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トピックス -企業家倶楽部

2020年10月27日

丸亀製麺から学ぶ!アフターコロナでV字回復した企業がやっている事/スリーウェルマネジメント代表 三ツ井創太郎 Sotaro Mitsui

企業家倶楽部2020年12月号 繁盛店から学ぶ


飲食店コンサルタントの三ツ井創太郎です。コロナ禍により外食産業全体が大きく落ち込んでいます。今年の3月から大きな売上低迷が始まり既に8か月が経っています。第二波の影響等により、まだまだ厳しい状況が続いておりますが、こうした中でも回復傾向にある企業とそうでない企業に大きな差が出始めています。今回はウィズ/ アフターコロナにおいてV字回復を実現されて いる企業の取り組みを学んでいきます。



V字回復を遂げている丸亀製麺とはどんな会社か?

 こうした中で皆さんもご存じのうどん専門店の「丸亀製麺」がV字回復に向けて様々な取り組みを行っています。今日は丸亀製麺の取り組みからV字回復のヒントを学んでいきます。

 最初に丸亀製麺という会社について学んでいきます。皆さんは丸亀製麺を運営している会社が株式会社トリドールホールディングスという会社である事をご存知でしょうか?「なぜうどん店なのに“トリ”ドールなの??」と不思議に思われる方もおられるかと思います。

 実は同社は1985年8月に兵庫県加古川市に「トリドール三番館」という8坪の焼鳥居酒屋からスタートしました。そして創業から14年後の99年に地域の家族客が気軽に来店できる当時は画期的であったファミリーレストラン型の焼鳥店「とりどーる」を出店します。

 しかしながら、2004年から世界的に大問題となった鳥インフルエンザの流行などにより、鶏肉を主力食材としない新たな業態の展開に戦略転換を行います。それが皆さんご存知のセルフ式うどん店「丸亀製麺」です。「丸亀製麺」自体は2000年に1号店がオープンしていますが、鳥インフルエンザが「丸亀製麺」への出店加速のきっかけになりました。

 そして一号店オープンから6年後の06年には東京証券取引マザーズ市場に上場、さらにその2年後の08年には、東京証券取引所第一部に上場、現在では「丸亀製麺」は国内に849店舗を展開しています(2020年6月時点)

 ここで今年1月からの丸亀製麺の売上高前年対比を見ていきます。

 1月108・1%、2月110%、3月86・5%、4月55・3%、5月63・6%、6月85・2%、7月86・2%、8月90%。

 全国の居酒屋業態は8月度で前値対比40%〜50%程度、ファミレス業態で70〜80 %程度と苦戦をしている中で丸亀製麺の8月度の前年対比90%という数値は正に「V字回復」と言える実績です。この一つの要因として立地要因が挙げられます。丸亀製麺は地方ロードサイド店舗が全体の8割を占めており、ショッピングセンターや都心店を多く抱えるチェーンと比べて回復が早いという特性があります。さらに丸亀製麺のV字回復は立地要因だけではございません。次章では丸亀製麺はコロナ禍においていったいどんな取り組みをしてきたのかを分析をしていきます。



丸亀製麺がV字回復をする為にやってきた事

①安心・安全の打ち出し

 皆様も一度は見られたかもしれませんが、緊急事態宣言中に放映された丸亀製麺のCMをご存知でしょうか?

 このCMでは丸亀製麺店内でのアルコール消毒や店内空気の5分毎の換気、定期的な備品の消毒等の新型コロナウイルス対策を15秒の映像で分かりやすく伝えています。

 テレビCMというと「新商品」等のマーケティング目的が多いのですが、丸亀製麺はいち早く店内での新型コロナウイルス対策を映像で分かりやすく打ち出したのです。私はこうした活動を「衛生マーケティング」と呼んでいます。コロナ禍の初期段階において「衛生マーケティング」を行った会社と行わなかった会社では、7月以降の集客回復に大きな差が出ています。消費者2000人を対象に行ったとあるアンケートでも多くの消費者が「店内の衛生環境の動画」に対して、最も高い関心を示していました。

