要が底入れ、内需を抑制してきた体質改善、インフラ投資抑制策も大きく転換されている。金融緩和により不動産価格は上昇し不動産投資も押し上げられていくだろう。加えて18年春以降の落ち込みをけん引した貿易戦争による不確実性も、消えつつある。棚上げされていた投資は復活し、第三国(例えば台湾)では新規投資が起きる。さらに5Gなど新技術投資が始まり、最先端半導体などで競争先行のための投資が活発化し始めている。例えばTSMCの半導体製造装置7~9月は77億ドルと過去の10~20億ドルベースを大きく上回った。

 最も製造業景気変動に敏感な半導体株が最高値を更新している。さらにFRBの3回の利下げでイールドカーブが正常化し、金融面での逆風は消えている。金融緩和政策は、世界各国で展開されており、その効果が顕在化することも見込まれる。20年前半はリスクテイクが大きく活発化していくだろう。


世界製造業のミニ景気循環 半導体主導で底入れへ

日本企業の有利なポジション

 米中のハイテク企業の新世代投資のピックアップ、台湾企業TSMCの設備投資姿勢の変化の恩恵を日本企業はいち早く享受している。それは半導体装置分野、半導体素材分野などハイテクサプライの枢要部分を日本企業が抑えているからである。韓国、中国、台湾に華々しいハイテクビジネスの中枢(半導体、液晶、パソコン、スマホ、TVなど)を奪われた。またハイテクサイバー空間、インターネットのプラットフォームはアメリカと中国企業が支配している。一見日本は負け組に見えるが、日本企業は他の国が作れないオンリーワンの領域をハイテク周辺・基盤のサプライ分野にたくさん作り、独占的なビジネスをしている。今はハイテクの中枢部は大変な激戦区であり、米中貿易戦争交えて熾烈な競争が展開されているが、周辺・基盤分野での競争は激しくはなく、日本は有利なポジションにいる。かつての価格競争から脱却し技術・品質優位のオンリーワン領域に特化している。またグローバル・サプライェーンを収益化し、グローバルアーニングスチェーンを世界に先駆けて確立している。平成の初めに、日米貿易摩擦と超円高で一旦壊れた日本企業の稼ぐ力(Business Model)は、大きく再構築され、日本企業の収益力は著しく高まっている。

 19年の世界製造業景気のミニサイクルの落ち込みで最もダメージを受けたのが日本株式であった。日本経済は先進国では最も製造業依存が大きいうえに、東証上場株式時価総額のほぼ50%が製造業であり、グローバル景気に左右されやすい。またミニサイクル下落局面でのリスクオフから円高になったこともそれに拍車をかけた。しかし世界景気回復となれば、リスクオンの円安も加わり株高がサポートされる。そもそも需給面、心理面、バリュエーション面で日本株式は大底圏場面にあった。グローバル投機家のポジションを示す裁定買い残は歴史的低水準、陰の極のシグナルを示していた。8月につけたPBR1倍はバリュエーション上の岩盤であった。

 加えてインフレ加速の気配が見え始めた。マンションとオフィスビルで空き室率が低下し賃料がはっきりと上昇に向かい、不動産価格が上昇している。マイナス金利の下で不動産の投資スプレッドが拡大し、REITなどがますます魅力的になっている。日本の長期デフレは、20年にわたる『不動産価格、暴落家賃下落、広範な物価下落、賃金下落』、という悪循環が引き起こしたと言っていい。この結果日本は世界最低の低レバレッジ国となった。日本の低成長をもたらした、デフレ、レバレッジの低下、購買力低下、それらが今大きく変化しつつあるといえる。

 日本企業は欧米企業に比べてレバレッジが低い。それは財務上のクッションが著しく大きいことを示しており、

1.万一世界リセッションとなれば最も不況抵抗力が強い

2.好況が続くならM&Aや自社株買いを通して一株当たり利益を顕著に増加させる潜在力がある

ことを示している。ほぼアベノミクス以降の5年間の日本株買いをすべて吐き出した世界の投資家は、日本株の比率を再度急速に高めざるを得ない時期に来たのではないか。

 20年の最大のテーマはマネー余剰の行先だが、その向き先は株式ではないか。19年はグローバルな余剰資本が苦し紛れに国債に向かい、債券バブルが形成された。景況回復により国債はもはや投資対象ではありえず、余剰資金はどっと世界株式へ流れ込む可能性が大きいのではないか。



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