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トピックス -企業家倶楽部

2020年12月26日

お金をマネジメントし前向きな人生に貢献したい

企業家倶楽部2021年1/2月合併号 マネーフォワード特集第1部 マネーフォワードの未来戦略






「お金を前へ。人生をもっと前へ。」のミッションを掲げ躍進するマネーフォワード。その勢いが止まらない。社長の辻庸介は、お金の問題をテクノロジーで解決したいと意気込む。個人向け家計簿アプリサービスから始まった事業は、今や企業のクラウド会計や金融機関支援と業容を拡大。フィンテックのニューリーダーとしてその存在価値が高まっている。コロナ禍の今こそ日本のフィンテックが加速する絶好のチャンスと熱く語る。人間味溢れるIT経営者として名を馳せる辻の経営手腕はどこからくるのか、そして何を目指すのか、その真意に迫る。(文中敬称略)



コロナ禍の今こそDXが加速

 2020年11月のある日、マネーフォワード社長の辻庸介は、東京・港区のテレビ東京のスタジオにいた。11月10日から始まる第22回日経フォーラム「世界経営者会議」に登壇するためだ。本来なら多くの聴衆の前で得意の熱弁をふるうところだが、コロナ禍の20年は事前収録という形での登壇となった。

 辻は「デジタルトランスフォーメーション 日本の現在地」のテーマで、元DeNAで活躍、現エクサウィザーズ会長の春田真と対談した。

「新型コロナウイルス感染拡大で、働き方が変わりそのプレッシャーは大きかった。コロナ前の働き方にはもう戻らないと決意することが大切」と辻。

 世界企業の時価総額ランキングで、日本のトヨタが46位と下位に留まっていることに触れ「日本の企業は市場をグローバルにし、日本とアジアの市場で大きくなればグローバルで戦え、GAFAMにも対抗できる」と語った。

 コロナ禍でデジタル化が進み、より一層企業の経営効率化が求められている。辻は「DX(デジタルトランスフォーメーション)については5年後の未来が一気に来た」そして新たに創設されるデジタル庁については、「コロナ禍の今しかデジタル化は進まない。最初で最後のチャンス」と熱く語った。

 世界経営者会議といえば毎年世界中から錚々たる経営者が登壇することで有名だ。20年日本からは日本電産会長永守重信、エイチ・アイ・エスの会長兼社長澤田秀雄らが登壇している。彼らに交じって辻に声がかかったのは、マネーフォワードが生み出す経営を効率化するさまざまなクラウドサービス、辻の誠実且つ大胆な経営手腕が注目されているからであろう。



マネーフォワードという会社

 ところでマネーフォワードという会社をご存じだろうか。

 創業は12年、辻がマネックス証券を退社、お金に関する課題をデジタルで解決したいと立ち上げた。お金に関する課題に真正面から取り組んで仕事とする企業は少ない。特に日本人はお金を表面化するのは苦手な国民だ。他人に相談しづらく、人知れず悩んでいる人も多い。そんな人に向けて「すべての人の『お金のプラットフォーム』になる」をビジョンに掲げるのがマネーフォワードだ。

 自動家計簿アプリからスタートした。自分のお金を『見える化』し、使いこなそうというものだ。年初に「今年こそは」と意気込み家計簿をつけても三日坊主で終わった経験をお持ちの方も多いことだろう。そんな人に便利なのが「マネーフォワードME」というアプリである。今や利用者は1100万人を突破している。

 月額500円で、複数の銀行口座やクレジットカード、証券口座やポイントなどを自動でスマホアプリで管理できる。一度使ったら手放せないという便利なサービスだ。

 同社のもう一つの大きな柱は、企業の経理部や総務などバックオフィスの効率化をサポートするマネーフォワードクラウドシリーズだ。クラウド会計、クラウド確定申告、クラウド給与、クラウド勤怠など10のサービスを提供。また金融機関向けサービスとして通帳アプリなどもある。こうしたBtoBのサービスが売り上げの6割を占める。

 20年11月期の売上は110億9300万円、経常利益はマイナス35億7100万円といまだマイナスだ。これについて辻は「投資先行のSaaSモデル。アマゾンと同じです。いつでも黒字化はできる」と自信満々だ。ただし21年11月期には、EBITDA(税引前当期営業利益)を黒字化する計画だ。

 創業8年目だが、次々と業容を拡大。関連企業10社を率いる。辻がこうした経理関連の支援サービスに力を入れるのは、ソニーの経理部時代、その非効率、煩雑な業務に辟易した経験があるからだろう。もっと効率化できないか。なんとかバックオフィスで働く人を楽にしたい。そんな想いが次々とサービスを生みだす源泉となっている。