 こうした消費者データを分析した上で、当社のコンサルティングご支援先でも店内換気や衛生対策を打ち出す動画を一緒に作成しSNS等でPRを行いました。その上で第二弾としてキャンペーンや新商品のPRを実施しました。その結果かなりの反響があり大きな集客効果がありました。

 その結果、コロナ禍にも関わらず前年対比100%を超える店舗もございました。

 ウィズ/アフターコロナにおいては、こうした消費者心理の変化を敏感に捉えた上で、対応策を“次々”と“スピーディー”に打ち出していく「仮説立案力」「意思決定力」「行動力」がとても重要となります。これはコロナ禍に限らず、非常時の経営においての鉄則です。




②テイクアウト強化

 前章で述べたように、丸亀製麺ではまず初めにテレビCMで「衛生マーケティング」を行った後に、テイクアウトを打ち出したCMを放送しています。私はこのマーケティングの順序がとても重要だと思っています。

 仮に放映順序が逆だった場合、多額の広告費をかけてテイクアウトのCMを放映しても「コロナウイルス感染が心配だから買いに行きたくない」と思われてしまっては広告効果を高める事はできません。

 さらに同社のテイクアウトのCMを見ると、テイクアウトだからといって味に対しての妥協を許さない姿勢が見てとれます。具体的には自宅でも丸亀製麺の「打ち立て」「茹でたて」「もちもち」等を体験できるようにわざわざ専用のテイクアウト容器を開発しています。こうした取り組みにより、3月時点では1.6%程度であったテイクアウト比率を6月度には14・7%にまで上昇させる事に成功しています。

 専用容器は中蓋が付いており、麺と出汁が別々になっています。天ぷら等のトッピングは別の箱で持ち帰る事ができます。こうした工夫によりテイクアウトにも関わらず店内の商品クオリティを再現しているのです。

 コロナ禍においては多くの飲食店がテイクアウトを開始しました。私も実際にあらゆる飲食店のテイクアウト商品の試食調査を行いましたが、正直に申し上げて「急場しのぎ」の商品も少なくありませんでした。せっかく始めたテイクアウトやデリバリーでお店の評判を下げてしまう、私はこれを「逆ブランディング行為」と呼んでいます。

 緊急事態宣言という未曾有の状況の中で、クオリティの高いテイクアウト商品を開発する事はとても大変な事です。しかし私はこうした時期だからこそ「お客様の期待を裏切らないお店づくり」が本当に大切だと思っています。

 飲食店の基本に「QSC」という考え方があります。QはQuality(クオリティ=品質)SはService(サービス)、CはCleanliness(クレンリネス=衛生)です。

 全ての飲食店にとって最も重要な繁盛要素であるQSCですが、コロナ前の実情を見るとQSCレベルが低いにも関わらず「グルメサイト等の点数が高い」「インスタ映えする商品がある」などの理由で繁盛を実現しているお店が少なからずあった事も事実です。

 実際に皆さんもグルメサイトの点数やインスタの写真を見て来店したけれど、実際に来店してみてがっかりしたという経験が一度や二度はあるはずです。

 当社のコンサルティングご支援先等では、専用のQSCチェックシートを作成した上で、店舗毎にチェックを行い項目別の達成度合いを数値化(見える化)し、前月、系列店舗等との比較を行い「QSCにおける自店の強み、弱み」を明確にした上で、改善を行うPDCAサイクルを構築しています。私は「QSCチェック基準」はそのお店、その会社の目指すべき姿、ブランド像を表す重要指標であると思っています。

 基準は各社によって異なりますが、100点満点中70点に満たない店舗は「イエローカード」として、本部スタッフ等が介入した上で店長と一緒にQSC改善に取り組む等の対策を行ってもらっています。

 コロナ禍においては、多くの消費者が外食自体を控えると同時に、緊急事態宣言後の久々の外食の場として「以前に来店した事がある」「QSCが高い」「馴染みのお店」を選ぶ傾向が圧倒的に高くなっています。そうした意味でも丸亀製麺のQSCに対する取り組みや実績は、改めて飲食店経営におけるQSCの大切さを思い出させてくれます。

