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2015年09月14日

ワタミの身売りに思う

企業家ネットワーク記者 辻村香澄


   9月10日、外食チェーン大手のワタミが2004年から参入していた介護事業から撤退すると、日本経済新聞をはじめ各メディアが報じた。ワタミは、それら報道で述べられていることは決定した事実ではないとしているが、その業績を見ればあながちありえない話だとも思えない。2015年3月期連結決算で128億円の最終赤字を計上。主力の外食事業をはじめとして宅食・介護の主力3事業の損益が悪化したことが原因とみられる。

   かつては外食産業を中心に業界を引っ張ってきたワタミだが、2008年に起きた新入社員の過労自殺はセンセーショナルに報じられ、それ以来ブランドイメージは大きく傷ついた。実態はどうであれ、世間からはブラック企業というレッテルを貼られ、客足が離れたことも業績低迷の一因であることは間違いないだろう。

   しかし、外食事業に関しては他にも原因があるように思う。昨今の居酒屋業界において、ワタミに限らず居酒屋チェーン全体の競争力が弱まっている。顧客のニーズが変わってきているのだ。

   特に若者の居酒屋チェーン離れは深刻だ。2012年に厚生労働省が行った国民健康・栄養調査によれば、20代で飲酒習慣がある者は男性14.2%、女性3.3%に止まり、上の世代と比べてアルコール離れが進んでいると言えよう。飲酒が一番の目的であった居酒屋が流行らないのも頷ける。

   居酒屋を離れた若者のニーズは二極化したように思う。コンビニやスーパーでお酒やつまみを買い、家に持ち込んで飲み会を開く「宅飲み」が一つ上げられよう。外食するよりも安価に、自分の好きなものを好きな量飲み食い出来るというので、若者を中心にひとつの飲み会の形として徐々にその地位を確立してきた。

   もう一方で若者が外食産業に求めているのは「特別感」だ。御伽噺の世界や監獄などの非日常空間をモチーフにしたテーマ居酒屋や、お洒落な雰囲気の中でおしゃべりを楽しめるカフェ等の利用が増え、チェーン居酒屋を脅かしている。せっかく外で食事をするならば、個性があって後々話題に上げられる店かどうかが、今の若者にとって重要な判断材料なのだろう。

   ワタミをはじめとするチェーン居酒屋はこの二極化するニーズの狭間で苦戦を強いられている。若者の嗜好の変化を捉え、単に酒を飲む場所としての居酒屋から一段階上の場所を提供出来るか。それが、現状打破の一手となるだろう。



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