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トピックス -企業家倶楽部

2020年10月27日

Go Toパブリック!ユニコーン上場ラッシュ資金調達も米中デカップリングヘ

企業家倶楽部2020年12月号 GLOBAL WATCH vol.34


プライベートからパブリック・カンパニーへ。米国のユニコーン企業の株式公開が9月に入り相次いでいる。コロナ禍はまだ終息しておらず景気も落ち込んだままだが、テクノロジー株を中心に株式市場は比較的好調。これを機に投資家であるベンチャーキャピタル(VC)が投資資金の回収に動いているもようだ。デカコーンと呼ばれる巨大ユニコーンが多いことと、新規資金調達を伴わない「直接上場」が散見されるのが特徴だ。中国のユニコーンはコロナ禍でも継続的に上場してきたが、今後、デカコーン上場が相次ぐ。しかもナスダックなど米国市場ではなく香港や上海など国内市場を選ぶケースが増える見通しで、資金調達でも米中デカップリングが加速しそうだ。


「データを使用する際にプライバシーと市民の自由の基本原則を維持することが不可欠であるという信念に基づいて設立された」と主張するパランティアのサイト画面




 ユニコーンは評価額10億ドル以上の未公開企業のことで、スタートアップと呼ぶには今や規模が大きく、テクノロジーを武器に特定の業界に変革をもたらしつつある。現在は赤字でも、影響力が広範囲に及ぶプラットフォームを一度構築してしまえば、将来は持続的に高い収益が見込める。VCはそうした企業を株式市場や大企業への株式売却益を狙って、10年単位の長期的視点で支援している。ユニコーンで9月に株式公開したのは9社。8月の3社から急増し、前年同月の4社も上回る。この約2年間で最も活況を呈している。9社のうち8社が米国企業だ。

 先陣を飾ったのが9月16日にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場したスノーフレーク(本社サンマテオ)。上場前の評価額は330億ドルで、ユニコーンの中でも評価額100億ドル(約1兆円)以上のいわゆるデカコーンだ。売出価格は1株120ドルだったが、初日は250ドル近くを付けた。9月末で250ドル前後で取引され、その時価総額は約700億ドルに達した。

 スノーフレークは「データウエアハウス(DWH、データの倉庫)」をクラウドベースで提供する企業だ。企業の様々な部署に分散している膨大なデータを、意思決定の役に立つよう分析しやすい形で一元的に保存するのがDWHで、同社は膨大なデータを解析し、分かりやすい形で可視化するツールも提供する。アマゾン・ドット・コム、グーグル、マイクロソフトといったクラウドサービス大手と競合する一方、可視化ツールでは補完し合う間柄。大手に比べて処理速度が速い、可視化に優れているといった点が評価され、利用が拡大している。

 スノーフレークに続いて上場した3社もいずれも好調。ソフト開発者向けツールを手掛けるジェイフロッグ(サニーベール)、従業員のパソコンのログ(通信記録)をクラウドベースで監視するセキュリティ関連のスーモロジック(レッドウッドシティ)、ゲーム会社にゲーム開発ソフト(ゲームエンジン)を提供するユニティ・ソフトウエア(サンフランシスコ)の3社で、いずれも赤字経営ながらもテック・ブームの波に乗った形だ。ジェイフロッグ以外はいずれも米老舗VCのセコイア・キャピタルが投資している。

 そして9月30日、満を持してNYSEに上場したのがビッグデータ解析のパランティア・テクノロジーズ(デンバー)。上場前の評価額は200億ドルのデカコーンで、上場前は米国ではスペースエックス、ストライプに続く第3位のデカコーンだった。売出参考価格は1株7・25ドルと低く設定したためか、初日は30%ほど高い9・73ドルで引けた。時価総額は214億ドルと上場前と大きくは変わらなかった。

 パランティアは「謎のテック企業」などと呼ばれ、そのビジネスは厚いべールにおおわれている。それもそのはず、国防や諜報活動に大きくかかわっているからだ。同社の名が高まったのは、2001年9月の米同時多発テロの首謀者とされ逃亡を続けていたオサマ・ビン・ラディン容疑者を見つけるのに、同社のソフトが使われたと報道された時だ。

