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トピックス -企業家倶楽部

2020年10月27日

伝統と革新の体現者

企業家倶楽部2020年12月号 特集第2部 FSXの強さの秘密


川崎と立川を結ぶ南武線谷保駅から関東三天神の一つである谷保天満宮を抜け、田畑が残るのどかな田園地帯を進む。しばらくするとそこに、中央高速道路が現れる。あの松任谷由実(荒井由実)の「中央フリーウェイ」の歌詞の通りもう少し進めば、右には競馬場、左にはビール工場といった場所だ。その一角に、周囲の建物とは一線を画す、黒いデザイン性の高い建物が見えてくる。その建物こそが、FSXの本社である。「いらっしゃいませ。こんにちは」駐車場ですれ違った同社のスタッフは、洗練された建物とは裏腹に、とてもフレンドリーでありながら、礼儀正しさを兼ね備えている。言い方を変えれば、「人の良さ」がにじみ出ている。藤波が「うちのスタッフは素朴で皆いい人」と、自慢するのも納得できる。全社一丸となって「おしぼり文化」と正面から向き合い、付加価値を付けて新しいおしぼりの世界を作っていくFSXとはどのような企業なのであろうか。(文中敬称略)

強さの秘密1 地の利

地元の顧客基盤

 日本固有のおしぼり文化に香りや機能など、新たな価値の創造に果敢にチャレンジし、商品化を行ってきたFSX。未曽有のコロナ禍においても、堅調に業績を推移させる同社。「伝統と革新」のバランスを武器におしぼり業界の変革に挑む同社の強みに迫る。

 様々なチャレンジを行い、おしぼりそのものに新たな価値を創造してきた同社。おしぼりは飲食店だけのものという固定概念を打ち壊し、自動車のショールームや企業やホテルなど様々な利用シーンで見られるようになってきた。

 また、昨今のコロナウイルスの感染拡大が、皮肉にも、同社が開発した抗ウイルス・抗菌特許技術「ウイルスブロック(以下、VB)」はその機能性から、一躍注目を集めることとなり、アライアンスなど様々な問い合わせが後を絶たない。

 レンタルおしぼり業界の市場規模は、1997年を頂点に、緩やかな右肩下がりを続ける。このような状況下であれば、新しい分野に経営資源を集中させて、事業規模を拡大することもできそうなものだが、「会社の一番の基盤となるのは、50年間大切に守ってきたレンタルおしぼりのネットワークである」と藤波は断言する。

 現在も約3000件に上るレンタルおしぼりのネットワークを有する同社。レンタルおしぼり事業とは、実に奥が深いビジネスだ。会社の資産である「おしぼり」をいかに効率よく回転させることができるかがビジネスの肝である。「父親から一に回収、二に回収、三四がなくて、五に回収とよく言われた」と藤波も振り返る。

「生もの」であるおしぼりを、お客が適正な在庫を維持し、良い状態のおしぼりを消費者に提供できるようにするには、配送をするスタッフとお客とのコミュニケーションがいかに大切かということだ。

 そのコミュニケーションの中で、お客が求めるおしぼり以外の物を提案し、お客の利便性を上げることもFSXのおしぼりの付加価値を高める一つである。コロナウイルス感染拡大で営業自粛を余儀なくされた飲食店に向けて、国の助成金の申請方法を記載した案内を作成し、配布したり、VBの効能を記した案内を配布したりしたことも、このネットワークに対する同社の熱い想いの表れと言えよう。

 その他にも、関連資材だけの取引をしているネットワークが約3000ある。2つを合わせた約6000というネットワークは、貴重な売り上げの元になるだけに留まらず、新たな商品・サービスを展開する時に真っ先に案内をすることができる潜在顧客になり得る。


