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【緊急レポート】コリア・レポート編集長 辺 真一氏 

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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日本人は北朝鮮の核攻撃に備えよ

日本人は北朝鮮の核攻撃に備えよ

(企業家倶楽部2017年8月号掲載)

日本を狙う4本の矢

問 北朝鮮のミサイル実験が止まりません。

辺 私は昔から北朝鮮の脅威について警鐘を鳴らしてきました。これまで北朝鮮のミサイルは射程1500~2000kmの準中距離弾道ミサイル「ノドン」のみでした。しかし、今やノドンの他にも多種多様なミサイルが日本に向けられています。

 まずは命中精度を高めた誘導型の中距離ミサイル「スカッドER」、海に囲まれた日本を四方八方から攻撃できる潜水艦弾道ミサイル「SLBM」、止めは5月に発射実験が行われた準中距離弾道ミサイル「北極星2号」です。今日本は北朝鮮から4本の矢で狙われているのです。

問 北朝鮮の真の狙いはどこにあるのでしょうか。

辺 アメリカに到達するICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発です。もう一歩手前まで来ている。金正恩最高指導者は今年はじめ、ICBMの発射が最終段階に入ったと発言しています。北朝鮮は嘘つき国家ですが、核とミサイルの実験に関してだけは有言実行してきましたので、信憑性は高いでしょう。

 現実に、彼らは準ICBMの実験に成功しました。5月14日に発射された「火星12号」です。あれは地面から垂直に打ち上げて、上空2100kmまで到達しました。これを斜め30~45度に向けて発射すれば、アメリカのアラスカ、ハワイが射程圏内に入ります。残るはアメリカ本土、ワシントンを狙ったICBMというわけです。

問 北朝鮮は核実験も繰り返していますね。

辺 彼らはこれまで核実験を5回行ってきました。1回目は06年、長崎に落とされたプルトニウム型の核実験。2回目は09年、広島に落とされたウラン型の核実験。3回目は13年2月、小型化の実験。4回目は16年1月、水爆の実験。そして5回目は16年9月、核をより強烈に炸裂させる実験です。6回目となる今度は、それらをまとめて行う総仕上げ。1日に2~3発、何日かに分けて次々と実験するかもしれません。

 核もミサイルも、開発目標達成まであと一歩。北朝鮮は国民生活も経済も全てを犠牲にしてようやくここまで漕ぎ着けたわけですから、これを止める筋合いは無いでしょう。

戦争回避の方法はただ一つ

問 しかし、アメリカが黙ってはいないでしょう。北朝鮮に対する攻撃も有り得ますか。

辺 トランプ大統領は「核実験がレッドライン」と言っていますが、私は懐疑的です。なぜなら、北朝鮮が核を何発持ったところで、これをワシントンに落とすICBMさえ無ければ、アメリカにとって脅威ではないからです。反対に、核実験ではなくICBMの発射実験こそレッドラインなのではないかと推察しています。

 大統領が誰かに関わらず、自国の安全保障にとっての脅威は、軍事力を行使しても取り除くのがアメリカという国です。その一例として94年、トランプ氏に比べれば遥かに穏健な大統領であったクリントン氏が、核開発への懸念を理由に北朝鮮を攻撃しようとしました。北朝鮮が全米を射程内に捉えるICBMを持つとなれば、見過ごすわけがありません。

問 この流れを止める方法は無いのでしょうか。

辺 トランプ大統領が北朝鮮と取引することです。北朝鮮が核実験とICBMの発射を中止する。その代わ り、アメリカも8月に予定している米韓合同軍事演習を中止し、さらに北朝鮮に対する経済制裁も緩和する。この2対2の取引をトランプ大統領が飲めば、今年戦争は起きません。 または、北朝鮮が「これ以上核を増やさない、改良しない、輸出しない」とした上で、アメリカが「平和協定締結、国交正常化、経済支援」という3つを約束する3対3の取引も考えられます。ただ、お互いに信用していないので、この可能性は極めて低いでしょう。

北朝鮮は誰も止められない

問 現状で、中国はどのような立場ですか。

辺 中国は困っています。彼らは国連の常任理事国として足並みを揃えなければならない。かつ他国が核開発を行わぬよう、NPT(核拡散防止条約)の体制を守りたい。そのためには北朝鮮の核開発を止めるしかありません。

 しかし、今北朝鮮の核とミサイルは、自国が南シナ海で対峙しているアメリカ、尖閣問題を抱える日本に向けられています。「何のために我々が友好国である北朝鮮と事を構えなければならないのか」というのが本音でしょう。北朝鮮が中国を敵国とみなした場合、核とミサイルは北京に向けられます。中朝国境が敵対的なボーダーラインに変わることは、中国にとって悪夢でしかありません。

問 新政権が発足した韓国の対応はいかがでしょう。

辺 韓国の文在寅大統領も大きな錯覚をしています。「対話と交流をして援助すれば、北朝鮮は核ミサイル開発を断念する」と言って登場しましたが、政権発足間もなく北朝鮮が3発もミサイルを放ちました。この政権の太陽政策でも彼の国を止められないことは一目瞭然です。

問 日本の対応についてお聞かせ下さい。

辺 日本は「制裁によって抑止する」と言っていますが、これでは北朝鮮の反発を招く一方です。「なぜ日本は自国とアメリカの喧嘩に首を突っ込んでくるのか」というのが彼らの主張。ただ、日本としては日米安保条約があるので、アメリカに協力せざるを得ません。よって、中国も韓国も北朝鮮は止められない。まして、日本は論外です。

核は日本に使われる

問 ただ、アメリカも日本と韓国のことを考えれば、そう簡単には北朝鮮を攻撃できないのではないでしょうか。

辺 アメリカの安全保障は、アメリカ自身で守らねばならない。まして、トランプ氏は「アメリカファースト」を掲げる大統領です。日本や韓国に構いはしないでしょう。同盟国だから一言断りがあってしかるべきだと思ったら大間違いです。そんなことをすれば、北朝鮮に作戦が伝わってしまう。アメリカの北朝鮮に対する攻撃は、ある日突然の先制奇襲攻撃に限ります。

 肝は、8月中旬に行われる米韓合同軍事演習。これが中止となれば、危機は去ったと見て良いでしょう。もし遂行された場合、そのまま北朝鮮へ突撃する可能性もあります。かつてアメリカが行ったパナマ侵攻もグレナダ侵攻も、軍事演習という名目のまま行われましたからね。

問 北朝鮮が核を使う可能性はあるのでしょうか。

辺 アメリカ国家情報局の局長が議会で「北朝鮮は敗戦寸前にならなければ核を使用しないだろう」との予測を述べています。裏を返せば、絶体絶命の危機に陥れば使うわけです。

 だからこそ、北朝鮮にレッドラインであるICBMを撃たせてはなりません。仮にそうなった場合、アメリカは叩きます。そうなれば北朝鮮の敗戦は必至。金正恩氏が命の危険を感じた時、核のボタンが押されるでしょう。

 ただ、ICBMが完備されていない以上、アメリカには核を落とせません。隣国の韓国には核を使うまでもない。すると、どこに使うか。日本ですよ。北朝鮮が、米軍の後方基地である日本を真っ先に叩くのは当然です。

問 日本国民が取るべき策はありますか。

辺 8月中旬に米韓合同軍事演習を行うとの発表があったら、在日米軍基地、自衛隊基地、飛行場、港湾、そして大都市圏に近づかないことです。結論的には田舎に逃げるしかない。いずれにせよ、北朝鮮からの核攻撃を覚悟された方が良いでしょう。

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