 実際、同社は国防総省、米中央情報局(CIA)、米連邦捜査局(FBI)などを顧客としており、8月に米証券取引委員会(SEC)に提出した上場申請書(S-1)でも「テロ対策で使用するソフトウエアを構築するため2003年に会社を設立した」と明確に書いている。電話やメールなどの通信記録など膨大なデータを分析し、分析対象の関係性を可視化。問題となっている人物などを炙り出す。政府機関のために開発した分析ソフトが「ゴッサム」で、これを民間企業向けに展開したのが「ファウンドリー」。金融機関が顧客の不正取引を検知したり、航空機メーカーが航空機の部品交換の時期を知ったりするのを支援する。19年の売上高は7.4億ドルで、政府向けと民間向けのビジネスがほぼ半々だ。

 パロアルトというシリコンバレーの真ん中で事業をスタートしたパランティアだが、政府に全面協力するという面でシリコンバレーでは「異形」だ。シリコンバレーのエンジニアは個人の権利を尊重し、国の介入を嫌う人が多いとされる。グーグルが18年、国防省とのクラウドサービス契約の入札に参加すると表明すると一部の社員が猛反発。結局参加を取りやめたことがある。パランティアは不法移民を摘発する移民・関税執行局(ICE)にソフトを提供しており、シリコンバレーで抗議活動が起きていた。

 「シリコンバレーの技術エリートはソフトの構築についてほとんどのことを知っているかもしれないが、社会がどのように組織されるべきか、正義が何を要求するか知らない」。アレックス・カープCEOはS-1の冒頭でこう語る。同社は上場前に本社をコロラド州デンバーに移してしまった。

 今回の上場も「異形」である。自社の資金調達をともなわない「直接上場(ダイレクト・リスティング)」という形を取った。新株発行を伴う新規株式公開(IPO)よりも、証券会社に証券発行手続きを依頼する必要がなく、一般投資家向けの説明会も不要で、低コスト、短時間で上場できる。投資家であるVCが一般投資家に株を売り抜ける機会を与える上場形態だ。パランティアには同社創業者のピーター・ティール氏率いるファウンダーズ・ファンド、CIAの投資部門インキューテルなどが投資している。

 同じ日に上場したユニコーンで、プロジェクト管理ソフトのアサナ(サンフランシスコ)もNYSEに直接上場した。アサナはフェイスブックの共同創業者が設立。パランティアと同じくファウンダーズ・ファンドが出資している。

 株式市況がよければ今後もユニコーンの上場が続く可能性が高い。年内の上場が見込まれているのがデカコーンで民泊仲介最大手のエアビーアンドビー(サンフランシスコ)。エアビーは19年9月、20年中の上場を宣言していたが、コロナによる観光産業の壊滅的打撃で苦境に陥り、上場の話はうやむやに。20年5月に1900人をレイオフし人員を4分の3にした。4月にはシルバーレイク・マネジメントなどから出資と融資含めて20億ドルを調達し、なんとか生き延びた。一時は310億ドルの評価額を得ていたが、今や180億ドルに落ち込んでいる。しかしエアビーのプラットフォームを通じた予約率は20年6月から前年同月比を上回り始めている。他のホテルチェーンなどに比べて回復は早い。8月に再びSECに上場申請し、当初の宣言を守る可能性が出てきた。

 1年前の19年といえばシェアエコノミー関係や協業支援ソフトのユニコーンの上場ラッシュだった。3月にライドシェアのリフト、4月にビデオ会議ソフトのズーム・ビデオ・コミュニケーションズ、5月にウーバー・テクノロジーズ、6月にビジネス対話アプリのスラックが上場した。しかしウーバーなどの株価が上場後さえずに失望感が広がったところへ、ウィワークのずさんな経営実態が明らかになり、熱が一気に冷めた。そしてコロナ禍が20年に入って拡大し、ユニコーン上場ブームは立ち消えになった。

