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トピックス -企業家倶楽部

2020年02月27日

コンテンツで溢れる世の中に/メディアドゥHD社長CEO 藤田恭嗣Yasushi Fujita

企業家倶楽部2020年4月号 トップインタビュー





出版業界に現れたベンチャーの雄メディアドゥホールディングス。今や電子書籍市場を牽引する存在に成長。2016年には東証一部に指定替え、17 年には業界2位の同社が1位を買収するなど、破竹の勢いで業績を伸ばしている。出版にITを取り入れ、業界全体を変えるべく邁進するフロントランナーである藤田恭嗣社長に電子書籍の未来を聞いた。

(聞き手は本誌編集長 徳永健一)



業績好調で上方修正

問   業績好調ですね。先月の第3四半期決算では、大幅に上方修正を発表されました。今期の売上げはどのくらいの着地を見込んでいますか。

藤田   我々が18年に発表した中期経営計画では、21年度に売上げ630億円を見込んでいました。ですが、20年第3四半期決算の時点で、その数字を達成出来る見込みが立ったため上方修正を行いました。今期は売上げ650億円を見込んでいます。

問   一年前倒しで目標の数字をクリアしたとは驚きです。業績好調の要因は何でしょうか。

藤田   電子出版市場の成長・拡大が大きな要因となっています。11年度は651億円の市場規模であった電子出版市場ですが、18年度には3112億円と約5倍に拡大しています。電子出版市場は我々が想定しているよりも早いスピードで成長しているのです。マーケットの成長がメディアドゥの業績好調を支えています。

問   拡大を続ける魅力的な市場でビジネスをされていますね。これも藤田社長の先見性があったからでしょう。ところで、電子出版におけるメディアドゥの立ち位置はどうなっていますか。

藤田   電子出版業界においてメディアドゥの存在価値は年々高まってきています。これも業績好調の要因と言えるでしょう。電子書籍はキャンペーンが多いという特徴があります。紙の本では月に多くても20 本程度でしたが、電子の場合、1000本を越えます。電子書店と出版社が直接やり取りをしていたら、この数をこなすことは不可能です。
   そこでメディアドゥが電子書店の代わりに出版社と打ち合せを行い、まとめたものをパッケージ化して各書店に落とし込みます。我々が間に入ることによって作業が軽減されるので歓迎されているのではないでしょうか。キャンペーン数が多い電子書籍だからこそ、メディアドゥの存在意義があります。


業績好調で上方修正

電子出版はコミックが9割を占める

問   成長を続ける国内の電子出版業界はどのような特徴があるのでしょうか。

藤田   海外と比較し日本の電子出版市場の特徴はコミックの存在が大きいことでしょう。まず日本で配信されている電子書籍の約90%をコミックが占めます。そして日本のコミックの55・8%が電子化されています。コミックの成長が電子出版業界に大きな影響を与えています。

問   すでに日本のコミックの半分が電子化されているのには驚きました。

藤田   電子コミックはコミック全体に大きな影響を与えました。電子コミックで配信することによって、数多くの読者からの認知が上がります。それによって、電子で興味を持った読者が紙コミックを購入するようになりました。まさに電子コミックがカタログ効果を発揮して紙コミックの売上げにも貢献していることが分かっています。

問   アメリカでは日本と違って、電子書籍といえばテキストだそうですね。将来的には日本でもテキストの市場は伸びるのでしょうか。

藤田   日本でテキストの市場が小さい要因としては、まずコンテンツの少なさが挙げられるでしょう。これに関しては心配はいりません。なぜなら、出版業界において、電子化が必須であるという考えがあり、今後コミックと同様に、テキストも作品数が増えていくからです。
   そして次に「デジタル化コストが高い」ということも言えます。デジタル化の費用はコミックが1冊1000円であるのに対して、テキストは5万円かかります。なぜそこまでコストがかかるのかというと、漢字のルビや拡大した時の改行の仕組みなど、コミック以上にやることが多いからです。ですが昔に比べて、作家さんや出版社のこだわりがなくなってきており、今まで以上に電子化しやすくなってきています。日本も海外と同様にテキスト市場が伸びていくと予測しています。



