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トピックス -企業家倶楽部

2020年12月26日

魂で乗り越えた上場/ピーバンドットコム代表取締役 田坂正樹 Masaki Tasaka

企業家倶楽部2021年1/2月合併号馬渕磨理子のそこが知りたい! vol.4


「ピンチはチャンス」。経営者なら誰しもぶつかる壁がある。その時、何を考えどう行動したのか。業界をリードする企業家たちをゲストに迎え、トップとしての心構えやブレイクスルーにつながるターニングポイントをアナリスト馬渕磨理子が紐解く。今回はピーバンドットコム田坂正樹代表。ミスミで培ったノウハウをヒントに、プリント基板業界に新しい風を吹かすべく邁進するピーバンドットコム。あのときのターニングポイントを振り返りながら、将来の展望とともに田坂代表に語っていただいた。聞き手:馬渕磨理子

オーダーメイドの利点を活かす

馬渕 前職のミスミのカルチャーが田坂社長の仕事観のベースになっているそうですが、プリント基板をネットで気軽に調達できる仕組みを起業された経緯についてお聞かせください。

田坂 もともと新卒で入社したのがミスミでした。ミスミでは2つの新規事業に携わり、いわゆるB2Bのカタログ通販のマーケットがあるということを学びました。私自身、大学生時代から将来起業をしようと思っていました。ミスミで学んだことをEコマースに変え、商材を変えたものが今のピーバンドットコムの仕事です。

 ただ、ミスミで扱っているようなネジや金型のような商材は大きな倉庫が必要になります。そうすると在庫のコストがかかってしまうため、ベンチャーで始めるためにB2Bで在庫が無くてもできるものがないかと考えていました。プリント基板は電動のあらゆるものの中に使われるメインの部品にもかかわらず、図面をもらってから作り始めるオーダーメイド製品です。倉庫が不要で在庫リスクもないことに気付き、商材として選びました。プリント基板に何かがあったわけではなく、ベンチャーとして立ち上げるときにリスクが少ないため選んだのです。



国内外の力を合わせて

馬渕 既存のプリント基板の製作とピーバンドットコムさんとの違いはどこにあるのでしょうか。

田坂 プリント基板は注文を受けてから作り始めます。ポイントは工場に空きがあるかです。工場側からすると、たくさん発注をしてくれる大口のお客さんが優先になり、試作だけや小ロットのものしか作らないお客さんは後回しになってしまいます。それを人的なリソースを使い調整しながらやっていくのがこれまでのプリント基板の世界でした。しかし、そうなると試作だけを発注したい中小事業者や研究開発だけやっているところがものづくりできないことが問題になってきます。弊社はそれをインターネットで、枚数やサイズなどのスペックを入力すると「3日で届けます」や「料金はいくらです」というのがパッと出るようにしています。その代わり、一つの工場では賄えないので、国内外30社ぐらいの工場をつなげて、最適なところに振り分ける形でいつでも受けられる体制を構築しています。

馬渕 現在のプリント基板業界の市場規模はどれくらいで、その中でどれほどのシェアを占めているのですか。

田坂 プリント基板業界だと大きいので、産業用機器のプリント基板でお話をすると、マーケットは6500億円あると言われています。弊社はその中で20億円であり、ネットでは0.3%ほどしか取れていません。まずは市場シェアの10%、600億円を目指します。


国内外の力を合わせて

サービスの応用

馬渕 一つの成長事業として、EMS事業に取り掛かっているそうですが、EMSとはどのようなものなのでしょうか。

田坂 EMSとは“Electronics Manufacturing Services”を略したもので、電子機器の製造を受託するサービスやそのサービスを提供する企業のことを言います。「こういうものを作りたい」というアイデアの持ち込みから、使う部品、大きさ、デザインを考え、最後はそれを検査、箱詰めし出荷します。ただ、発注者も要件定義ができていないようなものを形にしていくため手間がかかります。弊社は今まで、「設計」「プリント基板作成」「作成した基盤に半導体を載せる」など、プロセスを切り取ってサービスとして提供していました。そのため自動化できる部分もあり、EMSでもある程度置き換えてやっていけるのが現状です。



DXは始まっている

馬渕 さらに今後の成長戦略の軸として、ものづくり業界のDX化に寄与することとM&Aを行っていくと伺いました。

田坂 例えば大きな会社へ打ち合わせに行くと、最寄りの駅からタクシーで10~15分、受付して相手が来るまでまた10分、会議室まで歩いて10分というように、会うだけでとても時間かかります。それが今、Webで1日に何件もミーティングできるようになりました。弊社にも30名ほどのセミナールームがありますが、Webで行うことにより30名以上の人が参加できるようになりました。これと同じように、実際にモノづくりの部分でも、今まで会って設計していたものをネットでやろうとしてきています。慣習に縛られてやっていたことが、コロナウイルスによりゼロから考えるようになりました。効率的だったり、人に会わないという軸からものづくりのDX化も始まっているのです。EMSのようにDX領域をどんどん広げています。

