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トピックス -企業家倶楽部

2020年12月26日

日常の住空間が生み出す新たな価値/ルームクリップ代表取締役社長 髙重正彦 Masahiko Takashige

企業家倶楽部2021年1/2月合併号 モチベーションカンパニーへの道 46


だれもが気になる家や部屋の問題。一番身近な空間であるが、誰かが教えてくれる訳でもない。ホームセンターや大型家具店、雑貨店などに行っても、作られた空間の中で見るものはどこかリアリティを感じられない。普通の家の普通の空間こそが、誰もが知りたい「リアルなお手本」なのだ。住生活領域に特化したSNSを展開し、独特のコミュニティづくりを行うルームクリップ。髙重正彦社長に事業への想いと今後の展開について話を伺った。(文中敬称略)

自身の経験から生まれたルームクリップ

 2011年春、東北地方を中心に未曽有の被害を引き起こした東日本大震災。福島県いわき市出身の髙重の自宅も激しい揺れに襲われた。幸いにも両親や自宅は難を免れたが、様々なことを考えた結果、両親は自宅を手放し、転居することを決めた。長く生活をしていたが、部屋の中の写真など、思い出の記録が残っていないことに、喪失感を覚えた。この時の気付きが事業を起こすきっかけとなる。

 私たちは日々の生活の中で、人の家の中を見る機会はどれくらいあるだろうか。子どものころであれば、友達の家に遊びに行き、家の中で遊ぶことはあっても、大人にもなるとなかなかそのような機会もないだろう。また、自宅の家の写真や部屋の写真を撮ることも少ない。それはあまりにも日常だからである。何気ない日常の部屋の中や暮らし方をインターネット上で共有できるサービスがあれば、振り返ることもできるし、日常の記録にもなる。

 髙重自身、ソーシャルメディアに関する研究を行っていたこともあり、既にそのようなサービスがあるのではと思ったが、そういったものがなかった。髙重は自らルームクリップの開発に着手し、12年5月、サービスの提供を開始した。



たどり着いたユーザーのリアリティ

 サービスを提供し始めた頃と言えば、ちょうどスマートフォンが普及し始めたタイミングである。「狙ったわけではない」と髙重は言うが、良いタイミングであった。それまでであれば、デジカメで撮影した画像をパソコンに取り込んで、アップロードするという面倒な工程を経なければ、情報発信をすることはできなかった。しかし、順調に投稿数が増えたかと言えば、予想とは大きくかけ離れ思ったように投稿が集まらなかった。投稿が集まらなければ見る人も集まらないという悪循環であった。

「最初の4年はどうやって投稿を増やすかということばかり考えていた」と当時を振り返る。ユーザーターゲットイメージも明確になっていたわけではなかった。使っている人たちはこういう人たちであろうと想像はしていたが、そこにリアリティが備わっていなかった。その様な中で、サービス提供を開始してから、サイトを観察していると、少数ではあるがしっかりと使ってくれているヘビーユーザーの存在が見えてきた。そこで、髙重はそのユーザーたちと実際に会い、話を聞いてみることにしたのだ。

 そのユーザーたちの投稿する部屋の写真はどれも素敵で、インテリアを勉強したことがあるのではないか、インテリアが趣味でそこにお金を掛けているのではないか、インターネットに強い人ではないかと、様々な想像をした。しかし、実際に会った人たちは、普通に生活をしている主婦の人が多かった。インテリアをやっているという感覚ではなく、日々の生活の中で家や部屋の中を、「家族や自分のために少しだけ居心地の良い空間にしたい」と思ってやっていたら、投稿した写真のようになっていたというのである。自分が想像していたユーザイメージとはかけ離れていた。

 さらに、彼女たちの話を聞いていると、彼女たちが日々行うちょっとした片づけや飾りつけは、家の中では見過ごされがちで、誰も気づいてくれない。しかし、ルームクリップに投稿すると、多くの「いいね」や「お手本に私もやってみた」という反応があり、自分が何気なく行っている家の中の工夫が「誰かの役に立っている」という点に、彼女たちは喜びを感じ、ルームクリップにはまっていったことが分かったのである。リアルなユーザー像をつかむことでサービス自体の光明が見えてきたと言っても過言ではない。



大切な世界観

 先にも述べたように、家の中を人に見せるということはハードルが高い。ましてや、自分なりにやってみたもののアップするまでの自信はない。そんなユーザーに対して同社が大切にしてきたことは、多様なあり方を肯定すること、ユーザー自身の工夫を肯定することだった。一般的なSNSでは、よほどの有名人でなければいきなり多くの「いいね」が付くことはない。その点、ルームクリップでは、新しいユーザーが注目を浴びるような導線やプロダクトの設計をしている。また、プラットフォーム内に「ルームクリップマグ」というメディアを持っていて、このメディアに紹介されると、ユーザーに通知が届き、そのユーザーの投稿が記事に掲載されたということが分かる。さらに、出版社とユーザーが投稿した実例写真を使った雑誌を作るなど、新しい人を呼び込む施策ではなく、いかに既存ユーザーに喜んでもらうかを大切にし、確実にユーザー数を伸ばし、投稿写真数を増やしていった。



つながりの深さを追求

 ユーザー数が数十万人に達し、投稿写真数を着実に伸ばしてきた中、いかにマネタイズ(収益化)をするかという問題にぶつかる。単純にページ内に広告を貼ったりもしたが、それがユーザー満足に繋がるかと言えばそうでもない。漠然と企業と何らかの形で取り組んでいくだろうと思い、様々な企業とコミュニケーションを取ってきた。しかし、まだまだ、サイト自体の認知度も低く、現在のようなユーザー数までなっていなかったため、話を聞いてくれるところは少なかった。その様な中、住宅設備建材メーカーの製品を使っているユーザーの投稿イベントを開催することになった。その結果、多くのユーザーがその製品の「リアルな利用シーン」を投稿してくれた。しかも、どれも素敵に使われているものが集まったのである。このことが、多くのクライアントを獲得していくきっかけとなったのである。

 今では、月間最大800万人のユーザーが訪れ、400万枚以上の実例写真が集まるまでに成長したルームクリップ。今後更なる成長のために、ルームクリップ上で企業が商品を販売することができる「ルームクリップショッピング」を21年春に始める予定である。ユーザー同士のつながりを深化させると同時に、ユーザーと企業もつながることができるプラットフォームへの進化を遂げ、更なる成長のため株式上場に向けて邁進する同社から目が離せない。



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