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トピックス -企業家倶楽部

2020年08月27日

夢を貫くロールモデル

企業家倶楽部2020年10月号 ユーグレナ特集第5部 出雲充の人的ネットワーク


出雲のユーグレナへのまっすぐな想いは、気付けば「彼ならできる」と信じ応援してしまうほど熱く伝わり、その溢れ出る魅力は周囲に元気さえ分け与える。「徳、孤ならず。必ず隣あり」。世界中がユーグレナに魅了される日はそう遠くないだろう。(文中敬称略)






夢を持ちそれを実現できる経営者/SMBC日興証券 会長 清水喜彦 Yoshihiko Shimizu

 SMBC日興証券の会長を務める清水が出雲と初めて出会ったのは2005年。当時、三井住友銀行の法人統括部長として敏腕を振るっていた清水の元に「支援したいベンチャー企業がある」と申請されたのが、出雲が社長を務めるユーグレナだった。

 出雲の発想は非常に素晴らしいと感じたと清水は語る。世界中から貧困をなくし、さらには環境を守りたいという夢を持つ出雲。その具体的な方法として自然由来の藻から食品を作り、それからエネルギーを取ることを目指す出雲の思いには、大学時代にバングラデシュに行った際の体験がとても強いと感じた。

「企業家として成功するために必要な三つの資質が彼には揃っている」と清水は言う。

 一つはしっかりとした夢を持っていることだ。そして彼はその夢を実現するための具体策を持っている。「大切なのは上場した後に何をするかだ」。上場後は社員、顧客、株主の三大ステークホルダーに報いることが必要になる。だからこそ、上場後のビジョンをしっかり描けることが大切になってくるのだ。

 もう一つは彼自身が行動していることだ。企業家の中には、世の中の人はなぜこの商品の良さがわからないのかと考える人が多い。そんな中で彼は自分で動いて、自分で説明をする。「俯瞰的な視野を持って、行動に移すことができるから進化が多い」と出雲の強みを分析する。

 最後は周りを巻き込むことができることだ。自分で動く人の中には、人を頼ることができない人もいる。しかし、彼は自分の得意分野と不得意な分野を区別し、周りの人を巻き込んで、共に動く。「パナソニックの松下さんの言葉に『自分と同じ考えをしてくれる人が自分の思想やすべきことを共有すれば大企業が作れる』というものがある」。自分の得意分野で人を巻き込み、自分の不得手な部分を他人に託すことができるのはとても大切だ。

 出雲にはこの三つが有機的に結合している。「新しく起業する人は彼のように夢をはっきりさせ、実現に向けた具体策を持つ。そして自分で飛び回る覚悟をし、人とうまく協力していくことをすべきだ」と清水は事業成功の要諦を語る。

 事業を行う際、戦略は非常に重要になってくる。「日本では長期のものを戦略、短期のものを戦術というがこれは間違っている」と言う。やりたいことを実行するためには時間を要するため、長い時間が必要なのである。

「出雲には夢があって、どう行動するかというストーリーがある。これが戦略である。時間軸ではなく何をやりたいかが重要だ。ストーリーを持って、実現するために自分が行動すること、誰かに頼むことができるという意味では今の時代に出雲は合っている」

 ユーグレナの強みは出雲の目の付け所の良さだと清水は言う。発想が飛躍していると思われるが、そのベースに技術的な裏付けがある。エビデンスが強くないと大企業は支援しない。科学的な、技術的な裏付けがあることはとても大切である。

「彼といると元気がもらえる。早く次のステップに行って欲しい。世界の環境がどんどん悪くなっている中で、彼の事業はとても期待のあるものだ。世界のため、日本のためにもっと頑張って欲しい」とメッセージを送った。







東大発ベンチャー成功のロールモデル/東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻教授 産学協創推進本部 副本部長 各務茂夫 Shigeo Kagami

「ユーグレナの出雲充君は東大発のベンチャーとして最も成功したロールモデルです」と嬉しそうに語るのは、出雲の母校である東京大学教授の各務茂夫である。昨今、東大発ベンチャーの活躍が目覚ましいが、それを牽引しているのが、各務だ。

