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【トップの発信力 佐藤綾子のパフォーマンス心理学】vol.2

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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「なぜあの人は嫌われるのか?」

「なぜあの人は嫌われるのか?」

(企業家倶楽部2011年1・2月合併号掲載)

 経営者が自分の目指すベネフィットを上げていくためには、自分の組織の構成員である社員や、仕事のクライアントである社外の人々に好かれないことには、何もはじまりません。当然のことです。
 ところが、世の中の経営トップには、なぜか嫌われまくる人がいます。今回はその例を政治家にとってみると、読者の皆さんにもきっとわかりやすいでしょう。
 先日、ふと目に入った電車の中吊り広告に、「小沢一郎よりももっと女性に人気のない不人気ナンバーワン仙谷由人」という雑誌の大きな見出しが出ていました。もっともだ、とパフォーマンス心理学の立場から見て、私も内心納得しました。
 予算委員会の質問で自民党の山本一太議員から、新聞記事に書いてある仙谷氏のコメントが事実なのかどうかと聞かれ、仙谷氏はその内容には答えず、「そんなことを聞くのはおかしい、そんな質問は受けたことがない」と質問の主旨をすり替えて答え、やれその言い方はなんだと、違う討にもっていったのです。これでは山本氏から、「まったくのゴーマン、ナルシストだ」と言われても仕方がないでしょう。そのときの、メガネの奥で目だけギラリと光らせて、口元の「口角挙筋」をギュッと上げて軽蔑的スマイルをキープする表情は、ほんとうに意地悪そうに見えます。
 実は某新聞社に頼まれ、私はこのテレビでのやりとりをつぶさに観て論評したのですが、どんな質問にも答えがかみ合っていませんでした。さらに、ことばの内容と顔の表情で、損をしているのです。
 以前も仙谷氏は、ダボス会議に政府専用機で乗りつけました。「首相以外の国会議員が政府専用機で乗りつけるとはいかがなものか?」と、これまた自民党の後藤田正純議員に舌鋒鋭く、「なぜそんなことをしたのですか?  どういう理由だったのですか?」と詰め寄られました。そのときの答えも、「鳩山首相が切符を手渡してくれたのでこれを使いました」という答えだったのです。切符を手渡してくれたから使ったというのは、小学生の答弁です。「なぜ?」と聞いていたのは、仙谷氏が自分の立場、および国家の専用機についてどう考えているのか、という政治理念を問いただしたに決まっているではありませんか。
 しかも、こんな短文の答えなのに、「使いました」の部分を言うときには、彼はすでに身体の向きをさっと変え、自分の席に戻っていきながら最後の「使いました」を言ったのです。「おまえの質問は、この程度の答え方でいいだろう」という態度でした。
 人間は社会的動物です。トップこそ下の者たちとの会話や、人を受け入れる温かな顔の表情が必要です。私の「好意の総計」をどうぞ。

実験目的:日本人の初対面の相手への第一印象形成のしくみを、①言葉、②声、③顔の表情の3変数において明らかにする。

実験方法:アメリカのA. Mehrabian の[ Total liking ]の手法を原型として、日本人対象の「意の総計」を得るためのVTR 録画サンプルをつくり、これを社会人および大学生に見せて、「好意」(好き嫌い・信頼できるできない・尊敬するしない)が、①言葉(「どうぞ」、「どうも」、「ありがとう」)、②声(ボリューム、高低、速度など、言葉にまつわるすべての音声要素)、③顔の表情(幸福、嫌悪)のいずれによって決定づけられるかを調査した。(自己記入アンケートで調べる)

実験結果:3語の平均値好意の総計100% =言葉8% : 声32% : 顔の表情60%

Pro f i le 

佐藤綾子
日本大学芸術学部教授。博士(パフォーマンス心理学)。日本におけるパフォーマンス学の創始者であ第一人者。自己表現を意味する「パフォーマンス」の登録商標知的財産権所持者。首相経験者など多くの国会議員や経営トップ、医師の自己表現研修での科学的エビデンスと手法は常に最高の定評あり。上智大学(院)、ニューヨーク大学(院 )卒。連載月刊誌9 誌、著書160 冊。18 年の歴史をもつ自己表現力養成専門の「佐藤綾子のパフォーマンス学講座 」主宰(体験随時)。

連絡先:information@spis.co.jp

詳細:http://spis.co.jp/seminar/

佐藤綾子さんへのご質問はinfo@kigyoka.com

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