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【コロナ禍の注目ビジネスPart2】エイチ・アイ・エス リモートエクスペリエンス本部部長 八幡正昭

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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オンラインツアーで旅を革新

オンラインツアーで旅を革新

(企業家倶楽部2021年7月号掲載)

 真っ青な空にきらめく青い海心地よい風に身を任せ、ヤシの木陰でまどろむそしてカラカウア通りでのんびりショッピング・・・「ああーハワイに行きたいな!」などと悶々としている方が多いことであろう。

 
 行けるんです!

 但しオンラインツアーです。

 2020年4月の緊急事態宣以降、実質的に海外旅行はストップ状態を余儀なくされている。そこで登場したのがオンラインツアーである。

 エイチ・アイ・エスでは2020年4月から導入、今や約8万人が参加している。その仕掛人として活躍しているのが、リモートエクスペリエンス本部部長の八幡正昭氏である。
 
 2020年コロナ真っただ中の、エイチ・アイ・エスニューヨーク法人責任者を務めていた八幡氏。感染防止措置として、各国が続々と入国制限を発令するのを目の当たりにして「一瞬にして海外旅行の市場が消えた」と、実感したという。

 ではどうやって事業を継続するのか。そこで考えたのが実際に行かなくても旅行気分を味わえるオンラインツアーであった。

 米国は日本よりも「Zoom」の使用に慣れており、「これはいける」と確信したという。そして2020年7月に帰国。リモートエクスペリエンス本部を立ち上げ、本格的に取り組むこととなる。

世界72 か国と地域が舞台

 エイチ・アイ・エスのオンラインツアーのサイトを覗いていただきたい。世界一周旅行、ケニアのサファリパーク、世界三大瀑布体験、スペインのバル巡りなど、さまざまなコースがずらりと並ぶ。その数1260という。このサイトを見ているだけで、どこに行こうかとワクワクする。

 数あるツアーの中で、一番人気は世界一周という。6月26日に催行するのは、世界5都市から同時中継する「世界一周ライブツアー~エジプト→スペイン→シンガポール→イグアスの滝→ペルー(クスコ)/アメリカ(ニューヨーク)~」だ。HIS現地スタッフやガイドがリアルタイムで案内してくれる。「ケニア・ナイロビ国立公園サファリライブツアー」も人気だ。現地ガイドと一緒にサファリツアーに出かけるが、その時によって出会える動物も異なる。それこそが「ライブ感満載で楽しい」と評判だ。またインドの有名占い師によるオンライン占星術&手相占いツアーも女性たちに人気という。

 食文化やグルメに関心がある人には「パリからオンライン チーズセミナー」もある。地元の人チーズ店の久田惠理さんによるオンライン・チーズセミナーは、チーズ5種が届くコースと視聴のみがあるが、現物付きのコースはあっという間に完売になった。

 居ながらにして参加できるのだから楽しい。世界72か所の国と地域に拠点を持つエイチ・アイ・エスだからこそ可能となるリアルタイムツアーといえる。

 これは海外だけでない。日本国内ツアーも人気という。この春は桜の開花と共に、日本を縦断する桜リレーが人気を呼んだ。また地方の酒蔵巡りも人気のコースだ。店主の酒造りに対する熱い想いを聞くだけでなく、その酒蔵自慢の酒を購入することもできる。実際に品物が届けば、理解も深まり美味しさは格別であろう。

 コースのアイデアは世界の絶景から名所旧跡、美術館巡り、街歩きにショッピングと枚挙にいとまがない。スタッフからは常にアイデアラッシュで、年内には2000コースを目指すと八幡氏。

旅の常識を変える

 アフターコロナで、実際に行けるようになったらオンラインツアーは無くなるかというとそうではない。オンラインで下見をして実際のコースに参加すれば、その国や土地の文化への理解が深まり、旅の楽しさが倍増する。何よりも身体的に行けない方々に、自宅に居ながら旅を楽しめる機会を提供することはスゴイ。

 オンラインツアーは「下見してから実旅行に参加する」という新習慣を提案するものであり、実旅行に行けない方に「誰でもお茶の間から参加できる」という新しい可能性を拓いてくれた。まさに旅の革命といえる。

 海外旅行中心に事業を展開するエイチ・アイ・エスにとって、海外渡航禁止措置は最大の痛手だ。それだけに社長の澤田秀雄氏のオンラインツアーに寄せる期待は大きい。「早く100万人、1000万人を突破せよ」と檄を飛ばしているという。

 但し旅行については経験も知見もダントツの澤田社長のこと、「ここはこうしたらいいのでは」など、現場目線でのアドバイスやアイデアには説得力があると八幡氏。

 実際2021年内に参加者累計を30万人に、そして5年後には100万人を目指すと強気だ。コロナ禍で新たな生き方を模索、さまざまな新規事業に進出する同社にとって、オンラインツアーは期待の星なのである。

 海外旅行からスタートしたオンラインツアーだが、現地とリアルで交流できるという強みを生かせば、旅行だけでなく教育産業やコミュニケーション事業など、さまざまな方面にも可能性が広がる。

 コロナ禍なればこそ生み出された新しい市場は、現地ガイドの雇用を維持すると共に、もう一つの旅の機会を提供している。この功績は大きい。

 「澤田社長が格安航空券市場を創造、それが当たり前になったように、オンラインツアーで下見をするのが当たり前という市場を定着させたい」と意気込む八幡氏。

 チャレンジ魂はエイチ・アイ・エスの原点だ。人々の新たな興味や探求心を駆り立てる「オンラインツアー」がどこまで進展するか、今後が楽しみだ。

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