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トピックス -企業家倶楽部

2021年09月01日

【第1部 アップルの未来戦略】引越しを通じて「笑顔」が溢れる世の中にしたい

企業家倶楽部2021年9月号 特集 アップル特集

【第1部 アップルの未来戦略】引越しを通じて「笑顔」が溢れる世の中にしたい


【第1部 アップルの未来戦略】引越しを通じて「笑顔」が溢れる世の中にしたい


「引越しはクレーム産業」、そんなこれまでの常識を変えたいと本気で取り組む企業がある。アップル引越しセンター社長の文字放想(もんじ・ゆきお)は、「お客様が喜ぶことだけを考える。そこがブレないことが重要」と本質論で語る。スタッフは利用者から感謝されたら嬉しい。そこに『笑顔』の連鎖が起こる。理想を掲げるだけにとどまらず、顧客満足度を数値化し人事評価まで一貫性のある仕組みを創り上げ、ゼロから売上高30億円の企業へと成長させた。14歳から引越業界に身を投じた稀有な企業家の世界観に迫る。(文中敬称略)

何のために働くのか

 2021年7月19日(月)午前9時、東京都中央区東日本橋にあるアップルのヘッドオフィスにて、毎朝恒例の朝礼が始まった。朝礼は各支店や部署でも同様に行われる。30秒の瞑想後、社長の文字放想が経営をする上でもっとも大切にしている企業理念「引越しを通じて、ひとつでも多くの笑顔を生み出し笑顔溢れる世の中をつくること」をスタッフ全員で唱和する。

 会社が大切にしている価値観を社員全員で共有するために朝の忙しい時間でも惜しまず費やすのがアップル流の企業文化醸成の取り組みである。引越しの現場はその場で判断しなければならないことが多い。社員が現場で判断に迷ったときに原点に戻って意思決定できるようにと文字がクレド(信条)にまとめたブックがある。

 一日一条との想いから31条からなる「クレドブック」を全社員に配布。その日は19日であったので、19条「事実は変えられないが、考え方は変えられる」のページを開き、実際に身に起こった具体例を引き合いに出し、社員の理解力を高めるように語り掛ける。

 最後に部署の参加者一人ずつ最近感じた「良かったこと」をエピソードを踏まえて簡潔に話していく。何気ない気付きや関心事を自己開示することで隣で働く人物の人柄が垣間見られるという効果がある。一緒に働く仲間から関心を持ってもらうことは何事にも代えられないインセンティブになるのだ。文字は社員たちの表情を見ながら、自然と笑顔になっていく。僅か10分ほどの朝礼だが、重要なコミュニケーションの場となっている。どの社長も社員が楽しく仕事をしているか気になるものだ。何気ない会話の中にも社員たちの機微を感じているのだ。

 「引越し」は単に荷物を運ぶだけの仕事ではなく、顧客の新しい人生のスタートに立ち会うことになる。それは就職や転勤、結婚や子供が生まれ家族が増えたからといった重要な節目であることが多い。だからこそ、「スタッフにも引越しという機会を通じて、顧客がどうしたら笑顔になるか考え、顧客に喜んでもらうことで自らも幸せになってほしい」と文字は願っている。文字の究極の目標は、引越し業を通じてそこに関わる人々を幸福にし、世直しすることなのだ。



引越しベンチャーの挑戦

 新年度に替わる3月・4月は新生活を始める人が多く引越しシーズンと言われる。進学や就職など人生で初めての引越しとなる人もいるだろう。マンションの前に大きなトラックが駐車し、エレベータに本当に入るのだろうかというほどの大きな家具や家電を器用に運んでいく。素人にはとても真似は出来ない力仕事だ。長年の経験から得た引越しの技術がそこにはある。

 頻度は高くないが、人生で何度かは経験する「引越し」。一体どのくらいのマーケットがあるのかというと、日本の人口が2008年をピークに減少したことで世帯数も頭打ちになり、毎年微減ではあるが、市場規模は約4000億円と言われている。最大手はサカイ引越センターで売上高は約900億円、アートコーポレーションが約700億円、ハトのマークとアリさんマークが約200から300億円規模と続く。これら大手数社で市場の50%を占めており、売上げ数億円から100億円未満の中小企業が全国に約250社あり、残りの市場を分け合っている状況だ。

