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トピックス -企業家倶楽部

2020年10月27日

新型コロナとの闘いに学ぶ 4 DXのカギは発想の転換 スタートアップ長期経済改革/日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合代表 村口和孝 Kazutaka Muraguchi

企業家倶楽部2020年12月号 日の丸キャピタリスト風雲録 第75回

2020年秋 10月新型コロナ前線

 2020年9月安倍長期政権が首相の健康問題で突然終わり、菅政権に代わって驚いていたら、10月東証のNever stop システムが止まって驚いたが、突然トランプ米大統領コロナ感染情報が入り、正にビックリの秋である。11月の大統領選の直前だったために、結果への影響が劇的である。どうやら新型コロナは、経済再開(GoTo)にかじを切った日本では、経済活動を徐々に復活させながら、感染そのものは一進一退を繰り返しながらも、死者重傷者とも少なくゆっくり収束に向かいつつあるように感じる。だんだんと治療への対処法が経験的にわかって来ており、ワクチン開発もあと数か月と言うところまで来ている。ただ、世界に目を転じると、感染者がいなくなったとされる中国は例外として、一日の感染者アメリカブラジル各4万人、インド7万人などで感染者数が高水準のままである。

 どこの国も新型コロナでこれ以上経済失速を続けられない財政悪化状態となっており、医療崩壊をさせない程度に縮んだ消費経済をまずは復活させようと、四苦八苦をしている状況下にある。過去海外旅行で潤っていた航空産業の採算悪化は深刻だが、一方消費減は貯蓄高も意味しているから、自動車販売などは急回復しつつある。日本ではGoToトラベルやGoToイートで年末にかけて消費不足を盛り上げようとして効果が出ている(仕組みは縦割りだが)。株価は、各国の金融緩和による潤沢な投資資金に支えられて、時々乱高下しつつも、全体に株価は高い。

 一方で、コロナ禍に耐えられなくて破綻する飲食業やサービス業も多く、業態転換を図る業者も多い。世代交代も一挙に表面化してきている。その中で、自殺する有名な俳優のニュースが世相に暗い影を落としている。大学教育も未だにリモート授業が続いており、世の中がコロナ以前に戻らないのではないかと思っている人は多い。ほとんどの人々が、毎日、これまでと全く異なる新しい常識の中で新しい生活パターンへの転換(トランスフォーム)を模索しているように見える。



DX新規上場人気

 IPO市場は人気である。特に、コロナ禍によって、日本の官庁など社会の仕組みが、未だに全くデジタル化に追いついてなくて、後進国になってしまっていることが露呈してしまった歴史的な教育効果が大きいのではないかと見られる。経済新聞は、毎日のようにDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性に注目するようになっている。菅政権発足で、省庁の縦割りの改革とデジタル庁発足に期待が集まっている。新規上場ベンチャーは、手を返したように、みんなDXに関連付けて、事業説明に熱を入れ、投資家もDX関連だと言うと株価が二倍三倍になる騒ぎとなっている。

 DXとは結局、社会の抜本的な仕組み改革である。特に日本は過去、ディレギュレーションを本来「規制解除」と訳すべきところを、わざわざ「規制緩和」と意訳して旧来の組織を守って来るような所のある、ずる賢い官僚の国である。持ち前の適用力も、時には困ったことになる。IT化、ネット化と言いながら、本来トランスフォームすべきであった古いハンコ稟議の仕組みをそのままにして、見かけのデジタル化IT化を進めてきたお国柄だ。地方自治体のコロナ感染者の集計は、未だに手書きとファックスで行われていると、世界的に話題になった。これまでガラケーの失敗などガラパゴス化と言う誤魔化しで、世界での活躍の場を失って来た日本経済の失敗を繰り返してはならない。おかげで日本から、ここ数十年、以前のソニーやホンダのような世界プレイヤーを生み出さない日本になってしまっていた。そのために、残念ながら現在、GAFAMやアリババに対抗できる日本のスタートアップはいない。

 それがいよいよ、今回のコロナ禍で、ガラパゴスで日本だけ特殊なんです、みたいな言い訳は言っていられなくなったようだ。台湾が軽々とコロナ対策をITを活用して、即座に実現したことが大きな刺激となった。すでに世界では当たり前のDX(業務IT化)は、これまでIoTとかクラウドとかビッグデータとか言って日本で表面を取り繕いお茶を濁して来たが、コロナでとうとう誤魔化しきれなくなって、今回のDX号令なのである。つまりトランスフォーム(抜本的組み換え)と言う強烈な言葉を使って、ITを使った仕組みの改革をやろうと言うことになったのだから、これは菅政権も本気でデジタル化と向き合い、日本を改革すると言うことであろう。



真の経済改革トランスフォーム

 日本経済は、今度こそ本当に改革しなければならない。これまでは、保健所のファックスなど日本の旧体制を維持するためのIT化だった。その「旧体制維持」の意義を「未来への最適化」に逆転させて、縦割りの旧体制をぶち壊してでも、デジタル技術を使い、経済社会全体をもっと便利な、もっと価値のある社会システムに大改革して、21世紀に最適化しようではないか。(台湾はサッサとそれを実現しているのだ。)トランスフォームと言う言葉が、(ずる賢い意訳の日本語を使わないで、)そのままの表現で背中を後押ししてくれればよい(車がロボットに変身するように!)。混乱はもとより覚悟の上だが、デジタル庁の活動に期待したいところだ。