 強さの秘密1 地の利

強さの秘密2 業界初のDX

ネット通販スタート

 今から数十年前、専務取締役の犬塚勉や秋葉勝が配送を行っていたころ、おしぼりを配送する際に、おしぼり以外で必要なものがあれば、それを聞いて次回配送時に持って行ったらお客は喜ぶのではないかと考えた。「当時は、ワンストップで買える場所がなかった。お箸や洗剤などをアイテム化していきました」と、犬塚は当時を振り返る。おしぼりをプラットフォームとして、様々なアイテムの販売を始めたのだ。販売品目など試行錯誤し、売れるものもあれば売れないものもあったが、そのすべての経験を知識として蓄えてきた。この「御用聞き販売」こそが、現在、同社の売上を支えるまでに発展した「イーシザイ・マーケット」の前身である。

 藤波が入社した翌年の2005年、この「御用聞き販売」を発展させ、ネット上でも展開しようと「藤波スクエア」という名称のネット通販サイトを開設した。取扱商品は、主に飲食店向けの消耗資材、業務用品でスタートした。藤波が大手通信会社にいた経験と知識が活かされた。入社後いち早く着手したものである。

 このネット通販開始の大きな収穫は、自社の配送エリア以外からの発注が思いのほか多かったこと、そして、美容関係のお客が買っていたり、ある時は学校関係者が買ったりするなど、飲食店以外のお客が利用していたことである。このことは、当時展開していた都内への営業の弾みにもなっており、飲食業以外への提案の可能性を感じる出来事でもあった。

 09年、藤波スクエアを大幅にリニュアルしてオープンしたのがイーシザイ・マーケットである。それまでは、システム含め、全てを外注していたが、このリニュアルのタイミングで、全てを内製化したのである。情報システム室室長の瀬尾竹蔵は「リリース直前に修正の指示があって、2日ほど徹夜をするくらい大変でした。それだけに、とても印象に残る仕事だった」と語る。この内製化により、イーシザイ・マーケットをパートナー企業に提供することが可能となった。「おしぼり配送時の御用聞き販売が地上戦なら、イーシザイ・マーケットは空中戦」とは藤波の弁だ。

 本部となる同社が、国内メーカーとのPB商品の企画、売れる商品の大量調達を行い、キャンペーンや広告作成などの販売支援を提供する。加盟社からは加盟料やロイヤリティを得る。このように、「品質のより良いものをより安く」提供すること、加盟社の手間を省く努力の甲斐もあり、イーシザイ・マーケットへの参加同業者は着実に増えていった。現在では東北から九州までのエリアに、その数は40にも上る。参加する企業が増えることで、仕入れ競争力も生まれ、さらに安く提供することも可能だ。また、売り切る力があることで、販路の拡大や商品開発を行うことも可能となる。


強さの秘密2 業界初のDX


築き上げた同業パートナー


 おしぼりというプラットフォームを活かして、東京の国立で始めた御用聞き販売を見事にデジタルシフトさせ、その可能性を広げ、藤波が入社当時、8億円の売り上げに対して4割の3億2000万円であったものが、現在では21億円の売り上げに対して4割の8億4千万にまで成長した。当時100名程の会社が見事にデジタルトランスフォーメーションを成し遂げていたことは驚きである。

 このイーシザイ・マーケットの参加同業者が40社にまで広がったのは、もちろん、その仕組みの良さが理由であろう。しかし、それ以上に、「おしぼり業界を変える」という藤波の並々ならぬ想いに同業パートナーが共感したことが、加盟社数の増加の最大の要因である。

 少なくとも参加している企業は、「今までと同じことをしていてもジリ貧だ」という藤波が抱く同じ危機感を持っていた。そして、先述の通り、藤波の「おしぼり業界を変える」という想いに共感しているいわば「仲間」である。数よりもその点が強みである。

 数カ月に一度、参加企業が集まり、現状の課題や成功事例、販売方法などを話し合う場も持たれている。また、事例研究や企業訪問などの勉強会なども開催し、切磋琢磨する場ともなっている。

「生まれて間もないVBをおしぼり同業者の仲間が支えてくれた」と同業者ネットワークのありがたみを語る藤波。VBに限らず、同社が展開する様々なポケットおしぼりシリーズ、機能性とデザイン性を追求したおしぼり冷温庫「REION」など同社で開発した商品を、同じ思いで取り扱ってくれている。

