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編集長インタビュー スーパーホテル会長 山本梁介 後編

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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銀座に新コンセプトのホテルオープン(2018)

銀座に新コンセプトのホテルオープン(2018)

経営理念の徹底

問 ビジネスホテルはシティホテルに比べて宿泊費が安価であることが魅力です。しかし、他社との差別化は価格競争だけではありません。スーパーホテルが支持される理由はどこにあるのでしょうか。

山本 弊社ではスーパースターということで、3スターホテルの価格でおもてなしは5スターを目指しています。そのためには出来るだけ業務のIT化を図り、対人の接客に注力出来るようにしています。顧客の喜びが自分の喜びと感じる人材を育てることに全精力を注いでいます。業務のIT化も進め、感動の接客も同時に追い求めていきます。


問 特に注力しているポイントはどこですか。

山本 経営理念の徹底です。いつも話していることですが、理念とは絶対に正しいというものではありません。会社として「こういう方向を向いていきましょう」ということです。それに合わない人はモチベーションが上がりません。企業理念に納得し、理解して一緒に働くのか、自分の考えに合わないのであれば、船を乗り換えてもいいのです。

「我々はこういう価値観でお客様に喜ばれ、社会に貢献しよう」とお互いに確認し合うのが経営理念です。経営理念が浸透しないと、楽しく、スピード良く仕事ができません。少し気を許すと、どんどん従業員の数が増えていき、伝わりにくくなります。

 そこで毎日、経営理念を読むだけではなくて、一人ひとり理念の順番を決めておいて、どう考えて、どう取り組んでいるかを発表してもらう。それに対して、役員、社長、私が「その考え方はちょっとおかしいよ。ここは考えてもらったら良いんじゃないか」「それは素晴らしいね」「もっと深くやってください」というようにコメント返しをしています。


問 具体的に効果は出ていますか。


山本 一人ひとりに発表の場を作ると、自分が発表する中身を一生懸命考えるようになりました。発表とコメント返しの繰り返しですが、人の話を聞く、自分で考える、実際に実行するという習慣が生まれ、一石三鳥になります。

 さらに弊社では、上司と部下が月に一度「チャレンジシート」と「ランクアップノート」を使い、じっくり話し込む文化があります。


問 海外にも店舗がありますが、いかがですか。


山本 国内だけでなく、海外の店舗でも企業理念の徹底に力を入れています。というのは、当初生産性の高い仕組みだけを海外に持ち出してやってみたのですが、うまくいきませんでした。

 極端な例ですと、日本の研修制度は優秀と知っているので、現地に帰ると給料の高い会社に転職する人もいました。ですから、長いスパンで考えると理念共有が大切だと考えるようになり、仕組みや数字に頼りすぎてはいけないことを知る良い機会になりました。人数が増え、組織が大きくなっても、理念を中心とした会社経営を心掛けていきます。

拡大よりもエクセレント

問 今後の目標を聞かせてください。


山本 24年までに200棟という目標を立てていますが、拡大するとエクセレントが落ちてきます。顧客へのサービスレベルを保ちながら店舗を増やしていきます。

 ビジネスマンは出張であるなら、商談を成功させなければなりません。ぐっすり就寝して、仕事に神経を集中して頂きたい。店舗のレベルアップを図るため、「ゴールド作戦チーム」を組織しています。各店舗のお客様満足度ランキングが出るので、評価が低迷している店舗にはゴールド作戦チームを派遣し、現地で確認して緩んでいる点を締めにいきます。

「以前泊まって良かったので、他の店舗も使ってみた」という声を頂きます。枕の好みなど、顧客の情報を一元管理出来ていることが弊社の強みと言えます。今回、銀座でオープンしましたが、他の店舗をご利用したリピーターの方が多くいらしています。

 リピーターの期待値が上がることはありがたいことで、それによって私たちの意識も上がっていきます。

 国内では都市部だけでなく、地方創生も課題です。人口が少ない街には収益が見込めず、全国区のホテルチェーンは進出しません。しかし、私たちは地方にホテルを建てる。お客様に特産物を見に来て、泊まって頂かなくてはお金が落ちていきません。社会問題を解決しながらビジネスとしても成立するように努力して、地方の産業が育つように活性化の支援をしています。


問 今後の課題は何ですか。


山本 今はどのようにして次の世代に仕事を任せていくか取り組んでいるところです。私がいなくても会社が回るようにしたいと思います。若い人の中には感性が立派なものがあると認めています。後は人間力を磨いていくと、もっとスケールが大きくなると思います。人間力とは、人に感謝する気持ちではないでしょうか。その気持ちがあれば周りの人の協力も得られ、会社も成長していきます。


P r o f i l e

山本梁介(やまもと・りょうすけ)

1942 年大阪府生まれ。64 年慶応義塾大学経済学部卒業後、蝶理に入社。67年に家業である繊維商社に入社。1996 年福岡にスーパーホテル1号店を開業し、1997 年より現職。2013 年第15 回企業家賞チャレンジャー賞受賞。2014~18年、J . D . パワー「ホテル宿泊客満足度調査」にて5年連続1位を受賞。

(企業家倶楽部2019年1・2月合併号掲載)
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