 問題は、新しい経済社会の最適化を誰が担うかである。答えは二つある。一つは、「旧組織が内部を鼓舞して自己改革をする」ことである。二つは、「新スタートアップが全く新しい商品サービスを創造して社会に提供する」ことだ。これまで、安倍政権では、どちらかと言うと経団連を中心とする旧組織のイノベーションを強力に推進してきたように思う。それはそれで価値がないとは言わない。自動車産業が頑張り、流通物流が頑張り、金融機関がイノベーションで頑張るのは、大変結構なことである。

 ただ世界の変化は、連続してやってくる巨大台風の暴風雨のようである。川を氾濫させ、従来の住宅地や街そのものをみるみる押し流していってしまう。しかも、にわかに進路が予測できない。これを、どんなに優良な企業であったとしても、既存の企業だけで対応できるとは、到底思えない。なぜなら、過去の企業には良くも悪くも歴史のストックがあるからで、エネルギーのすべてを未来の新しい機会にだけ投入するわけにはいかないからである。場合によってはトランスフォームしてしまうと、せっかく組み立てた過去の事業が台無しになってしまう危険性がある。

 例えば銀座四丁目の一等地にデパートを持つ三越に、ネットの新時代だから銀座の不動産を処分して、そのお金でネットのフロンティアに投資してアマゾンのようなEC企業に変身しようとしても、まず役員会はそうはならず意思決定は難しいだろう。従来の経営分析の一番最初によくやるSWOT分析と言う道具の欠陥である。SWOT分析とは、強み(S)弱み(W)と、機会(O)脅威(T)を観察し、俯瞰することから経営を分析しようとする。経営者であれば誰でも知っている道具だ。三越の場合、銀座一等地の立地が最高だから、強み(S)になる。そこを出発点にして議論を展開するから、まさか強みの土地を売却するという結論にはならない。普通、「過去の強みが逆に未来への足かせになる」のである。つまり、過去の優良企業はいつの時代もトランスフォームしづらいものである。



スタートアップ経済が成長のカギ

 地殻変動に近いような、激変する経済社会のトランスフォーマーとして、役割を担うのがスタートアップと呼ばれる新規の企業群である。現在優良企業と言われている企業群は、かつては時代変化のフロンティアを担うスタートアップだった。パナソニックは家電が歴史に登場した時のスタートアップだったし、ソニーはトランジスターが登場した時のスタートアップだった。PCとインターネットが登場した時代のスタートアップがGAFAMだった。新しい時代時代のフロンティアに、スタートアップが登場してこなければ、その経済力は衰退に向かっている。力強いスタートアップの登場が、力強い次の世代の経済社会を作っているのである。

 スタートアップ経済は1990年ごろからIT革命でシリコンバレーにおいて大成功し、今日のGAFAMを生んだ。2000年頃から、中国がその重要性に気が付き、スタートアップ経済をエンジンにした経済政策をダイナミックに実行して、アリババなどスタートアップが活躍して今日の中国経済の発展がある。インドや発展途上国もスタートアップ経済の発展を経済政策の中心においている。日本も遅れながらも、発想を大転換し、本気でフロンティア領域のスタートアップ経済を政策の中心に据えるべきである。

 そのスタートアップ経済成立条件は、以下のとおりである。

第一条件が、時代の歴史的激変(機会)

第二条件が、多数の起業家の登場(教育)

第三条件が、新しい商品サービスの発見と販売試行錯誤

第四条件が、創業資本家(多数のベンチャーキャピタリスト)のバックアップとガバナンス経営

第五条件が、新市場への商品投入挑戦と販売拡大(キャズム越え)

第六条件が、供給体制組織の構築(取引先契約、 採用、設備投資)

第七条件が、スタートアップのIPOと、M&A市場の充実

 菅新内閣において、経済成長を目指すのだから、既存企業の経団連のイノベーションも重要ではあるが、世界が向かっている経済が「スタートアップ経済」であることを肝に銘じる必要がある。


スタートアップ経済が成長のカギ

プレミアムウォーター14年で時価総額千億達成

 スタートアップの立ち上げの成長には、とにかく時間がかかることに注意にが必要だ。事例として、プレミアムウォーターホールディングス(萩尾社長、06年10月創業、以下PW)は、天然水とサーバーを家庭に売っている飲料ベンチャーである。PWは13年3月に売上50億円程度でIPOして、コロナ禍の中20年10月ようやく売上500億円が視野に入って来た。最近投資家の評価もようやく高くなり、証券市場で時価総額1000億円を達成した。PWは日本が生んだゼロから創業の立派なスタートアッププロジェクトの成功だと思うが、1000億円への到達が14年も掛かっているせいか、誰も成功したスタートアッププロジェクトだと評価し、研究しないところに日本のスタートアップ研究の暗さがある。

 このようにスタートアップ経済は、成功すれば大きいが、長い間陽の目を見ない、ひじょうに気の長い忍耐のいる大変な先行投資プロジェクトである。既存の大組織であるなら、社長が変わり、現場の部長らもとうに人事異動している時間の長さだろう。スタートアップが取り組むプロジェクトは、大概10年を越してしまい、役所や大組織の対処できる時間距離ではない。四半世紀単位の人生をかけて、十年以上研究する実務研究家、起業家、ベンチャーキャピタリストが長期に関与しなければならない。超長期のスタートアップ経済振興こそ真の成長戦略である。




■著者略歴 日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合代表 村口和孝《むらぐち かずたか》
1958年徳島生まれ。慶應大学経済学部卒。84年ジャフコ入社。98年独立、日本初の独立個人投資事業有限責任投資事業組合設立。06年ふるさと納税提唱。07年慶應ビジネススクール非常勤講師。19年松田修一賞受賞。社会貢献活動で、青少年起業体験プログラムを、品川女子学院、JPX等で開催。投資先にDeNA、プレミアムW、PTP、IPS、グラフ、電脳交通等がある。



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