 出雲の起業のきっかけが、大学1年のときに参加した海外インターンシップ「アイセック」の活動で訪れた、バングラデシュでの体験である。その日本法人「アイセック・ジャパン」の代表を務める各務は、このアイセック繋がりでも出雲とは縁が深いようだ。

 実際2人が出会ったのは出雲が「ユーグレナ」を創業する1年ぐらい前だったという。

 各務は一橋大学出身で、ボストンコンサルティングを経て、自ら企業を立ち上げ、急成長させた経験の持ち主だ。多才で経験豊富な各務のこと、東大で産学連携本部のリーダーを務めることになったのも、運命だったといえよう。

 2005年には学生向けに「アントレプレナー道場」を開講、多くの学生に起業に向けて指導を続けてきた。加えて、インキュベーション施設を設置、起業を志す学生や孵化したばかりのヒナたちに居場所を提供するなど、手厚く面倒をみてきた。ここから多くの企業家が飛び立っている。

 ユーグレナもここを活用し、孵化した企業といえる。実際、出雲も鈴木健吾も創業数年間はアントレプレナープラザを活用、バイオ実験室でミドリムシの大量培養の技術を磨いた。

「ユーグレナは東証一部上場企業に成長、日本ベンチャー大賞の内閣総理大臣賞など数々の賞を受賞しました。素晴らしいことです」と、わが子の活躍を喜ぶかのように笑顔を向ける。

 幾多の困難を乗り越えて大きく成長した出雲は、各務にとって自慢の優等生であろう。成功した先輩として、母校で講演することも多い。先輩の成功談を直に聞けるのは後輩にとって何よりの刺激となる。この6月も東大の新入生向けにリモートで講演を実施した。

 新聞や雑誌に2人で登場することもしばしばだ。また食事をしながら出雲の話を聞くことも多いという。いつ会ってもパワフルで熱心な出雲は、15年前から少しも変わらないと語る。

「出雲君の講演は中身も話し方も上手で、交響曲を聴いているかのよう」と各務。前奏曲から始まり、だんだん盛り上がり、最後はクレッシェンドで聴衆の心を掴むということであろう。

 ずっと出雲の成長を見守ってきた各務に、敢えてユーグレナの課題を伺った。

「ミドリムシの食料としての活用は進んでいると思うが、問題はバイオ燃料分野。バイオ燃料は世界中で研究開発が進んでいるが、クオリティ、効率、コスト、スピードの面でミドリムシが競争に勝てるかが課題」と。そして「なんとしてもこの課題を突破し、世界のエネルギー革命の主役になって欲しい。出雲君なら絶対やり抜いてくれると思う」とエールを送った。







ベンチャービジネスにおけるロールモデル/東京大学大学院理学系研究科化学専攻 教授 武漢大学工業科学研究院 非常勤教授 カリフォルニア大学ロサンゼルス校工学部生体工学科 非常勤教授 合田圭介 Keisuke Goda

 15年近くアメリカで細胞の研究を軸に研究開発に尽力し、現在はカリフォルニア大学、武漢大学と兼任で東京大学大学院理学系研究科の教授として更なる研究を深めている合田圭介。

 そんな合田がユーグレナ社と関わるきっかけになったのは、2014年11月に採択された内閣府革新的研究開発推進プログラムであった。当時、合田が実施する研究開発プログラムにユーグレナ社が主要研究機関として参画することが決定し、ユーグレナ社の現執行役員である鈴木健吾を始めとして、共に研究することになった。

 出雲にもその過程を経て出会うこととなったが、ブレないビジョンを持って、長く事業を続けてきたその根気には一目置いているという。出雲については、「良い成功モデルです。東京大学でベンチャーに携わる人間にとっては格好のロールモデルでしょう」と語る。ベンチャー事業者が多い東京大学の中でも、先行した良い事例だという。

 合田自身もベンチャー企業に携わった経験があり、またアメリカでの生活を経てベンチャー企業の壮絶な生き残りを間近で見てきた。さらに、日本では市場が小さいということ、特にバイオの分野においてはテックベンチャーの参入がなかなか難しいという背景がある中、巧みに科学技術を事業化している点はユーグレナ社の強みだと説く。