印税を正しく作家へ

問   紙と電子のマーケットで一番の違いは何でしょうか。

藤田   先ほども述べましたが、「キャンペーンの多さ」でしょう。紙の本は再販制度によって、定価でしか売ることが出来ませんが、電子書籍はそのような決まりはなく、新刊が出たタイミングで「2巻まで無料にする」「値下げする」などが可能になりました。

問   エンドユーザーの注目を集めるために、キャンペーンが増えることは業界にとってプラスになりますね。

藤田   それは仰る通りです。一方でキャンペーンが増えることで、印税分配が複雑化するという問題があります。紙の本は印刷した段階で印税が発生するため、印税計算は簡単でした。
   しかし電子書籍は違います。キャンペーンで無料や半額にすることが出来るため、月間でも第一週は0円、第二週は300円、それ以外は500円のように価格が複数になるので、計算が複雑になります。印税計算が複雑化してしまうと作家さんへ正しい印税を払うのが難しいのが現実です。

問   この印税問題に解決法はあるのでしょうか。

藤田   解決するには現在150ある電子書店とシステムでリアルタイムに繋がらなければなりません。それは出版社単独では不可能です。そこで、我々のような中間流通会社がキャンペーンと連動した印税分配システムを構築しなければなりません。

問   デジタル化と親和性がありそうですね。テクノロジーに強いメディアドゥが開発したシステムがスタンダードになると、作家さんらも本業に集中出来ますね。

藤田   はい、コンテンツを作っているのは作家さんです。彼らに正しい印税が分配されることが重要となります。印税分配システムを提供することが出来れば、正しい印税が作家さんに入ることになります。
   さらに、どれだけの印税が入ってくるのかを作家さんがリアルタイムで確認することも出来るので、安心して創作活動に専念出来ますね。

問   最近では音楽コンテンツやアパレルなど幅広い業界で定額制(サブスクリプション)サービスが流行っています。電子書籍もサブスクモデルは考えられますか。

藤田   サブスクリプションサービスの条件は2つあると考えています。まず1つ目が音楽を聴きながら料理するといった様な「ながら」利用が出来るかどうかです。そしてもう一つの条件は「大量消費」が可能かどうかです。サブスクがうまく機能している音楽を例に見てみましょう。音楽は料理をしながらでも運動しながらでも利用出来ます。そして一曲は約4〜5分ですので、1カ月で数百曲聞くことが出来ます。
   ですが、本はどうでしょうか。「ながら」では読むことは出来ません。また音楽と同じように一カ月に何百冊も読むことは不可能です。現時点では、書籍はサブスクリプションサービスには適さないのではと考えています。

問   全てにおいてサブスクリプションサービスが適用出来る訳ではないのですね。

藤田   電子書籍においては、プロモーションとしてのサブスクリプションサービスであれば成立するでしょう。数巻だけ読み放題にして、「続きを読みたければ購入してくださいね」といったように購入へと誘導する形にする。このように使えば良いかもしれません。 


印税を正しく作家へ

今がまさにターニングポイント

問   17年に業界1位である「出版デジタル機構」を合併するという社運を賭けたM&Aを行いました。どのような経緯があったのでしょうか。

藤田   数百億円を使った買収でしたので、メディアドゥにとっては大きな転機でありました。もともと「電子書籍」という分野をやろうと思った時からシェアを取ることをテーマにしていました。当時、電子書籍流通業界では、出版デジタル機構が売上げ約200億円で1位、我々は売上げ約155億円で2位でした。やっとの思いで業界2位まで漕ぎつけましたが、圧倒的な1位になるためには3位ではなく1位を買収すべきと判断し、買収を決断したのです。

