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【私の信条】ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長 柳井 正

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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真っ当に生きる

真っ当に生きる

(企業家倶楽部2013年1・2月合併号掲載)

 

 私は小さい時、「山川」というあだ名が付いていた。人が山と言えば、反対の川と言うのである。別に天邪鬼ではないが、自分の考えをはっきり述べる性質(たち)らしい。自分で物を考え、自分で納得しないと、気が済まないのである。

 決して奇抜なことを考え、言っているわけではないが、他人様からは過激なことを言っているように見えるらしい。本人は真面目に考え、正論を吐いているだけなのだ。物事を真正面から考え、解決策を考えているにすぎない。真っ当に生きたいと考えているだけなのである。

 ところが、世の中には真っ当に考え、行動する人が少ないように思う。たとえば、国債残高が950兆円強になっているのに、いっこうに減らないどころか、2013年には1000兆円とGDPの2倍になるところまで国の借金が膨らんでしまった。このままでは、あと3年ぐらいで、日本は沈没するだろう。それでも政治家や官僚は動こうとせず、手をこまねいて見ている。

 真っ当に考える私としては気が気ではない。私が政治家なら、国民に国の財政事情を正直に説明し、行動する。まず、歳費を削り、借金がこれ以上増えないように手を打たなければならない。しかし、政治家も官僚もそういう方向には進まず、増税だけを考えている。どう見ても真っ当に考えているとは、とても思えない。

 企業の経営においても同じことが言える。経営で一番大切なのは顧客の要望に応えることである。これは商売の根本だと思う。顧客の要望に応え、顧客を創造しない限り、商売は出来ない。店を開けていればお客様は来て当然、売れるのは当たり前と考えるのは大間違い。去年と同じことをやっていたら、お客様はどんどん減って行くのだ。当社では経営理念の第1番目に「顧客の要望に応え、顧客を創造する経営」を揚げている。

 常に顧客の要望に応え、顧客を創造する経営をしてきたので、今日まで何とか生き永らえることが出来た。真っ当に考えると、世の中や社内の不備が目につく。小郡商事に入社したての頃、社内の非効率な所が目についた。そこで、「ああした方がいい」「こうしよう」といったところ、6人居た古参社員が次々に辞めて行った。これには参ったが、真っ当なことを言うことだけは止められない。

 日本の人口が減り、少子高齢社会に突入したことは誰の目にも明らかである。これは真正面から受止めなければならない。とすれば、企業経営の行きつく所はグローバル化である。企業はグローバル化しなければ生き残れないのである。

 それなのに、デフレになったのはグローバル化のせいだとか、グローバル化を悪者に仕立てるエコノミストがいる。とんでもないことだ。真っ当な考えで世界を見て歩けば、グローバル化待ったなしであることはすぐ分かる。

 今、アジアには中国、インドなどの台頭により、中産階級が15億人?20億人生まれようとしている。企業にとっては最大のチャンス到来である。特に日本の企業にとっては、すぐお隣りに巨大な市場が出現したようなものである。勇気と元気がわいて来る。

 真っ当に生きれば、怖いものはない。

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