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2015年05月29日

たとえパルミラが破壊されようと歴史は紡がれる

企業家倶楽部デスク 相澤英祐


 イスラム過激派組織IS(イスラム国)が21日、シリア中部の都市パルミラを制圧した。25日までに少なくとも400人の市民が殺害されたとする報道もある。

   パルミラは紀元前1世紀よりシルクロードの要衝として発展し、2~3世紀にはローマ帝国支配下で栄えた。その時代の遺跡はユネスコの世界遺産にも登録されているが、偶像崇拝を禁止するイスラム教の考えに則り、イスラム国によって破壊されるのではないかとの懸念が現在高まっている。

   同様のケースでは2001年、当時アフガニスタンを統治していたタリバン政権が、世界遺産である同国北東部バーミヤンの古代遺跡群を破壊した事件が記憶に新しい。

   無論、現代的な価値観に基づけば、こうした破壊が蛮行であることは間違いないし、歴史的な遺産が損傷するのは残念な限りだ。尊い遺産を俗事の道具に成り下がらせるような偏狭なナショナリズムや不寛容な原理主義に陥ってはならない。

   しかし、広く歴史を見渡すと、人間は同様の行為を繰り返し続けてきた。万が一、今回パルミラの遺跡が破壊された場合、国際世論はイスラム国の蛮行を嘆き、一斉に非難するだろう。だがそれは、1856年に勃発したアロー戦争において、北京に侵攻した英仏連合軍が清国皇帝の離宮であった円明園を破壊し尽くしたことと変わりがあるだろうか。1220年、チンギス・ハン率いるモンゴル軍が、中央アジア最古の都市であり、イスラム文化の中心として栄えていたサマルカンドを完全な廃墟に変えたことよりも重大事だと断言できようか。

   確かに、今や遺産を守るという観点から停戦を求めるような時代である。そうした現代に生きるからこそ、イスラム国による施策の時代錯誤感は否めないが、歴史的遺産の破壊という結果のみを考えれば、その時代背景や動機は関係無かろう。

   なにも、過去の出来事を蒸し返して議論しようというのではない。むしろ言いたいのは、500年、1000年という長い目で見れば、現在国際社会で行われている諸事も大河の一滴でしかないのが明白だということである。

   2000年以上前にローマと戦って完膚無きまでに打ちのめされたカルタゴが、地上から姿を消してもなお、代々伝承された記憶と文字による記録として「生き残って」きたように、歴史はいかなる破壊をも包含して紡がれる。そして、その事実に対する客観的な解釈は、一切利害関係の無くなった後世の歴史家にしか成し得ないだろう。



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