馬渕 M&Aはエンジニアや工場が対象なのでしょうか。

田坂 基本的にはB2Bのものづくり領域において話を聞いて検討しています。工場の話もきていますが、エンジニアや部品の商社など新しい部品調達ビジネスのノウハウを持っているような会社を検討しています。


DXは始まっている

本気でした株式上場

馬渕 これまでで田坂代表のターニングポイントはどこだったのでしょうか。

田坂 ミスミに入ったことです。あのときに「こういう世界があるのか」と感じたり、1億円を稼いでいる上司に会えたりしたことでマインドセットが変わったのでしょう。それがあったから起業に至りました。上場ができたのも協力してくれる経営者がいたり、株式上場の知識のある人を紹介してくれる人がいたからです。これでIPOできなかったらもう上がれないと思いました。

馬渕 最短でIPOを目指されたそうですが、そのお考えをお聞かせください。

田坂 自分は株を12%しか持っていませんでした。創業当時の資本政策に失敗し、ミスミ時代の上司だった人が70%所持しており、2200万円の追加出資をしてくれました。当時20代だった自分は何もわかっておらず、「儲かってきたら買い戻せばいい」と思っていたのですが、いざ儲かってきたら配当を出すことになりました。どんなに頑張っても配当で消えてしまう。10年続きました。始めはいいとは思っていましたが、次第にいつまで続くのかと思い始めました。買い戻させてほしいとお願いをすると、上場するなら譲渡すると言われ、「絶対に上場する」というスイッチが入り、これでだめなら仕方ないというところまで本気で取り組みました。



逆風を追い風に

馬渕 コロナで電子機器の需要の変化はあったのでしょうか。

田坂 業界的には15%ぐらい減りました。電子部品業界は3月決算が多く、4~9月で様子を見て、大手の決算に向けてものをつくっていきます。今回コロナで様子を見ていたものが11月になりかなり戻ってきています。弊社のユーザー数はいつも通り伸びています。

馬渕 5Gが本格化に伴い、プリント基板の性能も高度化が求められ、そこに注力していくそうですね。

田坂 5Gが始まると遠隔医療が始められます。遠隔医療するためのロボットや画像解析の技術がどんどん増えてくるでしょう。5Gを配信する機械も含めより精密な高多層基板が増えてくると考えています。

馬渕 電子機器関連で注目している分野はありますか。

田坂 自動車関連です。先日、Hondaが世界で初めて自動運転レベル3に求められる型式指定を国土交通省から取得し、そのシステムを搭載した製品を今年度中に発売すると発表しました。おそらく買い替える人は多いと思います。また、10年後にはレベル4、免許が要らない世界になることを考えると、ここから盛り返してくるでしょう。



自分のための正しい知識を

馬渕 トップとしての心構えをお聞かせください。

田坂 まずは製造業のDXを進めていき、10%のマーケットを取りたいです。そのためEMSの経験者やロボットを作れるようなエンジニアを採用しています。我々のシステムを使って効率的にものづくりができる世界を実現していきたいです。

 また、上場企業の社長としては40億円ぐらいの時価総額でくすぶっているので、まず100億円を超えて10倍にしたいです。知人の企業家にどうすれば時価総額が増えるのかを聞くと「事業を3年単位で見る」というアドバイスをもらいました。3年単位で見て、投資するときは投資すると意思表示をし、赤字を出してでも投資をする。これを投資家の人たちに「このKPIが上がってくれば株価や利益も連動して上がる」ということをわかりやすく説明します。そして実際に売上げと利益が連動して伸びていくのを3年単位で繰り返していきます。そうすると機関投資家がついてくるのです。特に海外の機関投資家はわかりやすく説明し、実績を示すと投資してくれるようになるそうです。

 色んな人に話を聞いていますが、それぞれのやり方で投資家心理を学んでいます。なんとなくそうなったのではなくてロジックが必ずあるのです。

馬渕 最後にこれからの企業家にアドバイスをお願いします。

田坂 資本政策が一番大切です。にもかかわらず、経験値がないまま資本政策をしなければならないというジレンマがあります。共同創業者であっても1人が51%を持つ。等分にしてしまうと意思決定ができず崩壊しかねません。理性的な大人にアドバイスをもらうのが良いでしょう。




Profile
田坂正樹(たさか・まさき)
1971年東京生まれ。95年多摩大学経営情報学部を卒業し、ミスミ入社、Eコマース事業立ち上げに参画。2000年同社退社、複数企業の事業立ち上げに関与。02年ピーバンドットコム設立。17年東証マザーズ上場、19年東証1部に市場変更。


馬渕磨理子(まぶち・まりこ)
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで株式アナリストとして活動しながら、現在は日本クラウドキャピタルでマーケティング・未上場株のアナリストも務めるパラレルキャリア。プレジデント、S P A ! での執筆を行う。大学時代はミス同志社を受賞。

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