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2015年10月05日

欧州移民問題は他人事ではない

企業家ネットワーク記者 辻村香澄


   最近、中東からの移民問題が欧州を騒がせている。移民が欧州に押し寄せる様子や各国の対応が写真や映像を伴って連日センセーショナルに報道され、それが今や欧州だけの問題ではないことは誰の目から見ても明らかだ。

   報道を見ていると、「移民」「難民」という言葉が混在していることに気がつく。1951年、国際連合全権委員会議で採択された難民条約では、「難民とは、人種、宗教、国籍、および政治的な理由で迫害される恐れがあり、母国を逃れたもの」と定義されている。一方「移民」は、生活や仕事のために自分の意思をもって自国を離れ他国へ移り住む人々と言えるだろうか。しかし、細かい規定は各国さまざまだ。ここでは「移民」と表記を統一する。

   国連人口基金によれば、2013年時点での世界の移民数は、世界人口の3.2%、2億3200万人。現在、シリアをはじめとする中東・アフリカからの移民対応に追われる欧州では、今年の移民流入数が既に50万人を超えた。これは昨年1年間の移民流入数の2倍以上に当たる数だ。受け入れに前向きだった欧州の人々も、ここまで急速に数が増えると思っていなかったのではないか。

   こうした混乱の中で、移民政策に乗っ取り受け入れ態勢を取る国もあれば、ハンガリーのように隣国との国境に有刺鉄線を張り1000人規模の警官隊を配置するなど、流入への対抗策を実施した国もある。国境を越えようとした移民に催涙ガスや高圧放水を行ったと報道され、こうしたハンガリーの動きには世界中から批判の声があがった。国連の潘基文事務総長も「難民条約に従った対応を要請している。ハンガリー政府の対応は容認できるものではない」と述べた。

   困っている人がいたら助ける。それが人道的に当たり前のことだと言うかも知れない。しかし、こうも考えてみるべきだ。「もし自国に移民が押し寄せてきたら、自分たちの生活はどう変わるか」。一度自分のこととして思考をめぐらす必要がある。

   それでも日本に暮らす身としては、一連の欧州での問題を見ても海の向こうの話だと思うだろうか。しかし、日本も欧州に違わず危機はすぐそこに迫っている。

   2014年の在留外国人数は約212万人。この中には移民のみならず、数年間の出稼ぎ目的で就労滞在している「外国人労働者」も含まれているため、日本の移民流入率は決して高くない。しかし、2014年3月、政府が移民の大量受け入れを本格検討し始めたことをご存知だろうか。その背景にあるのは日本の人口減少。そして、それに伴う生活水準の低下および労働力の不足だ。

   内閣府の人口の将来推計によれば、出生率など変化せず現状のままいけば日本の人口は2060年に約8700万人、2110年に4300万人まで減少する。2030年までに合計特殊出生率が現状の1.42%から2.07%まで回復したとしても、2060年の推計人口は9800万人と減少は止められない。その対策として打ち出したのが移民受け入れである。移民を年間20万人ずつ受け入れたとすると、2110年でも1億1000万人程度を維持できる。

   しかし、この計画は政府の思惑通りに行くのか、疑問が残る。欧州もかつて同様の政策を取った。その結果が、昨今ニュースで見聞きする光景である。

   移民はあっという間に数を増やす。受け入れた人々がみんな手に職を持ち、共存していく社会が作れたならば、移民受け入れによる人口維持政策は大成功だったと言えるだろう。しかし、世界に視野を広げてみると、言語や習慣の違いなどがネックとなり職に就けない生活保護受給者の増加や、町の移民街化、治安の悪化など、様々な問題が併発している。そうなった場合、日本国民が払っている税金が使われるようになり、人々の日々の生活にも影響が出ることは間違いない。

   欧州で積極的に移民受け入れをしていた国々では、移民大量流入によって上記のような問題が表面化し、国民からの反対運動などが活発化している。各国は今後どうして行くべきか、決めかねているようにも見える。

   人口減少対策や労働力確保のために年間20万人もの移民を受け入れるという判断は、長期的な視点から、果たして日本国民に価値をもたらすのか。欧州で起きている出来事を他人事だと思わず、日本の未来の可能性と照らし合わせながら行く末に注目したい。



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