 そんな中、アップルは今期売上高30億円を見込んでおり、引越専業企業ではすでにトップテンに名を連ねている中堅企業といえる。

 「2025年までに売上高100億円、2034年までに500億円を目標にして、日本一の引越屋になります」と文字の鼻息も荒い。

 マンションの1室とトラック1台から始め、創業から15年の平均成長率は30%と高く、業界大手のハードルと言われる売上高100億円が見えてきた。物流業界は慢性的な人手不足から近年では「引越し難民」なる言葉も生まれた。その様な逆風が吹く中において、社員数は230名を超え、東京を中心に大阪・名古屋・福岡・札幌と全国に支店を増やしながら現在も成長を続けている。引越市場はイノベーションが起こることもなく、今後も高い成長が見込めない成熟産業であるが、その中で独自の接客サービスやIT活用を打ち出し頭角を現してきた同社のトップとは一体どのような人物か見ていこう。


引越しベンチャーの挑戦

14 歳から自立

文字は1984年神奈川県川崎市生まれの現在37歳と若いが、社長歴はすでに16年あるというから驚く。21歳で同社を起業したのだが、それまでの人生が波乱万丈でユニークなので紹介しよう。 中学入学まではスポーツ万能で至って真面目な少年であった。しかし、ここで青少年特有の転機が訪れる。反抗期である。悪びれたい年頃で夏休みに悪友たちと過ごしていると2学期からは学校に行くよりも遊んでいる方が楽しくなり、不登校になった。

 しかし、遊ぶにも金が要る。小遣いでは足りなくなり、働こうと考えたが年齢制限があり案の定どこも雇ってはくれない。そこで年齢を偽って面接を受けると小さな引越屋が雇ってくれた。これが文字と引越し業界との関りの始まりである。

 最初は遊ぶ金を稼ぐためのアルバイトだったが、働き始めるとどんどん夢中になっていった。重くて持てなかった荷物が運べるようになった。出来なかったことが出来るようになり、成長が実感できると仕事が楽しくて仕方がなかった。同級生が高校進学を考える15歳の頃には、すでに文字はチームリーダーとして現場を回していた。

 20歳までは知人から誘われた会社を手伝ったこともある。休みなんて要らなかった。どこも小さな会社だったので、人手が足りず現場だけでなく、営業から経理まで何でもやらなければならなかった。今ならブラック企業として問題になるレベルだが、年間休日も5日から10日ほどで、とにかくがむしゃらに働いたが不思議と苦に思うことはなかった。

 働けば働いただけ業績も上がり、収入も増えた。1つの事業部を独立採算制で任され月収も100万円と好条件であった。ある時、一時的に赤字になる月が出た。オーナーに報告すると「社員の給料を下げろ」という。

 「人はいつか辞めるから、それまでこき使った方が得だ」と心無い言葉を浴びせられた。

 社員に対する考え方、仕事観のあまりの違いに失望し、落胆した。文字は会社を去った。

 失意の中、仕事を辞めた文字はしばらくの間、貯金を切り崩しながらやり繰りしていた。しかし、そんな生活は長くは続かない。家族を養うために選んだ仕事は、文字に働く楽しさを教えてくれた「引越し」であった。


14 歳から自立

誠実に正直に

 2006年5月、文字が21歳の時、神奈川県横浜市でアパートの一室を借り、中古のトラック1台からのスタートであった。アップルの起業である。生活費を稼ぐために必死になって働いていると順調に業績は上がっていった。

 会社設立から3年間は売上げも倍増で3億円になる頃、組織に歪みが出てきた。俗に言われる「30人の壁」である。社員も順調に増え、営業所を増やし、ちょうど目が届かなくなるタイミングであった。社内には「数字を出していたら何してもいいだろう」という空気が蔓延していた。今までに無かったような「モノが壊れている」、「スタッフの態度が悪い」といった利用者からのクレームが増えていたのもこの頃だ。

 同じタイミングで社員からは会社に対する愚痴も増えていった。「給料が少ない」、「会社は分かっていない」といった不平不満が噴出した。文字が初めて経験したピンチであった。

 文字にとって、休みがないほど忙しく働くことは苦にならなかったが、一緒に働く社員たちとの心のすれ違いは耐え難いほどつらかった。

 「毎日、もう今日で会社をやめようと思い詰めていた」と文字は当時の心境について話す。

 悩みを解決するためにこれまで読まなかったビジネス書を読み漁ったり、助言を求めて業界団体や異業種交流会に参加した。そして、ある先輩経営者からの言葉が胸に刺さった。

 「何のために会社はあるのか?人生の目標はあるのか?」

 生活費を稼ぐという会社設立時の目的はすぐに達成してしまい、その先の目標を考えていなかったことに気付いた。その日から人生の「目的」は何か、仕事を通じて何を成し遂げたいのか「目標」について考えるようになった。

