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トピックス -企業家倶楽部

2020年02月07日

「英連邦大会」から真の「ラグビーW杯」に/日本経済新聞社客員 和田昌親

企業家倶楽部2020年1/2月合併号 【地球再発見 vol.24】


第9回ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会は南アフリカの3度目の優勝で幕を閉じた。だが、最大の話題は優勝国がどこかではなく、日本代表の初のベスト8だった。日本人は老いも若きも男も女も熱狂的に応援し、選手たちは念願がかない涙した。1995年W杯でニュージーランドに17-145という最多失点記録の惨敗映像を見た筆者も今回は大満足だった。

 そんな熱狂の中でひとり考えた。実は日本代表が全く別の偉業を達成したのに、それを伝える報道は一切なかった。ラグビーというスポーツの古い伝統、特殊性をアジアの弱小国日本が堂々と覆し、「英連邦の互助会」のようなスポーツにクサビを打ち込んだのだ。

 ラグビー強国にとっては、好きなように振る舞っていた互助会の屋台骨を揺さぶられる大事件だったのではないか。「日本は強かった」ではなく、「我々の未来は厳しいぞ」と動揺したに違いない。

 ラグビーは英国で生まれた。紳士のスポーツとして上流階級を中心に普及、下層階級のサッカーとはっきり区別した。旧植民地の英連邦を中心に、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、南洋諸島などに普及させた。そして仲間内だけ、強国だけで覇を競い合ってきた。ややこしいルールも彼らだけで決めた。

 しかし、そんな状況を時代が許すはずもない。87年に英連邦から世界全体に門戸を広げ、第1回W杯が開かれた。30年に始まったサッカーW杯に比べ57年も遅れていたこともあり、ラグビー第1回W杯は予選なしだった(第2回以降は予選あり)。

 予選なし、はその時点では「伝統」のひとつでもあった。今度の日本大会は20カ国が参加したが、4つに分かれた各組3位まで、つまり12カ国が次回フランス大会の予選を免除される。新たにW杯に挑戦できるのは8カ国だけとなる。

 サッカーW杯と決定的に違うのはこの点だ。サッカーW杯は開催国だけ予選は免除されるが、残りはすべて地域予選をクリアしないと参加資格を得られない。

 もうひとつ、理解しにくい「伝統」がある。国際統括団体「ワールドラグビー」は世界のランキングを決めているが、それとは別に世界各国のラグビーの強さを「ティア1」「ティア2」「ティア3」の3つに分け、「ティア1」の10カ国を特別な存在、つまり強国と位置付けている。「ティア1」は北半球6カ国、南半球4カ国で構成されるが、世界ランクが変わっても、この分け方がなぜか変わらない。

 日本のような「ティア2」の13カ国は相撲の幕内(ティア1)から見れば幕下のような格下の存在である。だから「ティア2」が国際試合を「ティア1」に申し込んでも断られることが多いと聞いたことがある。

 誰が「ティア」(階級)を決めているのか、あいまいだが、日本がW杯で勝つこと自体が奇跡などと大騒ぎするのではなく、強国日本の誕生をしっかり評価する必要があるだろう。

 仲間内だけで強国を決めるスポーツは本来、五輪にはふさわしくない。誰でも参加できることが五輪の基本精神だ。それでもリオ五輪から7人制ラグビーが正式種目として認められ、東京でも実施される。

 しかし、試合時間わずか14分の7人制は五輪種目としては間に合わせの感がぬぐえない。正規の15人制ラグビーが五輪の正式種目になれないのは、世界のスポーツになり切っていないからだ。

 ラグビーと違って、サッカーは各国分け隔てなく単純なルールで戦うから世界中に普及した。今回W杯でラグビーのにわかファンになった若い母親の本音は「ケガが怖いから自分の子供にはやらせたくない」かもしれない。ラグビー関係者のやるべき仕事は多い。



和田昌親(わだ・まさみ)

東京外国語大学卒、1971年日本経済新聞社入社、サンパウロ、ロンドン、ニューヨーク駐在など国際報道を主に担当、常務取締役を務める。



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