 さらに、現在では、VBを軸としたパートナー企業も生まれてきている。クリーニング業界、リネンサプライ業界をはじめ、今後は大手日用品メーカーにまで広がりを見せようとしている。これは、VBのテクノロジーのすばらしさによるが、何よりも、藤波のまっすぐな想いに対する共感がその源泉となっている。



強さの秘密3 徹底した自前主義 

社内横断的なプロジェクト

 FSXでは、何か新しい取り組みを始める時に、いろいろな部署のメンバーが招集されることがしばしばある。画期的な新製品を打ち出している同社であるが、商品開発部といった部署は存在しない。その都度、作られるプロジェクトチームが知恵を絞り、ゼロから作り出すというから驚きである。生産部課長の紺野善晴は、「変化するニーズを拾い上げて、みんなで考えながら、商品開発がスピーディーにできる」とプロジェクトのメリットを語る。

 着眼点や発想は藤波発信であったとしても、様々なメンバーを巻き込むことで、新商品や新サービスを「自分事」として捉えられる経験は大きなメリットである。ブランドパートナーであるアップセッターズアーキテクツの岡部修三は、「人をここまで大事にする経営者はあまり見たことがない」と評するように、藤波は人やチームを大切にしている。この社内横断的なプロジェクトは、社内のコミュニケーションを生み出すとともに、スタッフ各々の成長を促すとても効果的な取り組みとなっている。

「従業員100人ほどの組織で、撮影用のスタジオがあって、カメラマンがいて、Webデザイナーがいて、受発注担当にロジスティック担当がいることが信じられない」主任の淺井宏宣も舌を巻く。このメンバーはすべてイーシザイ・マーケットの専任部隊である。現在でもスタッフが増えたと言っても150名程度である。小さな組織でも必要に応じてチームを作り上げていると言えよう。

「カメラマンを目指していたアルバイトがいまして、一度、おしぼりの写真を撮ってほしいとお願いしたら、良い写真を撮るのです」と藤波は笑って話す。現在もそのスタッフが撮影を行っている。

 外注していた時は、何かを修正するにも外注先に依頼して、修正してもらう必要があった。リアルタイムで反映できないといったもどかしさを感じていた。それなら、すべて自社でやってみようという発想がおもしろい。

「自分たちで動いて、自分たちでノウハウを貯めていくスタイルです。なぜか、社長はいつも『大丈夫』と後押しをしてくれる」と、瀬尾は藤波の「大丈夫」の一言に勇気をもらっていると言う。さらに、瀬尾は「たとえ失敗したとしても次に活かせる」と言い切る。自前主義でやっていく覚悟が藤波にはあるのだ。


強さの秘密3 徹底した自前主義 


情報発信力

 ちょうどアロマペーパータオル(現在のアロマプレミアムの原型)を開発し、販売を始めた当初、思った以上に苦戦した。「知ってもらわないと買ってくれない」ある雑誌でファーストリテイリングの柳井正代表の言葉が目に留まった。「そうだ。これは広報が必要だ」そう思ってからの藤波の行動は早い。

 日本経済大学大学院特任教授の後藤俊夫の勉強会で、広報関連では知る人ぞ知る山見博康との出会いをきっかけに、さっそく山見を訪ねた。「広報はコストではなく熱意をかけなさい」とアドバイスをもらう。そこからは、独学で広報を学び、自らニュースリリースを作成してはメディアに情報を発信し続けた。

 その成果はすぐに表れた。07年3月1日、記念すべき同社初の新聞掲載は日刊工業新聞に掲載されたアロマペーパータオル(現在のアロマプレミアムの原型)の記事であった。

 現在取り組んでいるブランディングはより大きな情報発信と言えよう。FSXブランドをどのように社内外に伝えていくか。これが課題と言える。しかし、13年前にニュースリリースを藤波自身が書いて、情報発信していた時と大きく違うことは、藤波を取り巻くメンバーも成長し、チームで考えている点である。これも自前主義を貫いてきたからこその強みである。