「そんなのは丸亀製麺のような上場企業だからできる取り組みだ!」と思われる方もいるかもしれませんが、決してそんな事はありません。

 次章では繁華街の立呑み居酒屋業態にも関わらず7月度で前年を超える売上を記録しているお店の事例を見ていきます。



コロナ禍でも前年超えの立呑み居酒屋店がやっている事

 ここでご紹介をさせて頂くのは、名古屋にある居酒屋「立呑み 焼きとん 大黒」です。同店の系列店はどこも10坪程度の小さなお店ですが、創業以来「QSC向上」を徹底して行っています。

 08年に単価90円からの焼きとん串をメインとした立呑み業態として愛知県で創業し、そのQSCレベルの高さから多くの常連客から支持をされ、現在では愛知県外にも直営店とFC店舗展開を行っています。

 通常繁華街にある飲食店ではグルメサイトに掲載し、販促費をかける事で一定の集客を獲得しているお店が多い中で、同社ではグルメサイト等への販促費を一切かけていません。

 販促費をかけない代わりに行っているのが「お客様とのコミュニケーション構築の仕組み化」です。その一つとして同店では創業から店内でのイベントに力を入れてきました。例えば常連の客を巻き込んだスタッフの誕生日会や転勤していく常連のお客の送別会など、毎月様々なイベントを企画し「お客様満足」を高める店舗営業を行ってきました。

 商品開発に関しても、毎月新商品を発売し常連のお客にメールやSNSを通じて新商品PRを行い、来店促進をしていく「ダイレクトマーケティング」にも力を入れています。

 さらに同社の凄い点は通常の飲食店ではマンパワーに依存してしまいがちなQSC向上に向けた取り組みを「目標化」した上で、自社が開発したアプリで全ての管理を行っています。QSC向上において重要となる業績指標=KPI(KeyPerformanceIndicator)をWEBシステムを通じて教育、管理を行う事で店舗のQSCレベルアップを実現しているのです。それは正に「人材育成のデジタルトランスフォーメンション」と言えます。

 さらには各自が獲得したKPIポイントを社内仮想通貨のように可視化した上で、社員の賞与やアルバイトのインセンティブ等に反映させています。そしてポイント付与の基準としても、単なる業績結果だけでは無く「イベント計画をしたら〇〇ポイント」「社内資格を取得したら〇〇ポイント」など、その個人の頑張りやプロセスをポイントに還元していく仕組みが社員のモチベーションアップに大きく寄与しています。

 同店の徹底したQSCはコロナ禍においても大きな効果を発揮しました。8月になり長引くコロナ禍による影響を心配した多数の常連の客が同店を訪れるようになったのです。

 8月度といえば、全国の繁華街の居酒屋の多くがまだまだ前年対比50%〜60%で推移していましたが、その中でも同社は前年対比100%以上の実績を出していました。

 最近ではコロナ禍でバイト先を失い、退学等を検討せざるを得ない多くの大学生がニュース等で取り上げられていますが「立呑み 焼きとん 大黒」では、コロナ禍で働く場所を失った多くの大学生などを採用し雇用創出にもつなげています。こうしたスタッフの頑張りにより、さらに店舗のQSCレベルが高まっていくという「正のスパイラル」を実現しています。

 ウィズ/アフターコロナ時代を生き抜く為の「魔法の戦術」は存在しません。

 小手先の販売促進手法も通用しません。

「QSC向上に向けた毎日の努力の積み重ね」が今まで以上に大切になっていきます。

 少しでも皆様のご参考になれば幸いです。

 最後までお読み頂きありがとうございました。


コロナ禍でも前年超えの立呑み居酒屋店がやっている事


Profile 三ツ井創太郎(みつい・そうたろう)
飲食専門のコンサルティング会社、スリーウェルマネジメント代表。一般社団法人日本フードビジネス経営協会理事長。長年、飲食業界の現場で培った経験を武器に、個人店から大手外食企業、国内から海外まで幅広いクライアントに対してコンサルティング支援を行う。HP上で飲食店経営のあらゆる課題を解決する無料ノウハウブログを100記事以上公開中。

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