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2016年05月13日

インターネット時代を象徴するパナマ文書事件

企業家倶楽部デスク 相澤英祐


 パナマ文書が世界中に衝撃を与えている。同文書は、パナマの法律事務所モサック・フォンセカによって作成された機密文書群。同事務所は30万社を超える取引企業を抱えるが、その大部分がイギリスの持つ海外領土のタックス・ヘイブン(租税回避地)に籍を置いているという。

   タックス・ヘイブンは元々、国家経営に必要な資源の乏しい島国などが、様々な課税を著しく軽減または完全に撤廃することで、国際貿易の拠点として発展できるように編み出された制度だ。

   しかし現状では、多くの企業や富裕層が密かにこうした非課税地域へ資産を移すことにより、本国の課税を免れている。個人や企業が自身の名前を明記してしまうと都合が悪いため、登記はされているものの事業活動などの実態が無い「ペーパーカンパニー(幽霊会社)」を親族など近しい関係者の名義で設立し、そうした企業を利用して節税・脱税を行うのが一般的だ。同様の方法は、マフィアや闇商人などの資金洗浄にも使われるので、良いイメージを抱く人は少ないだろう。

   むしろ、真面目に税金を納めている一般市民からすれば、たとえ法律的には合法かグレーゾーンであっても、富裕層がこうした方法で税金から逃れていると聞いて気分が良いわけがない。

   パナマ文書の記載は各国の首脳陣にまで及び、大きな波紋を呼んでいる。アイスランドでは、資産隠し疑惑の浮上したグンロイグソン首相が辞任に追い込まれた。その他、イギリスのキャメロン首相、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席をはじめ、世界の有力者たちが名を連ねる。

   一方で、現時点では日本人の名前はあまり目立っていない。日本関連の記載は400件あり、名だたる大手企業が50社以上も挙がっているが、マスコミの報道は消極的なように感じる。事態が1社ないし数社程度の関わりであればまだしも、今回のパナマ文書には相当数の大企業が含まれるため、大々的に報じてしまうとスポンサー契約などに支障をきたすのかもしれない。

   もう一つ、日本の政治家の名前が挙がっていないというのも解せない。これは私の勝手な憶測に過ぎないが、正直、誰も関与していないわけはなかろう。公的資金を私的に使って叩かれる政治家が後を絶たないくらいだ。日本政府としては文書を調査する考えは無いそうだが、いつ自分の名前が槍玉に挙がるか戦々恐々としている議員も少なくないのではないか。

   今回の事件では、流出した文書自体の内容もさることながら、インターネット時代の恐ろしさが改めて浮き彫りになったと言えよう。文書流出の引き金となったのは、国外からのハッキングだという。これだけの極秘情報ならば、サイバー上のセキュリティも甘いはずがない。しかし、それを上回る技術力の持ち主に出し抜かれたわけだ。

   数年前、政府、企業、宗教団体に関する機密情報の公開を目的としたウェブサイト「ウィキリークス」が様々な重大情報を暴露して話題となったが、今後はこうしたハッキングやサイバー攻撃による情報流出事件が頻発するだろう。

   IoT(モノのインターネット)時代の到来が取り沙汰されているように、様々なセンサー、カメラ、機器から収集されたビッグデータが複合的に結び付くことで、世の中はどんどん便利になっている。金融の分野でもフィンテック(Financial Technologyの略)企業が注目を集めるなど、効率化が進む。

   しかし、多くの人やモノがインターネットに繋がるほど、サービスを利用する個人、そして提供する企業には情報セキュリティの強化が求められるようになる。今回のパナマ文書事件とて、他人ごとではない。当事者の言葉なので信憑性は高くないが、文書に載っていたある会社の社長は、「自社の名前を勝手に使われて、まさに青天の霹靂」と驚く。彼の言説が本当かどうかは別として、事実そうしたことがあっても全くおかしくはない。

   例えば、産業スパイと言えば密かに機密情報を盗むといったイメージが一般的だが、悪い情報を捏造して競合他社を貶める方法をとっても不思議ではない。そうしたスパイは、自身の匿名性を保ったまま虚偽のリークを行うことで、敵対する企業に疑惑を植え付ける。火の無い所にも、煙は立てることができるのだ。

   極秘情報の漏洩、そしてその後の速やかな拡散、さらに憶測が憶測を呼んでのバッシング。これらはインターネット時代を象徴する出来事だろう。C2Cビジネスやクラウドソーシングの躍進を見れば分かる通り、インターネットが個人の力を強め、多くの領域で平等を生み出すのは事実。力を得た個人が、これまでは触れられずに秘匿されてきた権益や資産を明るみに引きずり出せば、「本音と建前」の境界線は脆くも崩れ去る。そんな時、すぐに黒と決めつけず、まずは冷静に信憑性を確かめる情報リテラシーも、私たちは持っておかねばなるまい。



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