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トピックス -企業家倶楽部

2020年06月02日

GMOインターネットの事例から学ぶ/GMOインターネット 熊谷正寿氏

企業家倶楽部2020年6月号 リスクマネジメントの実践

コロナ対策最前線

GMOインターネット熊谷正寿代表にテレワークの現状を聞いた



大切な従業員の命を守りたい

問 新型肺炎コロナウイルスの感染拡大がなかなか収束しません。そんな中、御社ではいち早く全社的な在宅勤務を始めました。社内で災害対策本部を立ち上げ、1月27日からテレワークを開始するといった迅速な対応ができた理由は何でしょうか。

熊谷 それは日ごろから緊急事態を想定し、BCP(事業継続計画)対応の訓練をしてきたからです。また、コロナウイルスに関する情報収集をしてきました。

問 グループ全体となると約4000人規模の在宅勤務となります。大きな決断となりますが、そこに至るポイントはどこにあったのでしょうか。

熊谷 究極的には従業員であるパートナーの命を守るためです。決断した理由は5点あります。

 1つ目は、人は歴史的に呼吸器系のウイルスに感染すると約10%以上は死亡します。これは人類最初のパンデミック(世界的な大流行)とされている、百年前のスペイン風邪から何回か呼吸器系のパンデミックが発生しました。しかし、百年前と人もウイルスも変わっていません。

 2つ目は、1月25日の感染者数が世界で1975人、死亡者56人でした。その段階でMERS(2012年に流行した中東呼吸器症候群)の1293人を超えていました。そのときの武漢の状況や日本の入国検閲の状況を見るとSARS(02年に流行した重症急性呼吸器症候群)の8096人も超えると予想しました。

 3つ目は、ちょうど春節前のタイミングで、中国人観光客の訪問人気都市ランキングの1位が大阪で2位が東京でした。弊社の渋谷オフィスから一歩出ると、周りは中国人観光客でごった返しています。それは中国に居るのと同じような状況でありました。

 4つ目は、感染リスクが高い武漢市民がロジカルに考えてみても1100人以上国内にいる計算になりました。実際に自分で電卓をたたいて数字を出してみました。

 5つ目は、人・人感染が確実になったことです。国内で3例目の患者が見つかりました。1人の感染者が他の人に感染させる確率は、当時WHO(世界保健機関)で1.4から2.5人とされていました。イギリスの研究チームの論文によると3.6から4.0人と推定されています。当時は保菌者の2メートル以内に近づくと飛沫感染する可能性があるといわれていました。

 よってその段階で14日以内に必ず日本人が日本国内で感染すると確信を持ちました。このようなリスクのある状態で、我々の大切なパートナーを感染リスクにさらしたくありません。

 さらに商談や面接などで来社される方も毎日1000人単位で来社されます。私たちが出社していたらお客さんも面接者も来るわけです。それは殺人に等しいから起こしたくない。そこで在宅勤務にしようと決めたわけです。詳しくはクマガイコムでも情報を開示していますのでご参照ください。


大切な従業員の命を守りたい

サービスを止めないこと

問 今回は新型肺炎のコロナウイルスでしたが、他にもこのような緊急事態を想定されているのでしょうか。

熊谷 シンプルに歴史は繰り返すものだと考えています。つまりウイルスも人間も100年前から変わっていませんから、難しく考えていません。

 もちろんBCP対応はありとあらゆることを考えています。今回のウイルスのパンデミックや大地震、台風や洪水などの大災害も想定しています。

 社会になくてはならないサービスを提供したいという想いで25年間経営してきました。結果としてGMOグループはおかげさまで社会インフラサービスの集合体になっています。もしインターネットが止まってしまったら皆さんお困りになられる。そのインターネットのドメインでは90%、ウェブサイトでは54%を運営させていただいています。私たちが止まってしまったらインターネット上からウェブが54%消えてしまいます。ドメインのDNAサーバーをとめてしまったらウェブサイトの9割が見られなくなってしまう。だからサービスを絶対に止めてはいけないのです。


サービスを止めないこと


テレワーク導入後のオフィス風景


業績に影響なし

問 実際にテレワークを開始して約2カ月が経ちます。そこでみえてきた成果は何でしょうか。

熊谷 全企業に当てはまることではありません。全産業でいうと経済対策を打たなければならないほどお困りになっている会社さんの方が多いと思います。ただ私たちは100社からなるネットグループなので、現状でお話しするとプラスとマイナスの部署がありますが、在宅率が高まっている関係で業績はプラスの会社が多いです。トータルでいうと在宅勤務に移行したことで何ら影響は受けていません。

 在宅勤務で通勤しなくてよくなりました。弊社では「痛勤」(つうきん)と呼んでいますが、痛勤地獄からも解放され、移動時間の節約につながり、パートナーの満足度も高いというアンケート結果が出ています。

問 全社的にテレワークを採用し、業績に影響がないというのは素晴らしいですね。さらに怪我の功名ではないですが、従業員の満足度も高いとは驚きの結果です。どうしてGMOグループでは問題なくテレワークに移行できたとお考えでしょうか。

