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【著者に聞く】セコム・女性の安全委員会寺本美保氏 堀越穂波氏 

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

企業家倶楽部アーカイブ

セコム
左:寺本氏_右:堀越氏

防犯が当たり前の世の中に!「防犯・防災 ひとり暮らしのあんしんBOOK」で女子の「困った」を助けたい

防犯が当たり前の世の中に!「防犯・防災 ひとり暮らしのあんしんBOOK」で女子の「困った」を助けたい

『防犯・防災 ひとり暮らしのあんしんBOOK』だいわ文庫 (734円)

(企業家倶楽部2019年8月号掲載)

セキュリティ業界のリーディングカンパニー、セコムの「女性の安全委員会」が女性の視点でまとめた話題の一冊。セコムのノウハウがぎっしり詰まった防犯・防災の必読書。女性の「困った」を助ける202のアイデアが満載されている。


問 防犯・防災について分かりやすく網羅してあり大変参考になりますが、この本を執筆されたきっかけを教えてください。

寺本 2018年の秋ごろ、大和書房さんからお声がけいただきました。若い女性が危険な時代にあって、防犯だけではなく防災についても情報発信してはどうかと。弊社の「女性のためのあんしんライフnavi」という防犯対策のウェブサイトをご覧になったようです。

問 今の犯罪は複雑化していて、実際に何かあってもどのように行動すれば良いのか分かりません。こうやって一冊にまとめていただけるとありがたいですね。

寺本 セコムとして少しでも防犯・防災のお役に立ちたいと考えました。

問 セコム・女性の安全委員会とは何人ぐらいでやっておられるのですか。

寺本 今は4、5名でやっています。

セコム直伝のノウハウ

問 内容がひとり暮らしの防犯・防災アイデアから、いざという時のシミュレーション、ネットセキュリティなど多岐に渡っていますが、まさにセコム直伝のノウハウが詰まっていますね。

寺本 そうです。この本は私、寺本と堀越の2名の名前で書かせていただきました。07年頃から働く女性が増え、彼女たちは夜遅く一人で帰宅するため犯罪も増えてきました。セコムとして何かお役に立てることはないかと考え、この委員会が発足しました。営業でお客様に接する部署と広報のメンバーで、定期的に女性の視点に立った議論を重ねながら活動を続けてきました。

問 日本は深夜でも女性の一人歩きが多いですが、実際に犯罪は増えているのですか。

寺本 警察のデータでは減少しています。

問 それはセコムのおかげでしょうね。色んな箇所に設置された防犯カメラが活躍しています。

寺本 犯罪件数は減っていますが、細かく見ると女性が狙われる犯罪は減っていません。ひったくりや強制性交など、女性が狙われるケースは多いのです。セコムでは毎年日本人の不安に関する調査を実施しておりますが、「最近不安を感じることがありますか」と問うと、女性全体では72%の方が不安を感じています。しかし、「防犯対策をしていますか」との問いに「はい」と答えた方は20%足らずです。

問 どのように対策すれば良いのか分からないということもありますね。この本は多岐に渡っていて分かりやすい。特に力を入れたところ、読んでもらいたい部分はどこですか。

寺本 最近の傾向を見ると、SNSを介した犯罪が多くなっています。2、3年前に外国の女性に防犯対策について伺ったことがあるのですが、海外の女性と日本の女性の防犯意識の差に驚きました。最近デート・レイプ・ドラッグが問題になっていますが、海外の女性はバーでは飲み物を残したまま席を立ちませんし、その後は飲まない、または飲み干してから席を外すなど注意しています。近年はSNSで知らない人と仲良くなる機会も増えていますので、気を付けて欲しいですね。

問 日本人は人を信用しやすいですし、危機意識の低さはありますね。この本を発売されての反応はいかがですか。

寺本 おかげさまで反響をいただいています。コンパクトなサイズで読みやすいと好評です。

問 どんな方が買われているのですか。

寺本 ひとり暮らしの女性ですね。

問 もっと危機意識を持った方が良いですよね。

寺本 そうですね。共同住宅は不審者が侵入した場合、ドアやカギの形状が同じシリーズなので、一カ所入ると、他も簡単に入れてしまう。オートロックだからと安心はできません。

問 まとめるにあたってご苦労された点は。

寺本 テーマのボリュームがすごく多いので、それをいかにサクサク読めるようにするか。本が苦手な方でも読みやすいように、イラストや図を入れて工夫しました。

問 確かにイラストが豊富で読みやすい。これまでのセコムのノウハウがあればこそできたのだと思います。

寺本 そうですね。これまでの蓄積があります。私も「あんしんライフnavi」の頃から携わってきましたので、元々ノウハウがありました。

問 営業の人たちとこの女性チームとのコラボはあるのですか。

寺本 セミナーを実施しています。対象は様々で、一番多いのは女子中高一貫校や女子大です。

防犯は自分事と考えて

問 この本は女性にとって必需品ですね。

寺本 企業から福利厚生の一環として、女性社員の危機管理にお声がけいただいています。「夜お酒を飲んで遅くなった時は気を付けてください」「夏場は薄着になると痴漢が増えるので気を付けましょう」といった具合です。

問 まさに世の中に貢献していますね。今後のチームの活動についてはどうお考えですか。

寺本 やりたいことはたくさんあります。まずはこの本を少しでも多くの方に手にとっていただきたい。セミナーもどんどん開いていますが、受講された方から「受けて良かった」という生の声を聴けるのが嬉しいです。「防犯は自分には関係ない」とか、「自分は大丈夫」とは思わず、自分事として考えることが大切です。

問 防犯にも教育が必要ですね。

寺本 今、SNSがすごいスピードでバージョンアップされていますが、便利で楽しいだけでなく、裏にこういう危険があるということを知っていただきたいです。

問 SNSはもとより、全てにおいて日本人は危機管理意識が低い。こうしたことに関心のない人たちへの対策はありますか。

寺本 女性向けの防犯セミナーやイベントを開いていきたいですね。防犯のためにはふらふら歩かず、きりっとして歩いている女性を演じることが大切です。

問 隙を突かれないようにするわけですね。

寺本 夜間、怖いからと電話をしながら歩く方がいますが、電話していることで周りへの注意力が散漫になるので、ひったくりなどに狙われやすい。周りに不審者がいないか注意しながら歩きましょう。

問 危険だらけと気付くことが大事ですね。

寺本 「自分は大丈夫」と根拠のない安全意識を持っている人ほど気付きにくいので、注意して欲しいです。

問 社内でも女性チームへの期待度が高いのでは。

寺本 本を買ってお客様に配りたいという声は多いです。「セコムと契約しているから絶対安心」ではなくて、自分自身で気を付けるマインドセットを開拓していく。防犯が当たり前の世の中になって欲しいですね。防犯している女子がカッコ良いという社会になって欲しいと強く思います。

問 日本は安全な国というのが一番の財産かと思っていました。

寺本 防犯意識を考えたことがない人たちが防犯について考えるきっかけにしたい。いきなり100%ではなく、できるところから始めれば良いのです。防犯対策をしなかった結果として悲しい思いをする女性が一人でも減って欲しいと思います。

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