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トピックス -企業家倶楽部

2020年12月26日

新型コロナとの闘いに学ぶ5 時代の潮流激変をチャンスにする経営/日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合代表 村口和孝 Kazutaka Muraguchi

企業家倶楽部2021年1/2月号 日の丸キャピタリスト風雲録 第76回

2020年冬  12月第三波のピークを越える?

 感染者がいなくなったとされる中国は例外として、大統領選の影響か一日感染者がアメリカにおいて20万人まで激増してまさに第三波の真っただ中である。しかし、国によっては11月に激増した新規感染者数が、三つ目の山を越して減少に転じており、ブラジルが5万人、インド4万人、イギリス・フランス各1.5万人などで、未だ高水準ながら、三回目の外出規制を解除し始めてきたところだ。

 日本は少し遅れて第三波が12月冬季を迎えて激増したが、ピークを超え始めているようにも見える。秋以降徐々に経済を再開し始め、大相撲や野球などイベントも恐る恐る実験的に開始し、1日の新感染者数が二千人を超え新記録を更新している。当然医療供給体制が悲鳴を上げ始めているが、現在が第三波のピークなら、自衛隊の支援などでギリギリ乗り越えられ、年末年始は落ち着いているのかもしれない。

 年末恒例の紅白歌合戦は無観客で実施が決まっているなど慎重ではあるが、政府は、GoToトラベルやGoToイート政策で動き出した消費経済のブレーキを踏むか、継続するかぎりぎりの判断を求められている。年末年始の休暇をどうするか悩むところだが、国民もだんだん状況の中で経済活動をしながら感染にも注意するという状況に慣れてきているように感じる。一方、再開した経済の年末年始商戦で業績を挽回しようとしてきた観光産業やレストランなどは、年末また経済にブレーキを踏むと、壊滅的な打撃を受けたところもあるだろう。

 良いニュースとしては、待ちに待ったワクチンの承認が始まったことである。ファイザー、モデルナをはじめ、各国で、12月接種を開始したことで、劇的に状況が改善する可能性がある。株式市場は2020年年初来高値を更新して、コロナ以降の回復を先取りした動きとなっている。ワクチンが効果を発揮すれば、21年はいよいよオリンピック開催の可能性が出てきた。



「まさかの一年」から何を学ぶか

 20年の新型コロナは、日本人だけでなく人類全員が「まさかの一年」だっただろう。日本ではオリンピックが開催されるはずだったのに、歴史で初めて一年延期になった。特に、体を作って準備してきたオリンピック選手にとっては、とんでもない延期だっただろう(怪我をしていた人は助かった人もいるだろうが)。この歴史的世界的な異常事態は、我々に何を教えているのか?

「常に時代は激変する」ということではないか。私が大学を卒業したのが1984年であり、20年までの約35年を振り返ってみる。VC投資によるスタートアップ事業およびIPOの成功不成功も、時代の変化が原因である。新しい製品サービスの登場と、新しい顧客による需要の拡大、さらに供給サプライチェーンとイノベーションによる提供原価の下落によって、時代が変化する。

 私が関与した35年間のIPOと株式上場を振り返ってみても、時代の変化とスター企業誕生の関連を感じることができる。



1990年代の上場体験で振り返る

 以下<歴史>と、番号が上場関与先(直近売上)だ。

<1985年プラザ合意、スーパーマリオ>

<1989年天安門事件、日米構想協議、マルタ会談、ベルリンの壁崩壊>

1.1989年11月和弘食品(売上110億円)
 天然調味料生産販売。冷蔵輸送方法の進歩により、化学調味料の時代から天然調味料が注目され、インスタント食品や冷凍食品が進歩した。

<1991年湾岸戦争、バブル崩壊>

2.1991年2月共成レンテム(売上260億円)
 建設機械レンタル。特に冬季において建設作業がストップする北海道で、作業機械の保有からレンタルへ、時代が変化した。

3.1991年10月ナガワ(売上300億円)
 ユニットハウス(スーパーハウス)の製造レンタル。現場事務所のボックス化、レンタル化が進んだ。

<1993年EU発足、野党連合政権発足>

4.1993年5月土屋ホールディングス(売上300億円)
 住宅建設。建材と建設方法の標準化により、住宅建設にイノベーションが起きた。

5.1994年3月アインファーマシーズ(売上3千億円)
 調剤薬局。医療サービスにおける医薬分業の大構造改革が進んだ。バブル崩壊の影響を受け上場が一年延期された。


6.1994年3月アークス(売上5千億円)
 食品スーパー。モータリゼーションの進展と情報革命によって流通革命が進展し、地方のスーパーがチェーン化して巨大化広域化していった。


<1995年阪神大震災、サリン事件、住専破綻、NETSCAPE上場、インターネット広がる、96年橋本内閣発足>

<1997年アジア通貨危機、山一拓銀破綻、アマゾン上場、ポケモンヒット>

7.1997年10月ジャパンケアサービス
 介護サービス。高齢化社会の進展によって、介護保険制度ができ、巨大な介護業界が誕生し発展した。


<1998年NTVP発足、有限責任組合法、 WINDOWS98>

8.1998年7月PALTEK(売上300億円)
 FPGA半導体のプログラム設計・販売。プログラマブルな半導体の登場によって、電子機器のスマート化が進展した。その15年後ザイリンクス、アルテラが大発展。


