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トピックス -企業家倶楽部

2020年06月27日

スタートアップ、優勝劣敗鮮明に――コロナ禍でビッグテックの買い漁りも

企業家倶楽部2020年8月号 GLOBAL WATCH vol.32





米スペースXは5月31日、宇宙船「クルードラゴン」の宇宙飛行士を乗せての打ち上げに成功。英ワンウェブの破綻を尻目に巨額の資金調達にも成功した。((C)NASA/Bill Ingalls)



新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)で、スタートアップの世界が激変している。消費が止まり、人の移動が止まり、資金も止まった。米国を中心にテック業界にレイオフ(一時解雇)の嵐が吹く。一方で、新たな資金調達に成功して息をつなぎ、さらには事業拡大のチャンスをとらえた企業も出ている。「GAFAM(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)」と呼ばれるビッグテックには市場の資金が集まり、評価額の下がったスタートップの買い漁りにも動いている。




 ウーバーテクノロジーズ6700人、グルーポン2800人、エアビーアンドビー1900人、アゴダ1500人、オラ・キャブズ1400人・・・。

「レイオフ・fyi」というサイトが、3月11日以降のテック・スタートアップのレイオフ状況を逐次まとめている。ロジャー・リー氏が個人的に作成したサイトで、リー氏は中小企業向けに年金プランを提案する米ヒューマン・インタレストの共同創業者。同サイトによれば、世界保健機構(WHO)がパンデミック宣言をした3月11日から5月末までに、世界500社弱が6万人以上の従業員を解雇したという。4万人超の米国だけでなく、9000人弱のインド、3000人超のブラジル、2000人弱のシンガポール、1200人の英国とレイオフの嵐は世界に広がっている。

 コロナ禍の打撃を最も受けているのが輸送業界。1万3000人以上が解雇された。米ウーバー(サンフランシスコ、ニューヨーク証券取引所上場)、インドのオラ(バンガロール)のほか、ウーバーのライバルの米リフト(サンフランシスコ、ナスダック上場)、ウーバーが買収した中東のカリーム(ドバイ)なども人員整理に動く。ここ数年、ウーバーを中心に世界中で「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)革命」を巻き起こしてきたライドシェア業界だが、都市封鎖の影響で業界全体が沈みかけている。

 MaaSは自転車やスクーターを使ったマイクロモビリティ分野にも拡大したが、同分野の企業は配車サービスよりも体力がないだけにもっと厳しい。5月に入りウーバーが、2018年に買収したマイクロモビリティの米ジャンプ・バイクス(ニューヨーク)を同業の米ライム(サンフランシスコ)に売却した。そのライムも1月にアトランタ、サンディエゴ、ブラジルのサンパウロ、リオデジャネイロなど世界12都市からの撤退を発表し、4月には全従業員の13%に当たる80人をレイオフしている。ライムのライバル、米バード(カリフォルニア州サンタモニカ)も同30%に相当する400人を解雇した。

 輸送業界に次いでレイオフが多いのが旅行業界の8000人弱。民泊最大手の米エアビーアンドビー(サンフランシスコ)、ホテル・航空券予約サイトのアゴダ(シンガポール、米ブッキング・ホールディングス傘下)のほか、旅行口コミサイトの米トリップアドバイザー(マサチューセッツ州ニーダム、ナスダック上場)、インドのホテルチェーンのオヨ・ルームズ(グルガオン)、ホテル品質の民泊サービスを手掛けるソンダー(サンフランシスコ)なども軒並み人員削減に動いている。旅行者向けに物件を短期レンタルする米ステイアルフレッド(ワシントン州スポーケン)は5月、従業員をほぼ全員解雇しサービスを停止した。インドネシアのホテル予約サイト、エアリー・ルームズ(ジャカルタ)も5月に市場から撤退した。