問   思い切った決断でしたが、その効果はどのように表れていますか。

藤田   出版デジタル機構を買収してから3年でPMI(合併後の事業統合プロセス)を完成させるスケジュールで動いてきました。買収当初は両社とも制度や企業文化も違い苦労しました。
   しかし、給与制度、評価システムの統合を行った結果として、3年目にしてやっと統一されてきました。17年の買収も大きな分岐点と言えますが、それと同じくらい今がターニングポイントであると言えます。



ブロックチェーンが電子書籍を変える

問   今後、電子書籍業界が抱えている課題は何かありますか。

藤田   マーケットが拡大する要素は2つの掛け算だと考えています。1つは商材の「量」がある一定の量を越えるということです。この点については、電子書籍の市場が伸びていることからも、商材の量は伸びていくことが見込まれるためこの部分は心配していません。
   2つ目は、ユーザーが安心して利用出来るということです。電子書籍には「安心」という部分が不足しています。我々はブロックチェーンを利用し、「安心」を提供していきます。

問   最近注目の「ブロックチェーン」ですが、どのようにユーザーに「安心」を提供するのでしょうか。

藤田   例えば、紙の本であれば一度買えばずっと所有出来ます。しかし、電子書籍だと購入した電子書店がサービスを続けられなくなると読めなくなってしまいます。それだと安心して電子書籍を読めません。そこでブロックチェーンの技術を使えば、ユーザーの購入履歴を記録出来るため、購入した書店が万が一潰れても他の書店経由で作品を読むことが出来ます。

問   ブロックチェーンを活用すると新しい価値が生まれそうですね。

藤田   ブロックチェーンによって、コンテンツを「消費財」から「アセット(資産)」に変えることが出来ると思います。やり方はたくさんありますが、例えば、ダウンロード出来る人数を制限して価値を上げるという方法です。電子コミックを配信する際に、通常版は全ての人がダウンロード出来るようにします。
   もう一つは、通常版には無いストーリーを付け加えた特別版を100人限定でダウンロード出来るようにします。そうなると特別版は定価以上の価格でやり取りされるようになるでしょう。このように出版社と作家さんに様々な選択肢を提供することが出来れば、新たなコンテンツが生み出されるはずです。

問   好きな作家が新しい作品を創り出すきっかけになればユーザーにもメリットがありますね。コンテンツの物流が変わると、マーケットも大きく変わるのではないでしょうか。

藤田   ユーザーは一消費者から投資家に変わるでしょうね。例えば、新しい作品を書きたい作家さんがいるとします。その場合、今までは出版社がリスクを背負って原稿料を支払っていました。しかし、出版社が全てのリスクを背負っていてはコンテンツはなかなか増えませんよね。
   そこで、新しい作品を書きたい作家さんがいた場合に、出版社だけでなくユーザーも作家さんに「投資」という形でお金を払うことが出来たらどうでしょうか。コストの制約もなくなるため、今まで以上に世の中にコンテンツが出ていくでしょう。

問   藤田社長が語るような未来が実現すれば、世界中が魅力的なコンテンツで溢れるものになるでしょう。

藤田   紙の本では物理的にコンテンツで溢れかえる世の中を作ることは出来ません。しかし、我々が扱っている電子書籍であれば、夢だと思われていた世界を作ることが出来るでしょう。私たちはコンテンツで溢れる世の中を作っていく立場にあります。



P r o f i l e

藤田恭嗣(ふじた・やすし)

1973年、徳島県生まれ。94年大学三年時に創業。96年、大学卒業と同時に法人設立。2000年にIT事業に参入。13年に東証マザーズ上場、16年に東証一部に市場変更。17年第19回企業家賞受賞。同年、持株会社体制へ移行し、電子書籍などのコンテンツを世界へ向けて流通できるプラットフォームを提供する電子書籍流通事業を展開。



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