強さの秘密4 チームFSX

やってみる文化

 自前主義を貫こうと思っても、そう簡単に仕組み化できるものではない。それを可能とさせているのは、同社に綿々と流れる「やってみる文化」だと言える。多くの社員が口を揃えて言うのは、「このようなことをしてみたい」「ここはこう変えたい」といった社員の声、提案に対して、「まずはやってみよう」と会社は返してくれるという。

 同社の配送トラックに備え付けられたカメラからライブ配信を行っているユーチューブチャンネルがある。主に東京都内を配送するトラックからの風景を楽しめるだけでなく、リアルタイムの渋滞や天候を知ることができるという。最初は、配送スタッフの「ノリ」で始まったが、藤波から「FSXオフィシャルでやろう」と決まった。チャンネル紹介ページには、レンタルおしぼりの配送をしていること、同時に洗剤やスポンジなど、厨房やキッチン周りの業務用消耗資材を届けていることがさりげなく付け加えられてある。さらに、イーシザイ・マーケットのPRもしている点は心憎い。部署を問わず、多種多様な人がそれぞれの「やってみる文化」を持っているように思えてくるから不思議である。

 藤波自身もまた父である会長に「こういうことがしたいと言った時に、否定的な答えをもらったことがない」と言う。父の代から「やってみる文化」が息づいていたのだ。会長自身が「やってみよう」というチャレンジ精神でこの会社を立ち上げたのだから、「やってみる文化」が根付いていることは納得できる。そして、失敗したとしてもそれをノウハウとすることで、経験値を上げ成功確率を高くしている。

 このようなトライ&エラーを繰り返す中で生まれてきた商品、サービスは数多くある。イーシザイ・マーケットであり、抗ウイルス・抗菌の特許技術VBであり、天然成分100%の香り付きのおしぼりであり、おしぼり業界では初のグッドデザイン賞を受賞したおしぼり冷温庫「REION」の開発と、挙げだしたらきりがない。そのチャレンジの中心には常におしぼりがブレない軸としてあることが同社の「やってみる文化」の最大の特徴である。


強さの秘密4 チームFSX


藤波のリーダーシップ

 コロナウイルスが広がりを見せ始めた2月末、「どんなことがあっても、従業員と会社を守ると社長が全スタッフに向けてメッセージを発しました。とても頼もしかった」と、秋葉は語る。藤波が大学生のころ、配送のアルバイトをしていた時に、秋葉は藤波を連れて配送していたという。昔から藤波のことをよく知っているからこそ、「社長としての藤波」の成長をより感じたという。

 常日頃より、スタッフのことを大切に思っているからこそ、不安を取り除いて安心して働いてもらいたいと心から考えるリーダー藤波の人間味あふれるエピソードである。

 また、ネットワークコミュニケーションズ代表の岡田直子は同社の強みの一つを、「藤波さん自ら率先して動き、丁寧な社内コミュニケーションを重ね、社内に浸透させていく。その結果、藤波さんを信じて付いていく人がたくさんいる」と分析する。岡田には忘れられない場面がある。REIONの製品発表会のコーディネートしたときのことだ。配送のスタッフがてきぱきと搬入し、いざ、発表会が始まると、発表会場の雰囲気に目をキラキラさせて見ているスタッフを見て、「藤波さんの想いを理解した純粋な人たちが集まっている会社」だと感じたと言う。

 現在では百数十名のスタッフを抱えるまでになったが、「おはよう。今日はどう?」と気さくに駐車場でスタッフに声をかける藤波が印象的であった。藤波に接するスタッフも、社長だからといって、必要以上に緊張をしている感じもなく、いたって自然に接している。トップとスタッフの距離の近さが何よりもフラットで風通しの良い空気感を生み出している。

「おしぼり業界を変える」という強い信念を持って、常に新たなチャレンジをする藤波と「やってみる文化」に育まれた従業員の掛け合わせでおしぼりへの新たな創造を行ってきた「チームFSX」。進化を続けるこのチームが次に何をするか、この先、何をしていくのか目が離せない。同社の次の50年が楽しみで仕方ない。



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