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【第14 回 企業家賞 記念講演録】企業家大賞 ヤオコー会長 川野幸夫 氏

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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志の高い企業をめざして

志の高い企業をめざして

(企業家倶楽部2012年10月号掲載)

 豊かで楽しい食生活を提案するスーパーマーケット、ヤオコーはここしばらく「日本一元気なスーパー」と言われています。今日はヤオコーが元気な理由についてお話いたしましょう。まず概況ですが、今年3月期の売上は2373億円、経常利益105億円。連結で20期連続増益、単体では23期増収益です。

 ヤオコーの創業の地は埼玉県小川町。ファッションセンターのしまむらと同じで、たまたまどちらも元気な小売企業です。私は企業が元気である理由は二つあると思います。それは①会社の志や理念が経営のバックボーンとして受け継がれ、行動指針となっていること。②商いのコンセプト、つまりビジネスモデルが明確であることだと考えます。

 企業にとって哲学や理念は非常に大切です。生活者の日常の消費生活をより豊かにすることで地域文化の向上・発展に寄与し、世の役に立ち、地域の喜びとなること。それが、私が家業に就いたときの目標、生きる目的です。

 小売業は変化適応業。ニーズの変化に応じてサービスや商品を提供していかなくてはなりません。それでも決して変えてはいけないものがあります。それが理念や哲学です。志の高い優れた理念や哲学が企業経営のバックボーンとしてあるということは、長いスパンで着実に発展するための要素なのです。

 人間は一人では生きていけません。だから「おかげさまで」と言われる会社になり、「おかげさまで」と言われる働き方をしよう。私はいつも社員にそう言い続けています。“パートナー”と呼ぶパートも含め全社員が理念を理解して行動の指針にし、商売に全員参加しているからヤオコーは元気なのです。

 日本は戦後、高度成長を遂げ、物のありあまる時代を迎えました。私が子供の頃の生活は“十人一色”でしたが、今は“十人十色”、さらには“一人十色”の時代です。生活のシーンが多様化、個性化、高度化したため、その“色”ごとにしっかり対応しないと満足してもらえません。つまり専門店化し、その分野のプロになることが求められているのです。

 そもそもスーパーの商品には、機能があればいいコモディティ商品と、好みやライフスタイルによって使うライフスタイル商品があります。すなわちスーパーも①価格に価値を置く価格訴求型のコモディティ・ディスカウント型と②商品が価値である価値訴求型のライフスタイル・アソートメント型の二つに分かれます。ヤオコーは②のライフスタイル・アソートメント型スーパーです。

 当社は食事という生活シーンでの課題解決の手助けを提案する“ミールソリューション”を充実させています。食文化が発達した日本ではみな舌が肥え、健康への関心も高まっています。ヤオコーが強みを発揮する生鮮やデリカは日持ちがしませんが、それはつまり、お客が頻度高く買い物をするということであり、商圏が狭くなるということです。そこでヤオコーでは正面に「マーケットプレイス(=市場)」という看板を掲げています。これは、ある町の中央広場の市場でありたいということ。これがヤオコーの商いのあり方です。

 お客によって好みが違い、しかも商圏が狭いスーパーでライフスタイル商品を商うということは、店によってニーズが微妙に異なるということでもあります。そのため「個店経営」がヤオコーのライフスタイル。店にはきめ細かく考えて商売をしてもらい、本部はあくまでもバックアップのサポートセンター。そんな役割分担をしています。

 その「個店経営」も全員参加です。特にパートナーのがんばりがヤオコーの元気さの一番の理由でしょう。主婦が多いパートナーは家庭の食事の主役である上、知識や経験、さらに地域の情報も持っています。優秀な潜在能力に教育研修や技術訓練で磨きをかけ、お客のことを考えて、しっかり仕事する。そんなヤオコーのパートナーさんは日本一です。

 したことに対してお客からの反応があり、自らの意志で働く喜びを感じられるのが小売業の楽しさです。パートナーら社員のがんばりに応えるためにも、これから生産性ももっとアップして、経済的待遇も他の業界に負けないようにしたい。そして人が日本一働きたい、日本一元気に働ける企業にしていきます。

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