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2021年09月03日

【第2部 アップルの強さの秘密】引越し業界をDXで変革

企業家倶楽部2021年9月号 特集 アップル特集

【第2部 アップルの強さの秘密】引越し業界をDXで変革


【第2部 アップルの強さの秘密】引越し業界をDXで変革


文字の机に高く積まれた利用者からのアンケート。その一つ一つに目を通すのが文字の日課となっている。引越しスタッフの気持ち良い対応、細かな気配りに対する感謝のことばが多く並ぶ一方で、対応に対するクレームをいただくこともある。文字はクレームを「ご指摘」と呼ぶ。「ご指摘をいただけることはありがたく貴重なこと」と捉え、同じ過ちが起きないように対応していく。利用者から「リッツカールトン並みのホスピタリティを持つ」とまで言わせ、高いリピート率を誇る同社の強みに迫る。( 文中敬称略)



強さの秘密1 引越し業界をDX



業界にイノベーション

自分自身が引越しすることを考えてほしい。一般的には、ネットで引越し業者の情報収集を行い、数社に電話で家族構成や大まかな荷物の情報、引越し希望日時などの情報を提供する。最終的には訪問見積もりとなって、家に来て見積書の提示を受ける。「他社さんの見積もりを取っているなら、いま決めてくれるならそこより安くしますよ」というようなやり取りが行われる。一言でいえばとても煩雑である。若い女性であれば、見ず知らずの人を家に招き、見積もりをするということに抵抗感を持つ人もいるであろう。その様な煩わしさから解放してくれるシステムが業界初スマホ引越し予約システム「ラクニコス」である。24時間365日WEB上で引越しの見積もりと予約を完了できる画期的なシステムである。年齢、性別、部屋の間取りなど、100万件にも上る今までの膨大な引越し見積もりデータを活用している。画面の流れに従って、必要情報を入力していき、引越し日時まで確定し、決定料金が表示される。よくある「概算価格」の表示ではない。

 「10年ほど前から構想は持っていた。単純にお客さまの立場で考えると、無駄な時間を使わせていると疑問に思っていた」と常に顧客視点で考える文字ならではである。メリットは顧客だけではない。いま現在、同社が扱う引越しの2件に1件がラクニコス経由という。多い月で3千件が人手を介さずに入ってくると、単純計算で営業30人分に該当する。大きなコスト削減につながっている。 資金力が豊富な大手が作っていても良さそうであるが、それをしてこなかったのには何らかの理由があるのかもしれない。このシステムを生み出した原点は自社のためでなく、あくまでもお客のメリットのためである。だからこそ、このシステムを作り上げたと言える。



オリジナル引越しERP

 スマホ引越し予約システム「ラクニコス」以外にも、IT 化が進んでいる。2017年1月から運用を開始し、バージョンアップを重ねてきた同社オリジナルの「引越しERP(統合基幹業務システム)」である。引越し業界に長くいる文字にとって、多くの課題が見えていた。その一つが非効率な運営である。未だに紙を用いアナログな運営をしている中小の引越業者がほとんどという現状がある。

 その問題を痛感していた文字は2016年に元Uber Japa n 代表の塩濱剛治を社外取締役に迎え入れる。文字の頭の中にあるイメージを具現化し、IT を利活用することで引越し業界にイノベーションを起こしているのだ。文字にとっては、やりたい姿を実現するための道具に過ぎないのであろうが、業界にとっては大きなイノベーションである。

 文字は言う。「人がやると誤入力など、どうしてもミスが発生する。この小さなミスがお客さまに迷惑を掛けることになってしまう。スタッフは悪気はないのです。この状況を改善したかった」いかにも、お客と仲間のことを思う文字らしいエピソードである。


オリジナル引越しERP

強さの秘密2 お客に真摯に向き合う姿勢



NPSⓇ経営

 NPSⓇとは「ネット・プロモーター・スコア」の略である。米国の大手コンサルティング会社「ベイン・アンド・カンパニー社」が2003年に発表した顧客ロイヤルティを測るための指標である。顧客が企業や商品・サービスに対してどれだけ愛着や信頼を持っているかを数字で分かりやすく表したものである。

 NPSⓇを簡単に紹介すると、「アップルの引越しを友人や同僚に薦める可能性はどれくらいありますか?」というアンケートに対して、0から10で回答してもらう。0から6を批判者、7・8を中立者、9・10を推奨者の3つに分類。推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPSⓇとなる。様々な業界で用いられているが、引越し業界でこの指標を採用し、公表しているところは他にはない。

 NTT コム オンライン・マーケティング・ソリューションがホームページ上で公表している数値を見てみると、代理店型自動車保険部門の業界平均値はー47.5、その他の部門の業界平均を見てもマイナスが普通となっている。その様な中、同社の2019年8月から2020年7月までの数値は73.6となっている。同社の数値が驚くべきものであることが分かる。