 ここへ来て再びユニコーン上場の気運が高まってる背景には、コロナ禍で株式市場も低迷するかと思いきや、急回復して活況を呈していることがある。9月に入りテック株の調整もみられ、11月の米大統領選を前にさらにボラティリティ(価格変動率)も高まる可能性がある。スタートアップがユニコーンになるまで投資してきたVCも資金回収をするタイミングを見計らっている。ストックオプションを持つ従業員にとっても、上場はまとまった現金を手に入れる機会となる。ユニコーンにとって経営自由度の確保など非公開企業にとどまっているメリットはあるが、事業が軌道にのってくれば内外から上場圧力がかかる。



中国はアント・グループが上場へ

 米国とユニコーンの世界を2分する中国はどうか。9月の米系ユニコーン上場ラッシュの前、中国系ユニコーンがナスダックやNYSEの上場を牽引していた。中でも最も時価総額が大きかったのが不動産ネット仲介の貝殻找房(クー・ホールディングス、北京)だ。ネット上の不動産売買仲介プラットフォームを運営しており、リアル店輔で不動産売買仲介を手がける鏈家(リエンチア)から18年4月に分離・独立した。コロナ禍で物件を実際に見れない状況の中、仮想現実(バーチャルリアリティ)の技術を使ってスマホから物件探望ができるのが特徴。上場前は107億ドルの評価のデカコーンで、上場後も株価は上昇。現在時価総額は690億ドル前後にはね上がっている。同社にはソフトバンク・グループ、テンセント、カナダの年金基金などが投資していた。

 これから上場する中国スタートアップも大物が控えている。上場先は中国の取引所である。

 まず京東集団(JDドットコム)のフィンテック企業、京東数字科技(JDディジッツ、北京)。9月に上海証券取引所に上場目論見書を提出し、ハイテク企業向け「科創板(スターマーケット)」に上場する計画だ。同社は小売り向け決済サービスの提供、金融機関のデジタル化支援、スマートシティ向けのオペレーティングシステム開発などを手掛けている。現在、評価額は290億ドルとされ、セコイア・キャピタル・チャイナなどが出資している。京東集団はほかにヘルスケア関連の京東健康(JDヘルス)も香港証券取引所に上場させると報道されている。京東集団自体はナスダックに上場しているが、20年6月に香港市場に重複上場を果たした。

 そして中国最大のユニコーンで評価額2000億ドルとされるアント・グループ(螞蟻集団、杭州)が8月、上場申請した。上場先は香港市場と上海の「科創板」だ。早ければ10月にも上場し約300億ドルを調達すると見られており、19年12月に上場したサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの調達額294億ドルを超える世界最大の上場となる可能性がある。アントの親会社でNYSEに上場するアリババグループも18年11月に香港に上場している。アントは決済サービス「アリペイ」を展開するフィンテック企業で、アリババだけではなく、セコイア、シルバーレイク、中国投資(CIC)、中国国家開発銀行などが投資している。

 上海の科創板には6月、ゲーム大手の網易(ネットイース)がナスダックと重複上場し、7月には半導体受託生産(ファウンドリー)大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)がNYSEから乗り換えた。AIチップを開発する寒武紀科技(カンブリコン、北京)も7月に上場している。

 評価額620億ドルのデカコーンでライドシェア中国最大手、滴滴出行(ディディチューシン)も年内の香港上場を目指し、同180億ドルの動画共有アプリ、快手(クアイショウ)も21年1月の香港上場を計画中とされる。民生ドローン最大手のデカコーン、DJ I(大疆創新科技)も香港市場に来年中にも上場すると報道されている。民主化運動弾圧でアジアの金融センターとしての地位が揺らいでいる香港だが、中国系ユニコーンの出口戦略を模索する場としての役割は低下していないようだ。上海、香港への上場ブームで、資金調達面での米中デカップリングの可能性は高まっているといえる。




Profile 梅上零史(うめがみ・れいじ)
大手新聞社の元記者。「アジア」「ハイテク」「ハイタッチ」をテーマに、日本を含むアジアのネット企業の最新の動き、各国のハイテク産業振興策、娯楽ビジネスの動向などを追いかけている。最近は金融やマクロ経済にも関心を広げ、株式、為替、国債などマーケットの動きもウォッチしている。

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