「最初はなかなか苦しい部分もあったと思いますが、徐々にピボットをしてベンチャーとしてしっかりと生き残っています。ミドリムシの研究には分かってないことが未だ多いという、不確実性が残りながらもビジネスの観点からうまく展開しているところは素晴らしいですね」と感嘆した。

 現在、出雲と実際に会うのは年に2、3回程度ではあるものの、出会った当初から共同研究する関係はずっとこれまで続いている。研究内容として例を挙げると、メタボリックエンジニアリングといった、細胞や生物内の遺伝子発現量を変化させて、人間ではなく細胞や生物にある分子を生成させるといった技術の研究である。この技術により、ユーグレナに含まれる分子の効能を更に向上させられる可能性が高まる。

 さらに現在は、大量培養の研究が進んでいる。細かい条件設定が難しく、ほとんどの生物は培養することができない現状の中、世界で初めてユーグレナの食用屋外大量培養に成功させたという功績を称えながらも、ビジネスとしてユーグレナには培養の効率に課題が残るという。科学技術が進む方向として得策ではない屋外培養という手段ではなく、別の形で培養する研究開発にも力を入れている最中である。

 藻類を研究する企業は世界的に見れば希少であり、課題があることも否めない。しかし、共同研究する者として、動物でもあり植物でもあるというユーグレナのハイブリットな面白さに共感している。ユーグレナのように再生可能な有機性資源「バイオマス」を利用する基本的な考え方として、付加価値の高いものからカスケード利用していく「バイオマスの5F」というものがある。ユーグレナ社でもこの「5F」の考え方に基づき事業を推進しており、これからの事業活動において「5Fのピラミッド」をぜひ実現してもらいたいと期待を込めた。また、合田がシリコンバレーなど最先端の企業が集まる地域にいた経験から、突出した成功者として、日本的な古い常識を破る強力なリーダーになって欲しいともエールを送った。







若い世代のあこがれの存在/論語塾講師 安岡定子 Sadako Yasuoka

 各地で論語塾を開催している安岡の元に出雲が訪れたのは、縄文アソシエイツ主宰の経営者の勉強会、縄文塾で論語講座の時だった。受講者で最も年若い出雲は、常に講師である安岡の正面に座り、真剣に話を聞いていた。気負いのない気さくな人柄。出張と重なった時はTV電話で講座に参加。多忙な中、なぜスケジュール調整をしてまで現在も参加し続けているのか。

「出雲さんは初回にこう答えました。既存にないものを自分で切り拓くベンチャー企業の対極はなんだろうと考えた。それは中国古典である。自分がやりたいと思うものだけを見ていてはだめで、バランスを取ることができるものが必要なのだ、と。やりたいことだけにとらわれず、俯瞰して見てバランスを取ろうとするその発想が素晴らしい」

 常に穏やかな人柄、話の面白さで人を惹きつける人だ、という印象を持った。

 出雲が論語の中で好んでいる章句は「人にして遠き慮りなければ必ず近き憂いあり」。「遠慮」という言葉の元になっている有名な章句だ。

「遠い将来を見越した考えを持たなければ、必ず将来困ったことになるという、見通しを持つことの大切さを述べた単純明快な章句です。コロナ禍で一番にこの章句を思い浮かべられたそうです。日常をどう過ごせば、いざという時困らないのか。一本、軸を持たなければ、決断や判断がずれます。論語の他の章句すべてがその答えになっていますよとお話ししました」

 中国古典は、先人の残した成功や失敗の体験と智慧にあふれている。古典を知ることは時間の無駄になるようで、実は最短距離でいい結果を出すことができるのだと安岡は語る。今自分たちがコロナ禍に立ち向かっていることは後世の人間の判断や分析の材料となる。

 出雲はすべて生き方や事業に落とし込んでいるので理解や受け止め方も深いという。

「いただいた出雲さんの著書を何度も読み返していますが、何があっても人のせいにしないところも素晴らしい。人の道に外れず、自分の軸をもって正しく生きているから、困った時に誰か助けてくれる人が現れるのではないでしょうか。論語の核となる言葉に「忠恕(ちゅうじょ)」があります。己の誠を尽くし、人の心を自分の心と同じくらい大切に思う。最高の思いやりを示す言葉です。私はつい論語の言葉とつなげてしまうのですが、出雲さんはこの忠恕を実践されているように見えます。」

