会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
(企業家倶楽部2017年10月号掲載)
2017年2月14日、76歳にして、キタムラ上場後、初の業績赤字の発表をしました。当社は3月決算ですから、5月15日に赤字決算の発表とともに、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)に、約30%の株を売却することを発表しました。
上場会社ですから決算を発表するタイミングは決まっています。5月15日までは私1人の胸に秘めていなければならなかったのは辛かった。筆頭株主であり代表取締役としての決断ですから、漏れたら全部飛んでしまう。各種の準備のために約1カ月前に社長の浜田宏幸に話したときは、「わかりました」と真摯に受け止めてくれた。何十年も一緒にやっており経営の状況もよくわかっていますので。
業績不振の異変は昨年の夏からで、熊本震災以降、地滑り的な落ち込みが始まりました。熊本にはカメラセンサーのメーカーが集まっているので、カメラが作れなくなった。と同時に、写真プリントも地滑り的に売り上げ不振がおきてきた。
これはただ事ではないと実感したが、2月14日までは誰にも言えない。数カ月間トップとしての意思決定と対策をずっと考えていました。
今回の落ち込みを打開するには、私のがんばりと、写真屋人生40年、50年の経験と知恵だけでは困難。もっと視点を広げなければと考えました。そこでCCCの増田宗昭さんにお願いしました。
増田さんは10年くらい前に当社の社外取締役を務めていただいたことがあります。年に数回役員会に出てくれればいいと、増田さんの企画力、才覚を期待して頼みました。それ以来のお付き合いです。
当社は多角経営の一環として子会社で「TSUTAYA」のフランチャイジーを展開しています。10店近くあって、売上げ約50億円ですから、「TSUTAYA」のフランチャイジーとしても、かなり大きな位置づけになると思います。そんなことで増田さんとのご縁がありました。
筆頭株主だった私の株を8割近く売却しましたので、今は当社の筆頭株主は約30%の株を持つ増田さんです。30%というと実質オーナーです。
今回の決断は私個人も思い切りましたが、増田さんも赤字の写真屋に金を入れるんですから思い切った決断だと思います。当社が上場会社であること、従業員の質の良さ、マネジメントの真面目さについては、増田さんはよく知っていると思います。
写真屋が写真だけで頑張っても大した変化は起こせない。代官山T-SITEなどを成功させた増田さんの天才的な感覚、プラスα、Xを期待しています。
とはいっても増田さんが当社の経営に直接携わるわけではなく、実際には増田さんが派遣したリヴァンプの湯浅智之社長と斎藤武一郎取締役が、当社再建のため頑張っています。斎藤さんは当社に常駐してくれています。
具体的な再建策は企業秘密です。我が社は社員9000人の会社で、リアル店舗が1000店あります。魔法使いじゃないですから、アラジンのランプのようにはいきません。しかし、昨年よりは確実に良くなっています。2月14日の赤字発表をしたときに、来期は利益20億円を出すと言っているので、なんとか最善を尽くしたい。
カメラ産業が変換し、デジタルカメラ時代になって17年。よくぞここまで生き延びてきた。これからは増田さんの企画力、写真プラス増田さんの香りに期待したいと思っています。