 さらに、同社のホームページを見て驚くのは、お客からのアンケートをすべて公開している点である。その上、点数、年代、家族構成、エリアを絞って検索することができるようになっている。実際に低い点数で検索すると、お客からの手厳しいご指摘の入ったアンケートもすべて見ることができる。本来、1件でも多く仕事を取ろうとするのであれば、このような自社にとって都合の悪い情報は掲載せず、良い評価ばかり掲載するところは多くみられる。しかし、同社にはそのような姑息な発想は全くない。とにもかくにも公明正大の一言に尽きる。すべてのアンケートを公開するのは、それだけ、真剣に引越しに取り組み、お客さまと向き合っている証拠である。そこには、文字と同社が本気で業界を変えようという気持ちを垣間見ることができる。



明快な評価制度

 同社の企業理念は「引越しを通じて、ひとつでも多くの笑顔を生み出し笑顔溢れる世の中をつくること」である。最も重きを置いている指標は売上でも利益でもなく「全社NPSⓇ」と明言している。引越しスタッフの評価と報酬は「個人NPSⓇ」、支店長の評価と報酬は「支店NPSⓇ」といった具合にすべてNPSⓇで決まる。お客が同社のサービスを利用し、満足し、誰かに薦めたいと思うには、その引越しを通じて笑顔が生まれなければ、NPSⓇは上がることがない。スタッフの笑顔一つ、挨拶一つ、荷物を運ぶ動作一つが理念、目的に直結している。

 「お客の評価=スタッフの評価」という明快な評価制度となっていることで、自身が携わった引越しのアンケートを見て、評価されている点、ご指摘をいただいた点をすぐに確認でき、それをすぐに伸ばすことも改善することもできるのだ。アンケートは社内で誰もが見ることができるようになっているので、お客が何を喜び、何にがっかりしているかも一目瞭然である。

 「最初からスコアを意識するスタッフはそれほど多くないです」と言う。しかし、スコアというはっきりした指標があることで、最初は単にいいスコアを出したいと言うだけだったスタッフも、徐々にどうやったらお客を喜ばせることができるかを考えるようになり、興味を持って仕事に臨むようになるという。明確な指標と評価があることがスタッフの働きやすさに繋がり、モチベーションに繋がっていると言える。だからこそ、引越しという肉体的には大変な仕事でも誰もが「引越しって楽しいです!」と笑顔で言い切れるのだ。その笑顔はきっとお客にも伝わっている。


明快な評価制度

文化の浸透のために

 創業当初から理念があった訳ではなかった。2006年に創業し、売上は順調だが社内の雰囲気が悪く、自らも悩んでいた時期があった。その様な壁にぶつかっていた時に先輩経営者から気付きをもらい、2009年に経営理念、クレドを自ら作った。現在は経営理念、ビジョン、バリュー、そしてクレドが整備されている。

 「引越しは千差万別。すべてをマニュアルにすることはできない」と細かなマニュアル作りを早々に諦めた文字。大切なことは、「お客と向き合う姿勢だ」と語る。その姿勢の根幹をなすのが経営理念である。引越し現場では突発的なことが発生し、その場で考え、解決していかなければならない。その時に、会社のためでなくお客のために、自分に何ができるかが問われている。

 その為に経営理念の浸透に愚直に取り組んできた。毎日行われる朝礼、研修、ありとあらゆる場面で、「なぜこの理念なのか」「なぜお客さまを笑顔にしたいのか」伝道師のように伝えてきた。文字自身も今でも壁にぶつかった時にはクレドを見返し、自分自身を奮い立たせることがあるという。名古屋エリア統括部長の永田はクレドを「人としてどう生きたらいいかという教科書」と言う。人を磨くことで、サービスが磨かれ、お客の笑顔に繋がる。若いメンバーから自然と理念、クレドの話が出てくる。文字にとって、これほど力強いものはない。



強さの秘密3 外部の知見の利活用



英知を結集

 文字の頭の中には引越しに関するすべてのことが入っている。課題ややりたい事も明確に頭の中に描かれている。それを実現するときにうまく活用しているのが外部の人材である。「文字さんは引越し業界で何をやるべきかが明確になっていて、それを実現するために業界以外から学んで引越し業界をより良くしようという意識を感じる」と、親友であり、ビジネスパートナーでもあるプロフェッショナル人材のシェアリングサービスを提供するサーキュレーション社長の久保田雅俊は語る。