 出雲へのメッセージは「私の祖父、安岡正篤が繰り返し、心の帰れる場所を持っておきなさいと言っていました。単純明快で普遍的な論語は、心の帰れる場所になります。若い世代の人材育成に力を注ぎ、経営者として未知の領域を開拓していく出雲さんは困難も多いでしょう。知人の現役東大生から、出雲さんは憧れですと言われました。意欲ある若い人たちにエネルギーを与えていく存在であり続けてほしい」。







座禅は考えることを一旦止めて自分を見つめる時間/臨済宗国泰寺派全生庵 七世住職 平井正修 Shoshu Hirai

 東京都台東区谷中にある全生庵は、江戸幕末から明治維新にかけて活躍した幕臣・山岡鉄舟が維新に殉じた人々の菩提を弔うために明治16年に建てられた臨済宗の禅寺である。

 また、歴代の総理大臣がプライベートで座禅を組みに来ることで名が知られている。過去には、中曽根康弘元首相も在職中に定期的に訪れていた。最近では、現職の安倍晋三首相もよく足を運ぶそうだ。

 二人の出会いは、今から7年ほど前に国民民主党古川元久議員が催す「座禅の会」に出雲が参加したのが初対面であった。その後、他の会でもよく顔を合わすようになった。今では出雲が社員を連れて「座禅の会」に参加することもある。

 責任のある重要な決断をしなければならない組織のリーダーは孤独の存在だ。誰にも相談ができず一人で決めなければならない場面もある。故に悩みも多いだろう。迷いを断ち、平常心で意思決定を行うことを目的に政治家や経営者らが有志で「座禅の会」を集い、定期的に住職である平井のもとを訪ねているのだ。「いつも緑色のネクタイをしていて若い経営者だな。創業するくらいだから芯が強いと思いました。常にニコニコしていて、姿勢が良いですね。腰の低い人当たりの良い人柄」と平井は出雲の印象について語る。

 顔なじみになり、「どんなビジネスをしているのですか」と出雲に尋ねると「ミドリムシです」と一言。小学生の時に習った記憶があるが正直言って何をしているのかよく分からず「は?」と聞き返した記憶がある。

 平井はただ住職として、座禅を通して政治家や経営者と向き合っている。相手がどんな肩書であろうが、誰であっても変わらないし、座禅の際にその人が何を考えていても意に介さない。

「座禅は座り方を教えるだけで、何を考えているかはその人次第です。出雲さんは彼なりにビジネスの節目の際に座禅の会にいらっしゃるのではないでしょうか」と平井は言う。

 本来、座禅が目指しているのは「悟り」を開くことだが、一般人にはハードルが高い。それでは何を目的にしているかというと、人は生まれてからずっと親や先生から「考えなさい」と教えられて育ってきた。大人になったら職場で「考えなさい」と言われる。人は考えることで新しい発見や進歩があるのだが、考えることでときに迷路に迷い込み、出口が分からなくなることがある。

 そこで座禅を組むことで、一度「考える」ことを止めてみることを勧めているのだと平井は説明する。

「例えば、道に迷ったらどうするか。まずは自分がどこにいるのか知ることから始める。自分の現在地も分からずに歩き続けると余計に迷ってしまうでしょう」

「人間は怖いから、迷ったときや苦しい時にやたらと動き回ってしまう。まずは落ち着いて自分を見つめてみる。一個人もそうだが、組織も同様である」と平井は座禅をすることで一旦立ち止まる勇気を持つことが重要だと語る。

 よく座禅を組むと「何か新しいこと、良いことが閃きますか」と聞かれることが多いというが、そんなことはなく、「せわしなく動き回る前に冷静に現状を知る時間になってくれたらいい」と平井は座禅を組むことの意味について語る。

「自ら創業した会社なので自分の思った通りに続けてください。そして、時間があればまた座禅を組みに来てください」と優しくエールを送った。



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