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トピックス -企業家倶楽部

2020年10月27日

佐藤綾子のパフォーマンス心理学 第59回/オンラインでズバリ伝える力

企業家倶楽部2020年12月号 トップの発信力

1.なぜ伝わらないのか?

 3月上旬、あのジャパネットたかた創業者の髙田明氏から電話がありました。「テレビのオンライン会見、あるいはコロナ対策のZoomの様々な会議を見ていると、腹立たしいくらい主張や誠意が伝わって来ない。今、佐藤さんの非言語表現の知識をきちんとここで皆さんに伝えないと、オンライン化の波に日本人がついていけない」と仰られました。本当にそうだと思いました。

 私も2月上旬からZoom会議やZoom研修、動画配信、You Tube等をやっていて、対面のコミュニケーション(以後F2F)よりもオンラインのほうが、「表現力の足りない人は、より足りなく見える」ことに気づいています。欠点が最大級に増幅されるのがオンラインです。しかもそこでわかったのが、非言語で勝負できているか、いないかでした。では具体的に見ていきましょう。



2.言葉より全身で伝わった安倍首相退任の姿

「安倍首相の退任記者会見をよく見て、感情分析をお願い致します」と共同通信社から連絡をもらいました。

 1時間しっかり拝見して、全身から正確にひしひしと伝わったのは「無念さ」でした。あのオリンピックプレゼンと比べれば、違いは歴然。目線は常に伏目になり、身体動作に至っては左手の拳を1回上げたり、手を開いたりしただけです。

 トランプさんがたった16分30秒ほどの就任演説で112回もOKサインを作り、腕を大きく振り回したのと比べればもちろん違います。安倍首相自身のオリンピックプレゼンとも違います。オリンピックプレゼンは合計224秒の内、左右に12回ずつ均等に顔を向けた。パフォーマンス心理学では「ヘッドムーブメント」という動きがありました。アイコンタクトは207・5秒。アームは76回も動いていたのです。それなのに今回は、最初に口火を切った瞬間から目にうっすらと涙が浮かび、「この長い就任期間のレガシーはなんだったか?」という質問が来た時だけ、小さな微笑みが浮かびました。

 顔の表情と動作、アイコンタクトという、非言語表現の中でも最もインパクトの強い3点の欠如が「残念で、悲しくて、悔しい」という想いを表していたのです。「悲しい」「悔しい」「残念」と言葉を連発しなくてもこのように非言語は雄弁なのです。



3.自民党総裁選3立候補者の人格はズバリ顔に出る

 総裁選に、菅官房長官、石破元幹事長、岸田政調会長の3人が立候補しました。詳細な主張はもう読者の皆様ご存じとして省略します。この3人の特徴をキーワードで言えば、安倍政権に対する「継承発展型」が菅氏、「ガラリチェンジ・グレートリセット型」が石破氏、「修正型」が岸田氏となるでしょう。実は顔の表情がそのキーワード通りだからなんとも不思議なのです。

 菅官房長官の立ち合い演説会と記者会見の顔には「前者を尊重して、一歩ずつ前に行く」という誠実さが、言葉遣いにも顔の表情にもはっきり出ていました。記者たちを正面から睨みつけたりしないで。高校卒業後、就職して法政大に入った苦労人で、実務の実力は誰よりもある菅氏だからこそ、派手な言葉を使わず、派手な表情変化を見せず、コツコツと「首相が始めてきた取り組み」を「継承し」、「更に前に進めたい」と説明しました。

 彼がさらに規制改革を全力で進めるというのは、今までいくつかのがんじがらめの規制改革があるゆえに常に安倍首相の代わりに細かい交渉役にあたってきた菅氏の非常に実感のこもるところです。

 残りの二人の特徴は、二人とも元銀行マン、つまり計算に強いわけです。

 その中で、世の中の一般的な人々が最もよく言及するのが「石破氏が話をするときの表情の悪さ」です。「今までの体制をガラリと変えるグレートリセットをしないといけない」と彼が言うとき、その内容は今あるものに対する否定形になります。否定形の言葉を言う目的のためか、表情まで否定意識が強い形になるのです。今まで表情が攻撃的であることを多くの人から指摘されているので、なんとか直してほしいところです。そのような世評をご存じなのか、最近は軽い笑顔を混ぜようとするのですが、攻撃的な表情と笑顔の「つなぎ」のところがどうもギクシャクして、うまく繋がりません。頭がよく誠実な人柄が表情に出ないのは本当に損だと思います。

 一方の岸田氏はいかにも元銀行マンらしく、話も論理的で、顔も美形です。理路整然とした話の内容と顔の作りなので見た人の多くは「これでまあまあ良いでしょう」と思うわけですが、菅官房長官の多少訛りのある秋田弁のような温かみはない。結局F2Fならじっくり話せばわかるところですが、オンラインなら「顔の表情と声に温かみがあること」、「周りを否定的な顔で見ないこと」、これは勝利の鉄則でしょう。



4.オンラインの非言語表現は今後への一発勝負

 表情や声、動作などの非言語表現は内容を論理立てて考える前に私たちの心に飛び込んできます。そのたった1秒で好感や反感がはっきり分かれる。それによって次にその人の口から出てくる次の言葉に耳を傾けるか、傾けないかが決まってしまうのです。元々よく知っている相手で、膝を突き合わせてじっくり語るならば別ですが、オンライン社会では非言語が勝負を決めます。このことを今のマスク生活の中でも自覚して顔の表情トレーニングをし、自分の顔が肯定的に見えるのか、批判的に見えるのか、建設的に見えるのか、所謂「修正・妥協型」に見えるのか等、表情と自分のタイプを考えておくことはとても大事です。

「オンラインはできたら使いたくないものだ。対面しか人間関係やビジネスはできない」などと言っている人が未だにいますが、日本も世界も伸びている会社はそのように動いてはいません。DX化が進んだところと、そうでないところとではビジネスの利益が大きく分かれている。ここは一つオンラインで通用する声と表情を身につけましょう。それが今後のF2Fで必ず活きます。たくさんのデータを新たに取って今回「オンラインでズバリ伝える力」(幻冬舎)を出したので、よろしければご参考になさってください。表情と声のトレーニングも入っています。




Profile 佐藤綾子(さとう・あやこ)
博士(パフォーマンス心理学)。日大芸術学部教授を経て、ハリウッド大学院大学教授。自己表現研究第一人者。累計4万人のビジネスマン、首相経験者など国会議員のスピーチ指導で定評。「佐藤綾子のパフォーマンス学講座 」主宰。トップリーダーに学ぶ人を惹きつける「自分の見せ方」など単行本194冊、累計323万部。



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