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トピックス -企業家倶楽部

2020年06月03日

差別化はお客様が感じるもの

企業家倶楽部2020年6月号 ストライク特集第3部 編集長インタビュー





穏やかで誠実な人柄の荒井邦彦社長。M&Aを活用することで事業を継続し、社員の雇用を守り、規模の拡大により生産性が上がれば収益性が増し、顧客も株主にも還元できる。「M&Aは多くの人を豊かにし、役に立つ手段」と本質論を語る。どこまでも人間至上主義を掲げる企業家の世界観に迫る。(聞き手は本誌編集長 徳永健一)



日本企業が再び世界で輝くために

問 M&A仲介業をされていますが、業界の現状について教えてください。

荒井 M&Aを活用されて大きく成長していかれる会社が増えています。一部の特殊な企業や大企業で使われる手段という印象から、中小企業でも有効に使えるという認識に変わってきたと感じています。

問 中小企業でもM&Aを活用しようと変化してきた理由は何でしょうか。

荒井 日本は少子高齢化と言われて久しいですね。国内マーケットは縮小傾向にある中で、成長戦略を描いても自前成長だけでは補えない時代になってきています。30年前のバブル崩壊までは、経済全体が伸びていたため、M&Aをしなくても業績を伸ばすことができました。今後は人口減が待っていて、これまでと同じやり方では売上げは落ちていくことが予想されます。

 日本国内の産業構造を見てみるとGDPの約7割がサービス業となっています。海外進出しているグローバル企業は一部で、国内市場で成長戦略を考えるとなると、M&Aはますます外せない手段となってきています。

問 国内市場が中途半端に大きく日本の企業はそれに甘んじ、海外からはガラパゴスだと揶揄されています。それが競争力を失う原因となり、世界での存在感が下がっていますね。

荒井 バブル崩壊以降、日本の企業は世界の中でどんどん地位が落ちてきています。現在は時価総額トップ10に入っている企業はありません。30年前はトップ10に7社入っていたこともありました。現在は、日本の時価総額トップのトヨタが30位内に入るかどうかです。

 それは日本企業がM&Aと距離を置いてきたからではないでしょうか。あるいは、M&Aの取り組み方が上手くできていなかったのが原因ではないかと思います。つまり、資本の生産性が海外のグローバル企業並みに上がっていなかったのが現在の停滞の理由ではないでしょうか。

問 日本企業が再び世界で存在感を発揮するためにはどうしたらいいのでしょうか。

荒井 一言でいえば、経営の生産性を上げることです。中小企業の経営者は事業承継の課題があります。後継者が不在で、誰かに任せるとなると少しでも大きな企業に事業譲渡したいと考える方が多いです。引き継いだ企業が生産性を上げてさらに成長するように橋渡しをして、貢献していきたいと考えています。



差別化はお客が判断するもの

問 2016年に東証マザーズに株式上場を果たし、17年に東証一部へ市場変更をしました。他にも上場しているM&A仲介会社がありますが、大手3社の違いはどこにありますか。

荒井 インターネットを使って仲介することを最初に始めたのは弊社です。1998年から「M&A仲介市場SMART」を開設しています。創業者の経歴から言うと私は公認会計士出身で、他の2社は営業出身です。その違いが出ることがあるかもしれません。

問 クライアントはどのポイントで選んだらいいのでしょうか。

荒井 まだM&A業界自体の寡占化が進んでいない状況です。大手3社と呼ばれていますが、国内の案件は年間で約1万件あると見積もっています。弊社が100件ですので全体の1%です。1%から3%ですから、クライアントを取り合う規模ではありません。

 それではクライアントはどこで仲介会社を選ぶかといったら、まずは個々のコンサルタントがしっかり仕事をしてくれるかどうか、信用が置ける人物かどうかです。現実的には、競合とバッティングしている方が少ないのではないでしょうか。

問 まだ客を奪い合うような段階ではなく、たまたまそのタイミングや縁で出会うことが多いのですね。将来的には特徴や差別化を打ち出していく場面があるかもしれませんね。

荒井 私は、差別化はお客様が感じるものだと考えています。担当者がお客様の前に立った際に各社の違いはどこにあるのか、お客様に決定権があるという考え方です。だから、ストライクのコンサルタントには、「自分自身が他社との差別化なのだ」という自覚を持って仕事をしてもらいたいですね。

問 最終的に「人」に行きつくわけですね。荒井社長が社員に求める資質は何でしょうか。

荒井 私たちが相手にしているのは、経営者なのです。自分もストライクを代表しているという気持ちで現場に出ていないといけません。お客様には大きな決断を求めているのに、担当者が「社に戻って検討します」では、クライアントの信頼を得ることは難しいでしょう。

