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2016年06月25日

英国、EU離脱へ、なるか自信の回復

梅上零史


 英国の欧州連合(EU)離脱の是非を巡る国民投票が実施され、6月24日に結果が判明、離脱賛成票が51.9%と過半数を獲得した。英国は今後2年かけてEUから脱退することになる。この結果を受けてポンドやユーロは急落し、世界の為替・株式市場に動揺が走った。日経平均は前日に比べて1300円安と記録的な下げ幅となった。

「我々は再び自分たちの声を世界に見出すことができる。世界第5位の経済にふさわしい声を」。EU離脱キャンペーンを率いたボリス・ジョンソン前ロンドン市長は国民投票の結果を受けてこう語った。離脱派の主張はブリュッセルに本部を置くEUからの主権回復だ。とりわけ移民対策でEUのルールに縛られない英国独自の政策が打ち出せる。ジョンソン氏は辞任を表明したデービッド・キャメロン首相の後継者として急浮上している。

   EU離脱を巡る国民投票は、残留派であるキャメロン首相が保守党内の離脱派をなだめるために打ち出した。ジョンソン氏やマイケル・ゴーブ司法相ら離脱派は保守党の4割強を占める。国民投票で残留への信任を得て、権力基盤を固める。そうしたキャメロン首相の思惑は完全に裏目に出た。

   残留派の主張は、英国がEUを離脱すれば関税が復活しEU単一市場への輸出が制限される。貿易に負の影響が出たり、海外からの直接投資が減少したり経済にマイナスの影響が出るというものだ。一方、離脱派は米国や中国などEUより高成長国との貿易協定を独自に結ぶことで、貿易に関してもプラスの効果があると反論する。しかし多くのエコノミストは英国の経済成長の低下を予想し、離脱派の主張に説得力を感じていない。

   今回のEU離脱騒動は170年前の“事件”を想起させる。1846年の穀物法廃止だ。ナポレオン戦争後、英国には欧州大陸から安い小麦などが流入した。そこで輸入穀物に高関税をかけ、国内農業を保護する目的で制定されたのが穀物法だ。しかし食料価格の引き下げを求める産業資本家や労働者は穀物法廃止の国民的な運動を展開した。

   1846年、アイルランドの飢饉などの影響もあり食料価格が高騰。時の首相ロバート・ピールは地主階級の多い保守党内の反対を押し切って穀物法を廃止した。結果、ピールは後に首相となるベンジャミン・ディズレーリら保護主義派に保守党から放逐された。今回のキャメロン首相はピール首相と違って自分の意思を通すことはできなかったが、保守党分裂の危機を招いた点では状況は似ている。

   穀物法廃止は英国の自由貿易体制確立を象徴する出来事とされる。産業革命以来、繊維製品を中心に工業分野における国際競争力で、英国は欧州大陸の国家と比べて頭一つ抜け出た存在となった。国内農業を犠牲にしても、工業製品で世界市場を得る自信があった。実際、自由貿易の推進で19世紀、英国は大英帝国を構築し覇権国となった。

   穀物法廃止の時代、英国人は世界に打って出る存在だった。あれから170年、今回のEU離脱の決定には移民増加阻止など何か守りの内向きの姿勢がにじみ出る。発言力の回復は自信の回復につながるのだろうか。マーケットは自信を喪失してしまったようだが。



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