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【言いたい放題】ベステラ 代表取締役社長 吉野佳秀

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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民主主義には限界がある

民主主義には限界がある

(企業家倶楽部2011年4月号掲載)

 先日、経営者仲間と今の日本の閉塞感を打開するために経営者の中から総理大臣を選ぶなら誰がいいだろうかという話になった。何人かの社長の名前が挙がったが、誰かがソフトバンクの孫正義社長はどうかと切り出した。すると誰も何も言えなくなり、満場一致、孫社長が適任だろうということで決着が付いた。

 ボーダフォンを買収し、ガリバーのNTTと正面から勝負できる経営者はそうはいない。孫社長くらいのはったりが利き、実行力のある人物でなければ、大改革は成し遂げられないだろう。企業家のような強力なリーダーシップと世界観がなければ、日本を変えることはできないのではないか。

 現在の政治にあまり期待をしすぎてはよくない。中途半端に駄目なのは一番良くないのだ。いっそ最悪の状態まで落ちてしまった方が解決の糸口が見えてくるのでは、とさえ思えてくる。さらに言うと、民主主義は唯一絶対のシステムではない。衆議院と参議院があり、さらに地方議会まであり、選挙が終わったと思ったら、またすぐに選挙がある。私たちは民意を反映するには民主主義がもっとも適していると神の如く信じ、慣れ親しんできた。しかし、民主主義の欠点は時間と手間が掛かりすぎる。小泉政権では自民党が300議席を取り、郵政民営化を進めた。次に民主党がそれを超える議席を得て政権交代を成し遂げたが、日本の景気は良くなったといえるだろうか。民主主義で景気は回復するか疑問だ。

 1997年にタイのバーツの値下がりがアジア各国に飛び火し、特に被害の大きかった韓国は経済が大打撃を受け通貨危機に陥った。米国の投資家が短期に株の売買をして、一気に引き上げたことが原因だった。国際通貨基金(IMF)の介入で現代グループなど財閥解体や不良債権の焦げ付いた銀行の再編などの荒療治を行い、あっという間に危機を脱した。韓国は失敗から学び、例えばサムスンは5000万人の国内市場だけで商売をするのではなく、世界市場で製品を売っている。日本の携帯メーカーが独自の規格や技術開発にこだわり、世界市場で通用しないガラパゴス現象になっているのは、愚の骨頂だ。

 韓国は大統領制なので、日本の総理大臣より権限が大きい。李明博大統領が自ら陣頭指揮を取り、国を挙げてのトップセールスで中東の原子力発電所を受注したことは記憶に新しい。日本は技術力では勝っているが、ビジネスで負けている。日本は行動が遅すぎるのだ。決定までの過程が慎重すぎて、交渉事に時間が掛かることが海外企業から嫌気されている。さらに、民主主義の対極にある共産主義の中国が今や世界経済を牽引している事実から日本は何かを学ばなければならない。

 アメリカの投資家で現在はシンガポール在住のジム・ロジャーズが日本再生の3つの選択を掲げている。1つ目は少子化に歯止めをかけ、子供を増やす政策を取る。2つ目は、1000万人規模の移民を受け入れる。3つ目は、今の生活レベルを2から3割落とす。しかし、日本人はどれも選択していない。このままではジリ貧になってしまう。

 日本再生を適えるためには、政治は衆議院と参議院の二院制の是非、政党の枠組みなども含めて一度白紙に戻すくらいの大なたを振るわなければ変わらない。経済は内弁慶ではいけない。ガラパゴスを捨て、世界に出て行くしかない。円高を利用して、グローバル企業と資本提携することだ。世界市場で売れるように一緒にモノづくりをした方が良い。若い人にはどんどん海外に出て、度胸を付けてもらいたい。

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