「この担当者はどこか頼りない」と思われたら、会社の売却を決断する際にサポートできません。お客様は自分がいなくなった30年後の未来を託して決断するのですから、心配ですよね。そのような気持ちを理解して、当事者意識を持って仕事をして欲しいと思います。


差別化はお客が判断するもの

M&Aは、人の想いでできている。

問 荒井社長にとっての仕事観を教えてください。

荒井 M&A仲介会社を経営していますが、最終的には「人」なのだと思います。コーポレートスローガンに、「M&Aは、人の想いでできている。」と定めています。

 売り手も買い手も誰かが意思決定をするからM&Aが成立します。その結果、様々な影響が及びます。働いている社員も経営方針が変わり、良い方向へ向かって欲しいと思います。

 経営統合により会社の収益性が上がり、働いている人が良い給料をもらえるようになったとか、規模が大きくなり生産コストが下がったおかげで、お客様に安く商品を提供できるようになったなど、多方面の人に役に立っていると言えます。

 人が決断したM&Aをきっかけに、より多くの人に良い影響を与えることができる。経済の豊かさを実現していく手段として、M&Aを活用する。これが本質だと思います。

問 会社のロゴを変えたそうですね。どんな意味を込めたのですか。

荒井 17年に東証一部へ市場変更のタイミングがちょうど創業20周年と重なりましたので、それまでのロゴを刷新することにしました。私や社員もM&Aについてどう考えているのかといった内容のインタビューを受けて、1年かけて作ったのですが、デザイナーの方から「思っている以上のことは表現できませんから」と言われましたよ。

 会社は大きくなっても、結局は「人」が集まっている組織です。「最後は人です」と繰り返し話してきたことがデザインになりました。円が3つ重なり並んでいます。売る人と買う人の中間で橋渡しする仲介者を表現しています。よく見てもらうと人が笑っている様にも見えます。社名がストライクなので、野球のボールに見えると言う人もいます。

問 座右の銘を教えてください。

荒井 好きな言葉はその時によって変わりますが、最近よく口にするのは、「今が一番若い」という言葉です。生まれたての赤ちゃんから、高齢の方まで、今のこの瞬間から先は老いるしかありません。どんな人でも今この瞬間が若いのです。年齢を理由にして新しいことを始めない人が多いですよね。私は50歳だからといって何かを辞めることはしないでおこうと考えています。


M&Aは、人の想いでできている。


東京本社エントランス


お客様の前でブレない

問 さらなる成長のため採用を強化していますね。若い人も多いようですが、採用方針について聞かせてください。

荒井 コンサルタントは経験があり、ある程度年齢がいっている方が向いているというのは確かにあります。しかし、若くても頑張っています。コンサルタントですから、自分の父親と同じ世代のお客さんを相手に、「御社の事業戦略が・・」と生意気をいう場面がありますよね。

「うちの子供はこんな風にしっかりと仕事できてるのだろうか?」と比べることもあるようです。若い人はクライアントとの距離感を図りながら上手に立ち振る舞っています。

問 女性社員についてはどうですか。

荒井 この業界は長時間労働で精神的にもすり減らす仕事なので、男性職場と言われていますが偏見があるのでしょう。しかし、男が向いている仕事は重い荷物を持つくらいで男女差はありません。現在の女性比率はコンサルタントの1割ほどですが、今後は増やしていきたいです。

 お客様から「彼女が担当で良かった。変に顔色をうかがったりせずにズバッと本音で助言してくれた」と褒められたことがあります。さらなる女性コンサルタントの活躍を期待しています。

問 仕事をする上での心構えを教えてください。

荒井 最後は「人」なのだと思います。決めるのは人間ですから、「もう悩むのは止めにした。荒井さんが言うなら聞くよ」、この世界だと思います。

 だから、私自身がブレないように心掛けています。売る人は迷うのが当然です。医者と患者さんの関係に似ていると思います。医者は経験値があり、患者さんより分かっていることがあります。ある症状が出ているときは手術しないと助からないことは分かっている。それでも、患者は心の準備ができていないときに医者はどう振る舞うか。

 お客様がブレた時に私たちがブレてはいけません。それがプロフェッショナルです。




Profile

荒井邦彦(あらい・くにひこ) ストライク代表取締役社長(公認会計士・税理士)。1970年千葉県生まれ。一橋大学商学部卒。93年太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入社。97年にストライクを設立。2016年6月に東証マザーズへ上場。17年6月には東証一部への市場変更を果たす。



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