<1999年iモード開始、新興市場IPO>



2000年代の上場体験を振り返る

<2000年ドットコムバブルと崩壊、2001年小泉政権、ブロードバンド普及>

9.2000年9月イメージワン(売上30億円)
 人工衛星データ活用。宇宙事業の自由化進展。


<2001年同時多発テロ>
<2004年GOOGLE上場>

10.2005年2月DeNA(売上1200億円)
 ゲームアプリ、スポーツ。携帯、スマホの劇的進化と普及により、アプリ時代が到来した。


<2006年ホリエモン事件、Wii発売>
<2007年iPhone新発売、アリババ香港上場、ふるさと納税出来る>

11.2007年7月アステリア(売上30億円)
 XMLソフトウェア開発。インターネットにおける情報交換のスマート化(Web2.0)、クラウド化が急激に進展した。


<2008年リーマン事件、プロピア破綻、これ から5年間の上場低迷期突入、2009年民主党政権誕生、Android>

12.2009年エイケアシステムズ(上場中止)
 メール広告配信SAAS。ソフトウェアのSAAS化が急激に進んだ。リーマンショックIPO不況で上場断念した。



2010年代の上場体験を振り返る

<2010年中国GDP日本抜き世界二位>
<2011年東日本大震災>
<2012年フェイスブック上場、第二次安倍政権、IPO審査見直し>

13.2012年10月日本コンセプト(売上120億円)
 物流液体タンクコンテナ保有運用レンタル。液体タンク物流のスマート化。東日本震災で活躍。

14.2013年3月プレミアムウォーター(売上450億円)
 珍しい天然水のスタートアップ。東日本震災などで、安心安全な飲料の宅配、サーバー利用が進んだ。ストックモデル。

15.2014年6月ジャパンケーブル上場中止
 CATVへのコンテンツ販売。アナログのデジタル化で業績好調だったが、役員の労務問題で上場直前で中止。


<2016年ポケモンGOブーム>
<2018年仮想通貨バブルと盗難事件>

16.2018年6月IPS(売上65億円)
 フィリピンの5G等通信サービス。スマホの普及による発展途上国における通信サービスの急激な進展。インフラストックモデル。

17.2019年6月ブシロード(売上330億円)
 萌え系デジタル・エンターテインメント、プロレス事業。声優等萌え系事業の急速な発展。


<2020年新型コロナ拡大と東京オリンピック延期、DX進める巣ごもりデジタル改革>



経済環境の激変に乗る

 こうやって自分が関わった上場プロジェクトを10年単位で振り返ると、時代によって活躍する株式会社が劇的に変わって行っていることがわかる。創業しても成果が現れず上場できない場合や、成果が伴っても上場できない場合もある。上場した会社もまた、活躍したり低迷したり、時代の波に洗われている。投資するときにVC内部の調整が出来なくて苦労した案件も多いし、上場後も株価評価に経営の実績が伴わない状態や、経営の実態が豊かになっているのに株価がついてこない状態など、市場には「実態と評価のギャップ」が存在し、調整に苦しむこととが常である。(「市場の株価はミスターマーケットが形成し、彼は天才でないし、必ずしもスマートであるわけでない」、と言われる。)

 スタートアップの成功は、それぞれ起業家がパイオニアとして新しい時代を切り拓いて行った経営努力の要因ももちろんあるが、環境が激変する時代の大潮流に乗った要因が大きいように思う。時代を切り拓いているとも言えるし、新時代の追い風に乗っているとも言えるのだ。この時代変化の激流は、我々を飲み込み、生活に大きな変化をもたらす。

 今回20年の新型コロナが世界に大変化をもたらしたことは疑う余地がない。まさに歴史的な激変である。とすれば、この激変によって大きな活動への追風が吹いたはずであり、新しいスターが生まれる絶好の環境ともいえるだろう。時代についていけないで過去を懐かしんでいる者には、時代が仕事をさせてくれないであろう。

 青少年向けの起業体験プログラムも、20年は感染防止のため模擬店の出店が出来なくて、「ECサイト立ち上げ体験プログラム」にせざるを得なかった。自分たちでECサイトを構築して、ネット銀行に管理口座を作り、それを運営し、SNS販促して好業績を目指す。これはこれで、新しい発見がいくつもあり、つまりコロナのお陰で、プログラム進化の機会を得た。新しい潮の流れを学び発展につなげる方法は、身近なところにいくらでもある。コロナを苦しむのではなく、新しい時代の流れを読んで、引き続き積極的にスタートアップの経営活動を進めていこう。




■著者略歴 
日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合代表 村口和孝《むらぐち かずたか》 
1958年徳島生まれ。慶應大学経済学部卒。84年ジャフコ入社。98年独立、日本初の独立個人投資事業有限責任投資事業組合設立。06年ふるさと納税提唱。07年慶應ビジネススクール非常勤講師。19年松田修一賞受賞。社会貢献活動で、青少年起業体験プログラムを、品川女子学院、JPX等で開催。投資先にDeNA、PTP、IPS、グラフ、電脳交通、APTO等がある。



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