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2016年01月15日

リーダーは教養を身に付けよ

企業家倶楽部デスク 相澤英祐


 昨夏、文部科学省が発表した国立大学人文学系の組織再編に関する通知文が波紋を呼んだのを覚えておられるだろうか。

   同通知の中にあった「各大学の強み・特色・社会的役割を踏まえた速やかな組織改革に努めることとする。特に、教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については(中略)組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」という部分が、「国立大学の文系学部を廃止し、他学部へ転換する」という意図と取られ、学会からは人文軽視との不満が続出。論争が巻き起こり、上を下への大騒ぎとなったのだ。

   この問題は海外でも取り上げられ、ウォールストリート・ジャーナル紙アジア版も、「日本政府が理系人材を欲しがる産業界の意向を受け、人文・社会科学系の教養教育を犠牲にして国立大学の見直しを進めている」などと報じた。

   文科省の説明によるとこれは誤解で、あくまで教員免許取得を卒業条件としない、いわゆる「ゼロ免課程」の廃止を主眼に据えたものということだが、言葉足らずだったとの向きが強い。

   ただ、文科省による不備の有無は別として、文系学部の廃止という事態が起きてもおかしくはないという風潮があるからこそ、このような「誤解」が生じたのだろう。仮にそうした可能性が微塵も無ければ、むしろ「ただの誤植」のような扱いとなり、ここまでの論争に至らなかったのではないか。

   かく言う筆者も文系学部の出身だ。歴史を専攻していた身として、政治や経済、経営といったいわゆる実学を学ぶ他学部の学生から、「ものの役にも立たない歴史や文学など学んで何になるのか」と詰め寄られたことも。特に、起業しかり、ビジネスリーダーを目指す学生は、「今すぐ使える」学問を重視する実学偏重の傾向にある。

   確かに、文学や歴史学、哲学は、直接的には金儲けの役に立たないかもしれない。理系学部のように特殊な技術を習得して仕事に繋げられるわけでもない。しかし、人間の真理を学ぶ人文系の学問は本当に不要だろうか。

   あらゆるビジネスにおいて、相手取るべきマーケットとは人の総体だ。また、企業にとって欠かせない社員も、少なくとも今のところは人間である。そして、良くも悪くも人間は数字だけで動くような合理的かつ簡潔な存在ではない。これを動かそうという時、人に対する理解が必要になるのは自明のことだ。

   今回問題となったのは、国立大学の文系学部が対象の通知だったことが大きいだろう。東京大学をはじめとする国立大学は、私立大学以上に日本国家を背負うリーダーの育成機関として存在しており、むしろ教養教育こそ重視すべきところ。それが誤解とはいえ「文系廃止」などという説が流れたとあっては、学会が紛糾するのも当然とも言える。

   心からリーダー――それも世界で戦える――を目指すならば、国際理解を深め、文学、哲学、歴史学といった教養も身に付けねばなるまい。



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