マネーフォワードという会社

辻流経営の原点

 東京・芝浦にあるマネーフォワード本社を訪ねると「ここがバリバリのITの会社」と拍子抜けするほどだ。オレンジ色を基調とし、木の温もりを感じさせる内装やインテリアはアットホームで心を和ませる。これは辻の「ミッション、ビジョン、バリュー、カルチャー経営」の一環なのだと、Peop le Forward本部 VP of Cultureの金井恵子は語る。これを社内のいたるところに掲示、社員の心に刻まれるよう工夫している。

 この「ミッション、ビジョン、バリュー、カルチャー経営」は創業のときから変わっていないと辻。

 ミッション「お金を前へ。人生をもっと前へ。」

 ビジョン「すべての人の『お金のプラットフォームになる』」

 辻のこの想いに共鳴する人間が入社してくるので、社内に深く浸透。マネーフォワードのすべての土台となっている。

「色んな素敵な人と会えて、一緒に考えて仕事ができて、それが一番楽しい」と辻。頭脳明晰で個性的な社員が結集、稀有なサービスを提供する企業として成長を続けている。

 辻は人の育成にも定評がある。若手の能力を信じ存分に活躍させる。ベトナムを立ち上げ、責任者として活躍するMoney Forward Vietnam CO., Ltd.COOの添谷彰太はまだ28歳だ。

 人を育てることに関しては京都大学農学部で培った「Grow」精神に則っている。この農学部出身の仲間が集まり「農学部出身の会」をやっていると妙心寺退蔵院副住職の松山大耕。メンバーにはユーグレナ社長の出雲充もいるというから面白い。



辻庸介という男

 ところで辻庸介とはどんな人間なのか。

 辻は大阪府生まれで幼少から天王寺で育つ。西宮の甲陽学院から京都大学農学部へと進む。頭脳明晰だが気取りはまったくない。人間臭くて人懐っこい笑顔が、多くの人を引き寄せる。祖父はシャープの2代目社長佐伯旭である。企業経営のDNAはこの祖父から受け継いでいるといえる。

 大学を卒業し自由な空気がする日本のトップ企業としてソニーに入社する。希望に反して経理部に配属された辻は、もっと前向きな仕事がしたいと、ソニーが出資しているマネックス証券に出向。そこで松本大と出会うこととなる。ネット専門証券の草分けとして辣腕をふるっていた松本は輝いていた。松本の元でさまざまな経験を積んだことは辻にイベントを成功させた面々とって大きな財産となった。

 その後マネックスからの派遣として米国ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得する。米国屈指の難関といわれるウォートン校で過ごした2年間は、辻に世界観と視座の高さとさらなるチャレンジ魂を植え付けた。ここで出会ったのがラクスルCFOの永見世央である。共に困難を乗り越えた同志である。この留学時代に家計簿アプリなどのサービスを考えていたという。



創業の想い

 帰国した辻だが、自分が描く「お金の課題をテクノロジーで解決したい」という想いはマネックスの中では実現できないと判断、起業を決意する。松本からはマネックスの中でと引き留められたが辻の意志は固かった。


 12年、マネーフォワードを創業。高田馬場のマンションの一室だったが、創業メンバーは燃えていた。連日真夜中まで働いた。「完全にブラック企業でした」と振り返る辻だが、そのときのやりきる力が無ければ今の成功はなかったであろう。家計簿アプリを開発、その後企業のバックオフィス向けクラウドサービスを次々と開発、稀有なフィンテック企業として注目を集めた。17年には利益がマイナスながら東証マザーズに上場。さらなる力をつけることになる。この上場には主幹事としてマネックスの松本が大きな力を貸してくれたことは確かである。



「ビジネスは冒険だ」

 20年1月16日、東京・港区のザ・プリンスパークタワー東京には多くのビジネスパーソンが詰めかけていた。集まった人は皆、活気に満ちたやり手の若者たちだ。マネーフォワード主催の法人向けイベント「Biz Forward 2020」が開催された。

「ビジネスは冒険だ」というテーマを掲げ、 ビジネスパーソンのチャレンジを応援するピッチコンテストや、各分野を代表するゲストスピーカーが多種多様なセッションを行った。

 このイベントで辻はホスト役としてさまざまな場面に登壇。Inspiring  Sessionでは、 元ヤフー社長で、副都知事に転身した宮坂学と「スマート東京」について対談した。話すのが好きという辻は的確な質問で宮坂の本音を引き出し、プロ顔負けのファシリテーターを務めた。

 この会場はソフトバンクが毎年「ソフトバンクワールド」を開催する場所だ。社長の孫正義の基調講演には、5千人の聴衆が集まり孫の前向きな講演に沸く。規模こそ小さいが、同じ会場でこれだけのイベントを開催する「マネーフォワードとはどんな会社」と思わせる魅力に満ちていた。