 輸送、旅行に続くのが6000人規模の流通、食品、金融。コロナショックはBtoB(企業間取引)ビジネスよりもまず、一般消費相手のビジネスに打撃を与え、それが金融面にも波及し始めている。フィンテック系のスタートアップでは、個人間融資仲介の米レンディングクラブ(サンフランシスコ、ニューヨーク証取上場)も全社員の30%に相当する460人を解雇する方針。インドでは中小企業向け融資を手掛けるレンディングカート(アーメダバード)が半分の500人を削減。ブラジルではカード決済サービスのストーン(サンパウロ、ナスダック上場)が20%の1300人を解雇しているという。



トップ級は新規資金調達に成功

 そんな中、フィンテックの代表的企業、米ストライプ(サンフランシスコ)は4月16日に新たに6億ドルの追加資金調達に成功した、と発表した。アンドリーセン・ホロウィッツ、セコイア・キャピタル、グーグル傘下のベンチャーキャピタル(VC)といった有力VCが資金を提供した。電子商取引サイトがストライプのサービスを利用すれば、複数のクレジットカード会社と個別に契約しなくても、消費者にカード決済の仕組みを提供することができる。「コロナウイルスの影響で、数年かかっていたオフラインからオンラインへの移行が数週間に短縮されている」と同社は語る。ストライプは、コロナ禍で需要が急増しているウェブ会議サービスのズーム(サンノゼ、ナスダック上場)とも新たに契約したという。遠隔医療、オンライン教育、料理の宅配サービスなどネット経由のサービスは拡大しており、ストライプのビジネスもその波に乗っている。

 米国でストライプに次ぐ評価額を誇るユニコーン企業は、イーロン・マスク氏が率いる米スペースX(ロサンゼルス)だ。米CBインサイツによれば、スペースXの評価額は333億ドルとストライプの360億ドルに次いで世界で4番目。米CNBCによれば、スペースXは5月末までに3億5000万ドルを新たに調達したという。同社は1万2000基の通信衛星を使ったインターネット網「スターリンク」を構築する計画を進めており、自社開発したロケット「ファルコン9」でこれまでに計360基打ち上げている。有人宇宙船「クルードラゴン」の開発にも取り組み、5月31日、宇宙飛行士を乗せての打ち上げに初めて成功した。米国にとっては、11年に米航空宇宙局(NASA)の「スペースシャトル」が終了して以来、初の有人宇宙飛行となる。

「スターリンク」と同様に、衛星インターネット事業を計画していた英ワンウェブ(ロンドン)が3月27日に米連邦破産法第11条(チャプター11)を申請し破産したのと対照的だ。ワンウェブは650基の通信衛星を打ち上げて農村部など有線通信のない地域にも高速インターネット接続を提供する予定だった。すでに74基の衛星を打ち上げたが、「コロナウイルスの影響」で事業継続のための資金調達に失敗したという。ソフトバンクグループは同社の大株主だ。

 自動運転技術で世界トップを走る、米ウェイモ(シリコンバレー)の評価額はスペースXに次ぐ300億ドルとされる。グーグル内部で09年に始まった研究プロジェクトだが、16年に分離独立。この3月に米投資ファンドのシルバーレイクなどが主導するラウンドで23億ドルを調達した。さらにアンドリーセン・ホロウィッツ、カナダ自動車部品大手のマグナ・インターナショナルなどもラウンドに参加して、5月までに合計30億ドルを獲得した。コロナ禍で人と人の接触が忌避され、ドライバーの不要な自動運転への関心が高まったとしている。


トップ級は新規資金調達に成功


グーグルから分離独立した米ウェイモの自動運転車((C)Waymo)

GAFAMが虎視眈々

 自動運転では5月27日、アマゾンが米ズークス(カリフォルニア州フォスターシティ)を買収する交渉を進めていると、米ブルームバーグが報じた。ズークスはオーストラリア出身のデザイナー、ティム・ケントリークレイ氏とスタンフォード大の自動運転研究者ジェシー・レビンソン氏が14年に設立した完全自動運転車の開発スタートアップ。ズークスはアップルの自動運転技術者が大量に転職したり、テスラとは技術者の移籍を巡って訴訟沙汰になったりしている。ズークスはケントリークレイ氏を追放し、19年1月にインテル元幹部のアイシャ・エバンス氏をトップに迎えた。アマゾンはテスラとグーグルの技術者が設立した自動運転スタートアップ、オーロラ・イノベーションにも出資しており、電子商取引の配送の自動化を狙っている。

