MAGAZINE マガジン

【社長のおしゃれ5】池田ゆう

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

企業家倶楽部アーカイブ

大人のお洒落はスタイル それをファッションとは呼ばない

大人のお洒落はスタイル それをファッションとは呼ばない

(企業家倶楽部2010年10月号掲載)

 夏の想い出。7月下旬、夏を感じさせる草花でいっぱいの中央高速を妻と愛犬を伴って山中湖の山荘に行く。妻の趣味はガーデニング。朝から1日中庭で何かをしている。しかし、いくら草花や畑仕事をしても、次の週には野生の鹿に荒らされているのに、どうも懲りることがないようだ。つまり自然の中に浸ることが楽しいのだろう。しかし、それを幸いに私は車で10分ほどのゴルフ場に向かうことが多い。

 多くの週末ゴルフ族が友人になったが、コースで熱くなってスコアにチャレンジしているのは私くらいのものだ。友人達はショートパンツにロングソックス、色とりどりのポロシャツを楽しむというリゾートゴルフそのものだ。時には「今日はスコアカードいらないよ」ということになる。夏の深い緑の中で、カートに乗って大声で語り合いながらプレーする姿は幸せそのものだ。時々、眼の前の富士山がベレー帽をかぶったような姿を見るが、夕方の雲のいたずらだ。

 ゴルフが終わって心地よい夏の柔らかい微風を感じながら、妻の迎えの車を待っていたとき、私の前を大変お洒落な男性が通り過ぎた。ネイビーブレザーが良く似合っていたが、それ以上に刺激を受けたのが、ボウタイにシルクのポケットチーフをし、しかもブルージーンズがよく似合っていた。いつかファッション雑誌で見たことがあるようなそのスタイルに、私の視線は彼の後を追った。

 そこには、もう3人程の男性がそれぞれ奥様を連れてテーブルについていた。たぶんメンバー達だろう。ゴルフ場を単にプレーだけに使うのではなく、食事会やパーティーに使うのって、まるで本場英国のクラブライフを見たような気がしたものだ。

 しばらくファッションプロの眼で彼らのスタイルを観察することにした。65歳も過ぎただろうか、少し髪も薄くなる年齢だが、先程の男性はバツグンだ。自然に胸ポケットからのぞくシルクのポケットチーフとジーンズのアンマッチングが楽しい。そのファッション感性はまさに国際的であり、私好みでもある。リゾートディナーだからこそ、こんな個性的なファッションがよく似合う。もう20年以上もベストドレッサー賞の選考委員長をしているが、過去に授賞したサックスプレーヤーの渡辺貞夫さんを思い出していた。きっと彼の好みのスタイルだろう。

 こんなファッションは若者達にはムリだ。服に負けてしまう。エクセレントなビジネスの中から自然に生まれるセンスだ。企業家のみなさんに是非オススメしたい。

「ファッション」とは流行服を着る若者たちのもの。多くの新しい体験を重ねながら大人になっていく。しかし大人は「スタイル」だ。自分の中に秘めている未知の自分を引き出し表現する。それは生き方の主張でもある。だから若者よりも大人達こそ、もっともっとセンスアップに投資すべきだと思う。きっと多くのチャンスを作ることになるだろう。決して他人に見せるためではなく、自分の生き方としてお洒落は大切なことだ。

 池田ゆう

ファッションデザイナー。ベストドレッサー賞選考委員長、(社)日本メンズファッション協会前理事長、(社)日本プロゴルフ協会学術委員。各界著名人や企業経営者の服装コンサルタントも多数手掛けている。監修したDVDに「池田ゆうの男のおしゃれ 人は見かけによるのです」がある。『あらゆる出会いの第一印象は最初の6秒が勝負!ベストドレッサー賞の選考委員長池田ゆうが誰でもできるスタイルテクニックを伝授。コツはたったの7つ!同じスーツなのに全く印象が変わります!!』

http: / / yuhikeda. com 

一覧を見る