 文字は以前、オーナーから浴びせられた言葉が忘れられなかった。自らの長い現場の経験から、社員から搾取するような会社には絶対にしたくないと考えた。心の底から自社のサービスが素晴らしいと顧客に対して言えないような仕事はしないと決めた。「誠実に正直に」が文字の信条である。

 アップルの企業理念を「引越しを通じて、ひとつでも多くの笑顔を生み出し、笑顔溢れる世の中をつくること」と定めた。



マニュアルよりも「考え方」

 引越し業は、シンプルに表現すると家財道具をA地点からB地点へ運び、その費用を頂く仕事である。故に利用者はなるべく安い方が得だと考える。これまでの引越し業界では、遅延なく、モノを壊さないことに重点が置かれてきた。スタッフの応対の善し悪しまでは細かく求められてこなかったのだ。

 しかし、文字はスタッフが利用者の要望に応える気遣いが重要だと長い現場の経験から学んできた。テーブル一つの置き場所でも、「もう少し窓側に寄せましょうか?」といった一言声掛けして確認することで、丁寧さが伝わるという。少ない会話の中にも信頼関係を生み、「また利用したい。家族や友人にも推薦したい」といった評価を得られることに繋がる。

 「ある意味期待されていなかった分、お客様に配慮して、一生懸命仕事をしているだけで評価してもらえる幸運な仕事です」と文字は笑顔で話す。

 利用者も千差万別なら、スタッフの性格も十人十色であるので、顧客対応のノウハウをマニュアル化するのは不可能に近い。そこで文字はマニュアルを作るのではなく、「考え方」を重視した。それが冒頭に先述したクレド(信条)であり、毎日朝礼で唱和しスタッフに浸透するようにしている。

 一人の人間として、どうあるべきか。文字のモットーである「誠実に正直に」をどう具現化するのか。スタッフの一人ひとりが客とどう「向き合う」かを考えるその取り組みこそ、アップルの強さの源泉となっている。

 さらに同社の成長を支えているのがヤル気のある若い社員たちだ。同社では年功序列の人事は採用しておらず、顧客満足度の高い社員が評価されるという人事評価が貫かれている。年齢が年上だからといった人事はない。むしろ若い人に挑戦する機会が与えられる。支店長の立候補制度はその良い例だろう。「まずはヤル気がある人にチャンスを与え、経験させること」と文字は言う。実力主義の職場は言い訳ができない厳しさがあるが、血気盛んな若者は数字で示されると自然と競争し、切磋琢磨しながら成長していく。主体性がある人の方がハングリー精神があり、「学び」が多いことを文字は知っているのだ。

 「引越しは臨機応変に対応力が求められる仕事です。現場を上手く仕切れる人間はどんな仕事をしても通用すると断言できます。引越しは誇れる仕事です」と文字は真剣な眼差しで語る。


マニュアルよりも「考え方」

業界のゲームチェンジャー

 ある意味、引越し業界は差別化が難しい市場であるといえる。新居に荷物を運ぶというシンプルさゆえ、競合する企業のサービスに大差がなくなり、利用者は分かりやすい価格にのみ目が行ってしまう。すると企業は価格を抑えるために人員を減らしたり、早く現場を片付けて次の現場へ移ろうと仕事が雑になってしまう。構造的に悪循環に陥っていた。

 そこにアップルは風穴を開けようとしている。価格を下げるためには生産性を上げるしかないが、人員を減らしたり、スピードアップで数をこなすやり方ではなく、見積書提案から受注、人員手配、配車までをIT活用し、可能な限り自動化した。利用者は専用アプリで営業時間を気にせずに好きな時間に見積もりを取り、引越日を予約できるというメリットがある。スタッフは電話で見積もりを取る場合、平均で20分から30分を費やす。そこから見積書を作成し提案する。それが一日に数件あると受注した後も膨大な事務処理が残り負担となっていた。IT導入によるシステム化は同社の生産性を著しく向上させた。

 これによって生まれた時間で、スタッフは現場で顧客に対してより付加価値を与える対応が出来るようになった。社員はユーザーが喜んでくれることに集中し、その結果はアンケートにより集計され、そのまま人事評価に反映される。

 「若いからと言って機会を与えないのはおかしい。私は若い人にこそチャンスを与えたい!」

 たまたま引越し業を生業としたが、「目的・目標」を持った人づくりをすることで世の中をよくしていきたいと文字は夢を語る。

 2034年、文字が50歳になるまでに売上高500億円を達成し、「日本一の引越会社」を目指し邁進する。引越業界に誕生したゲームチェンジャーから今後も目が離せない。


業界のゲームチェンジャー

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