 実際に、同業他社に比べてはるかに先を進んでいるIT 化だが、ラクニコスの構想は一度頓挫した経験を持っている。「自分自身がIT に精通していない部分もあった」と潔く当時を振り返る。久保田と出会い、話をする中で、外部人材の活用という新しい方法を知った。文字はまずは試してみるところがある。「来る人がどの方も素晴らしい方が多かった」と、外部人材の活用に対してより一層前向きになった。

 経営戦略、新規事業立案、アプリの開発、人事関連など多くの分野で外部人材を活用してきた。「文字さんは丸投げするのではなく共に創り上げていくタイプの経営者。明確なビジョンを持って話をしつつ、プロ人材の話を素直に聞き、その上、自分で勉強しながら実行し、判断することができる。それによって、プロ人材もどんどん文字さんに惹きこまれ、巻き込まれていく。結果として、プロジェクトがうまくいく」と文字の経営者としての能力、人間力を高く評価する。業界内の問題をしっかりと捉えながら、外部の経験、知見を活用し問題解決に繋げている。

 あえてすべてを自前の社員でやる必要はないと考えている。文字の求めるレベルの人材を採用することの難しさやコスト、何より、うまくいかなかったときのリスク。それらを考えたときに外部人材をうまく活用することはとても合理的であり、同社の成長、発展に大きく寄与していると言える。



気づきの場

 文字にとって、自分自身の学びの場、また外部経営者仲間とスリランカの世界遺産シギリヤロックの前での知見を得る気づきの場として欠くことのできない場が、世界的な創業経営者の集まりであるEO(起業家機構)の存在である。もともと、人付き合いは得意ではないという文字。異業種交流会など外部の人と付き合うなら社内の人間に時間をかけて付き合うほうが良いと思っていたという。しかし、壁に当たった時に、外部の研修や業界団体などに顔を出すようになり、その中でできた人のつながりでEO に入会したのは2016年のこと。「14歳から働いてたので学校時代の友人と言うのもいない。経営者になってからの友達も基本いなかった」と言う文字だが、EO のフォーラムの仲間は、経営者としても尊敬でき、友人と言ったら真っ先に名前が上がるほどのいい出会いだった。ちなみに、この特集の5部に登場するメンバーはすべてEOの仲間である。

 現EO Tokyo 会長でもあるサーキュレーションの久保田は、「自分の成長に対してしっかりとした前向きな危機意識を持っている。」と言う。今まで得ることのなかった知識、体験を貪欲につかんでいこうとしているようにも見える。「EO の集まりに参加した後は、アイディアの発散に驚かされる。良い刺激を受け、違う視点に気付くなど、現状に甘んじることなく積極的に外部との接点を持ち、吸収できるところは吸収しようという姿勢は真似るべきところです」と言うのは執行役員社長室長の鈴木邦康だ。文字自身が外部から得る刺激と知見で成長しようとする姿勢は、社内にもいい影響を及ぼし、それが会社の成長につながっていると言える。


気づきの場

強さの秘密 4 文字のリーダーシップ 



誠実で正直

 「真面目」「小さなことでも全力で取り組む」「誠実」「気遣いと気配りが素晴らしい」「面倒見が良い」今回のインタビューを通して、誰もが口を揃えて言った言葉である。Waqoo 社長の井上裕基は、「文字さんのことを悪く言う人を見たことがない」と言う。また、法人営業チーフの石田麻美は「社長は誰よりも社員を愛している」と言い切る。

 背中を見せて人をぐいぐい引っ張て来たが、スタッフの数も増えてきて試行錯誤を重ねながら人の育成に力を入れる。「ミドルの育成が課題」と社内の幹部は口を揃える。そこにメスを入れるべく、最近始めたのがその名も「社長塾」だ。自ら参加を希望する者に対して、隔月1回終日かけて行う。どういう思いで仕事をしているか、何のためにやっているのか、そもそも生きるとはどういうことか、といった人としての根本的な話をしている。丁寧に語り掛け、時間を共有することで意識改革が進んでいくと感じている。

 鈴木は「うちの会社の最大の強みは社長の文字です」と言う。その文字の想いを受け止め、全社一丸となって、「引越しを通じて、ひとつでも多くの笑顔を生み出し笑顔溢れる世の中をつくること」という経営理念(目的)を愚直に行っていけば、同社の目標である2034年の500億円はさほど難しくない。経営者仲間の誰一人も「文字さんなら必ず達成できる」と太鼓判を押す。

 文字は言う。「お客様を喜ばせること、お客様の笑顔が、リピート、紹介を呼ぶ。そのことが従業員の笑顔をつくる。お客様と従業員の笑顔が増えれば、数字は自ずと伸びてくる。みんなが喜ぶ仕組みをつくること、その事こそが会社の成長の原動力となる。信念にそぐわないことはやらないし、人に言えないことはやらない」誠実で正直な商売で目標に突き進む文字の活躍に注目したい。


誠実で正直

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