熊谷 逆にオフィスとは何だったのだろうと気になるところですが、だからといってスタートアップのベンチャー企業がすぐにオフィスなしでできるかといったら、そうではないと思います。私たちは25年間、幹部がコミュニケーションを充分に取ってきたので、そのような貯金があるため、今回のような局面でも機能している側面は否めません。

 この結果をポジティブに捉えて、今後は在宅勤務をシステム化して運用していこうと考えています。まだグループで決議されていませんが、個人的には週の内二日は在宅を通常勤務に取り入れてみたいと思います。

 家賃のコスト削減につながります。業績が右肩上がりで伸びているので、オフィスは毎年増床していました。在宅勤務を取り入れることで数年先まで増床は不要になります。コスト削減できた分の50%をパートナーに還元します。残りの50%は利益計上すれば株主も利益が増えてメリットがあります。

問 まさに困難さんは解決君を連れてくると言いますが、ピンチがチャンスになった訳ですね。

熊谷 今回のような有事でなければ、4000人を二カ月間に渡り在宅勤務にしようという発想は生まれてきません。今はグループの方針として、コロナ問題を一切言い訳にしてはいけないと通達しています。「災い転じて福と成せ」というのが大方針です。その中の最大級の成果が在宅勤務をシステマティックに落とし込むという話です。

 定量的にいうと渋谷区の家賃は月額で3億円です。この額が増床せずに横ばいで済むことになります。週5日勤務の内2日を在宅勤務とすると40%に当たります。


 業績に影響なし


新型コロナウイルスに関する取組みと関連リンク集を公開している


平時から事前に準備しておく

問 東日本大震災やリーマンショック、そして今回の新型肺炎コロナウイルスなど十年に一度くらいの割合で世界的な災害や不景気が繰り返されています。この様な想定外の外的環境の変化に対して、経営トップの心構えを教えていただけますか。

熊谷 何よりも事前準備が大切です。私たちGMOグループが、在宅勤務にすると決めた翌日から移行できるのは訓練しているからです。パートナーがテレワークを一斉に開始してもオフィスの機能を止めずに使えるのは、システム的にVPN(仮想専用線)の設備を対応させておかなければなりません。

 さらに分散化もしています。例えば大地震や核攻撃で東京オフィスが使えなくなるケースでも、大阪に一斉に移動する準備もできています。これらはある日突然実行しようとしても無理で、時間とお金を割いて事前に準備していなければ不可能です。

 今、マスク不足が言われていますが、平時の時にマスクやヘルメット、食料を会社の倉庫に蓄えています。今回のコロナ問題から学び、今後対応できるかどうかが問われます。

問 熊谷代表が事前に準備するようになったきっかけは何だったのでしょうか。対応策のコストも多くかかるのではないですか。

熊谷 過去の震災やSARSの際に困った体験を必ずマニュアル化して、各部門が対応策を考え準備するようにしています。

 コストもかかりますが、私たちの最大の社会貢献はサービスを止めないことです。社会に無くてはならないインフラサービスを提供している企業グループですから、サービスが止まることが社会悪になっていまいます。パートナーの生命を守り、サービスを止めないことが最優先です。

問 御社はミッションドリブンな企業文化を大切にされているのですね。

熊谷 11年の東日本大震災の際に社会は混乱しました。福島原発が爆発し、未曽有の大地震を体験しました。当時、グループ内ではいろんな意見が出ました。ある幹部は今すぐ東北に手伝いに行こう、ある幹部はウェブサイトで寄付を募ろうと喧々諤々と議論しました。

 冷静になって考えると、何が優先されるべきかというとサービスを止めないことだったのですね。組織が組織として維持できて、有事の際にもサービスを提供し続けるために必要なことをしようと全社員でシステムを構築しました。それがベースとなって今回のBCP(事業継続計画)に繋がっています。

問 過去の経験から学んでいるのですね。

熊谷 そうです。組織が組織たる所以は集うこと、連絡がつくこと、集まれることです。小学校ではないですが、緊急連絡網を二重三重に作っていて、幹部は衛星電話を持ち歩いています。SNSのツールを活用し、100人単位で絶えず情報共有をできるようになっています。それが全グループ6000人で共有できるように構築しています。

 有事の際には安否確認をします。緊急事態では情報収集に最も時間を割いてしまうので、ニュースをチェックする係を設置し、全員で情報共有できる仕組みになっています。

 世の中のもっとよくなって欲しいという想いから、私たちのBCP対応の情報やアンケート結果を全てネット上に開示していますので参考にしていただけたら幸いです。

 今回のコロナ感染拡大は長期化する可能性があります。過去のスペイン風邪を調べると、二度、三度の波があります。油断してオーバーシュート(感染爆発)を起こすと、感染者は二字曲線で増えます。どうかワクチンや治療薬が出来るまでは慎重に行動しましょう。人工呼吸器の数を上回る重症患者が増えると医療崩壊につながります。今は緩むべきではありません。



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