 CBインサイツによれば、20年4~6月(4月末時点)のGAFAMによる企業投資は金額ベースで57億ドルとなり、四半期ベースで過去最高を記録したという。20年の年間資金はすでに19年の合計を上回っているという。4月の全額がフェイスブック。同社は4月21日、インドの財閥系通信会社ジオ・プラットフォーム(ムンバイ)の株式約10%を取得すると発表した。ジオは格安携帯電話を展開する通信最大手リライアンス・ジオ・インフォコムを傘下に持ち、フェイスブックは「インスタグラム」や「ワッツアップ」などのサービスをインドで強化する。さらに同社は5月15日、「GIF」形式の短いアニメのような動画の共有・検索サービス、米ジフィー(ニューヨーク)を4億ドルで買収した。4年前には6億ドルの評価がついていたスタートアップで、コロナショックで安く同社を手に入れた形だ。

 マイクロソフトはパンデミック以降、3社を買収している。3月26日、5Gとエッジコンピューティング関連の米アファームド・ネットワークス(マサチューセッツ州アクトン)を、5月5日にはサイバーセキュリティ関連のサイバーX(マサチューセッツ州ウォルサム)を買収。さらに5月19日にはオフィスワークの効率化を進める「RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)」関連のスタートアップ、英ソフトモーティブ(ロンドン)を買収したことを明らかにしている。

 アップルも3社を買収している。3月31日、超ローカルな天気予報を知らせる米ダークスカイ(マサチューセッツ州ケンブリッジ)を、4月3日にはアイルランドの音声認識技術の会社ボイシス(ダブリン)を買収。そして4月4日にはAR(拡張現実)/VR(仮想現実)関連スタートアップ、米ネクストVR(ロサンゼルス近郊のニューポートビーチ)を買収した。買収金額は1億ドルとされ、これまで同社がVCなどから調達した資金1億1600万ドルを下回った。スポーツなどの立体映像をストリーミング配信する会社だ。

 AR/VR関連はフェイスブック、グーグル、マイクロソフトもアップルとともに開発に力を入れている。ビッグテックに対抗してAR/VRグラスを開発していたスタートアップ、米マジックリープ(フロリダ州プランテーション)。同社は4月22日、「多数の従業員を解雇するという難しい決定を下した」と発表した。報道によれば全社員の半分、1000人がリストラされたという。10年設立の同社は18年8月に満を持してAR/VRグラス「マジックリープワン」を発売した。しかし半年で6000台しか売れなかったとも言われ、フェイスブックなどへの身売り報道も流れていた。ところが一転、5月22日、同社は匿名の投資家から3億5000万ドルを調達し、リストラも撤回する方針だという。しかし創業者のロビー・アボビッツ氏はCEO退任を余儀なくされ、軌道修正は避けられない。AR/VRグラスはポスト・スマホの有力候補とも言われており、すでにスタートアップ単独では取り組めないテーマになっている。

 コロナショックはスタートアップ業界を揺さぶり、企業の優勝劣敗を明確にする。資金繰りに行き詰まった企業はリストラをして生き延び、それでもだめなら事業をたたむか、大手の傘下に入るかしかない。コロナ後のテック業界はGAFAMのようなビッグテックの支配力が一層高まる可能性がある。


GAFAMが虎視眈々


米マジックリープのAR/VRグラス「マジックリープワン」の利用イメージ(同社に出資するNTTドコモのニュースリリースより)


Profile 

梅上零史(うめがみ れいじ)大手新聞社の元記者。「アジア」「ハイテク」「ハイタッチ」をテーマに、日本を含むアジアのネット企業の最新の動き、各国のハイテク産業振興策、娯楽ビジネスの動向などを追いかけている。最近は金融やマクロ経済にも関心を広げ、株式、為替、国債などマーケットの動きもウォッチしている。



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