 このときの各セッションに登場した多彩な顔ぶれには驚く。「アートと経営」と題したセッションでは、森美術館元館長の南条史生や、ストライプインターナショナル創業者石川康晴、スマイルズ社長の遠山正道ら錚々たる顔ぶれが登壇。漫画家の弘兼憲史、騎手の武豊、ラクスル社長の松本恭攝ら今をときめく人々が集まった。こうした顔ぶれのほとんどが辻の友人・知人という。テーマはビジネスだけでなく、アートや地方活性化など多岐に亘り、辻の人間としての幅の広さを物語っていた。「こんなイベントがビジネスに役立つんですか?」と社内では反対もあったと打ち明ける辻。それを押し切って敢行。来場者をワクワクさせるイベントを実現した。そこに辻の先見性、度量の大きさを感じさせる。もちろんこれだけのリアルイベントを開催するには、社内外の多くの人々の協力とやりきる力があればこそである。



多彩なネットワーク

 辻の武器は多彩な人的ネットワークである。「ここまでこられたのは多くの方のおかけです」と謙虚に語る。辻のすばらしさはそのお世話になった人、関わった人への感謝の気持ちを忘れないことだ。大阪人らしく義理人情には厚い。

 マネーフォワードを成長させていくうえで一番お世話になったのは、ボストンコンサルティング元日本代表の御立尚資という。同じ京都大学出身で、某イベントのパネラーとして登壇したことをきっかけに親しくなった。さまざまな場面で教えを請い、アドバイスをいただいている。辻が経営で悩んでいたとき、「経営はその人の個性。辻君らしくあれ」との言葉に救われたと語る。

 17 年のマザーズ上場の折は御立も記念の鐘を鳴らしたほどだ。

 その上場に関しては「実は大変だった」と打ち明けるマネックス証券の松本。9年もお世話になった元の上司として、経営の師匠として薫陶を受けた。



「人生をもっと前へ。」

 事業領域が「お金×IT」で、世界中の誰もが関係する「お金」をテーマにしているだけに、マーケットは大きい。「お金の課題を解決できたら、なにより人を幸せにできる。使った人に『これ便利』と言って頂けたら本望です」と辻。

 マネーフォワードの敏腕社長として活躍する辻だが、将来は会社名から「マネー」を外してもいいと言い切る。人生にとってマネーはあくまでツール。お金に関する悩みをデジタルで解決し、もっと前向きな人生を送ってほしいとの想いがある。将来はミッションに掲げる「人生をもっと前へ。」に貢献したいという。

 ITリテラシーがなくても誰もが使いこなせるにはiPhoneのようなものを生み出したいと語る。世の中の誰もが使いたいと思える、自動化した圧倒的なプロダクトやサービスを創りたいと熱く語る。キーワードは「自動化×AI」なのだと。

 国内でナンバーワンになり、海外展開するにはそれを実現できるメンバーが必要と、早くも世界展開を視野に入れる。海外拠点についてはすでにベトナムに進出、インドネシアのクラウド会計で一番の会社にも出資、着々と布石を打っている。

 明石家さんまが好きという辻。彼の『生きてるだけでまるもうけ』という言葉が好きと笑顔を見せる。根っからの関西人で、明るい。人を楽しませるサービス精神が旺盛だ。だから誰からも好かれる。

「人たらし」と言われるのも尤もだ。デジタル社会がいくら進化しようと、実はこの「人たらし」こそが最大の武器ともいえる。

 辻の魅力は多々あれど、明るくて前向きで愛嬌があることだ。この愛嬌こそが上に立つ者には必要となる。仏頂面では人はついてこない。

 セコム創業者の飯田亮は「社長は元気なだけではダメ、愛嬌がなくちゃ」としみじみ語っていた。



孫正義に続く企業家に

 自分たちの創りだすサービスで「人生をもっと前向きに生きてほしい」と果敢に挑む辻。

 その大きな志、実行力は孫正義の若いころを思わせる。創業以来「デジタル情報革命」を掲げ、インターネット黎明期から世の中を変えると挑んできた。圧倒的な格安料金でインターネットインフラに乗り出し、多くのネット企業を生み出した。「お金×IT」で人々の前向きな人生を後押ししたい。その強烈な想いが辻をもっと前へと導く。辻さんは生き急いでいるようだと誰かが語っていた。何かを成し遂げようと思ったらスピードは重要だ。辻の「もっと」「もっと」は止まらない。

 まだまだ課題だらけと語る辻。その眼はまっすぐに未来を見つめている。一番の課題は「人」という。しかしこれまでの辻の人生は人に恵まれたといえる。それこそが辻の人間力である。

 コロナ禍の今こそ日本企業のDX加速のチャンス、まさに追い風が吹いている。好奇心旺盛で実行力がある辻には多方面から声がかかる。フィンテック界のイノベーターとして、孫正義に続く企業家として、辻庸介のチャレンジはまだ始まったばかりだ。



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