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ウェザーニューズ 代表取締役社長 草開千仁

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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Weather Never Sleepsの精神で気象革命を実現したい

(企業家倶楽部2009年10月号掲載)


ウェザーニューズの新卒採用1期生として入社し、2006年9月に代表取締役社長に就任。東証一部上場企業の若手経営者として注目を集める草開千仁氏は「我々の強みであるオリジナリティーとイノベーションで、気象革命を実現したい」と熱い思いを語る。(聞き手は本誌編集長 徳永卓三)

石橋と出会い天職を見つける

問 草開さんは、ウェザーニューズの新卒採用1期生だそうですね。

草開 そうなんです。私は1987年ウェザーニューズに入社しました。入社前から気象に興味があって、就職活動中にオーシャンルーツ(現在のウェザーニューズ)を知ったのです。そして会社訪問した時に、石橋と出会ったのです。

問 石橋さんの第一印象を覚えていますか。

草開 今でも覚えているのですが、石橋からは「働き方にはふたつある。ひとつはプライベートの時間はほとんどないが非常に充実した仕事をする人、もうひとつは仕事は楽しくないけれどプライベートの時間がたっぷりある人生を過ごす人。君はどちらを選ぶ?」と聞かれました。

問 どちらと答えたのですか。

草開 私が答える前に石橋が「もちろん君は前者だと思う」と言ったのです。「え、まだ私は答えていないのに」と思いました(笑)。「何故だと思う」と聞かれて、「分かりません」と答えたら、石橋は素敵な笑みを浮かべながら「Weather Never Sleepsだからだよ」と言ったのです。「気象会社に来る人間は、天気が好きだ。気象は24時間眠らない。だから、気象が好きな人間は24時間365日仕事のことを考える人なんだよ」と。そしてさっそく「アルバイトでもいい。明日から来なさい」と。

問 Weather Neversとはいい言葉ですね。

草開 その言葉が私も非常に印象に残りました。就職活動の真っ只中でしたから、アルバイトするよりも早く内定が欲しかった。しかし、せっかく誘われたので、約1カ月間アルバイトをしたのですが楽しかった。コンピュータで新しいプログラムをつくれば、社員の方たちがとても喜んでくれて、頑張れば頑張った分だけその成果が返ってきました。仕事の内容は面白いし、この会社で自分はやっていきたいと強く思いましたね。当時はオーシャンルーツからウェザーニューズに変わるときで、私はウェザーニューズの新卒採用1期生として入社したのです。

石橋の魅力は無常識人であること

問 草開さんは2006年の9月に社長に就任しました。社長に就任された時はどう思われましたか。

草開 常務や副社長を経て社長に就任したので、社長という役割に就いたという認識でした。石橋をサポートする機能がこれまでよりも増えるという意味です。例えば、決算発表や記者発表などで石橋の代わりに私が説明し、石橋には別の仕事に時間を使ってもらう。

問 お二人の役割分担について詳しく聞かせていただけますか。

草開 石橋は中長期的な視野で事業に取り組み、私や他の取締役も含めた経営陣は短期から中期目線で仕事を担当しています。短期、中期で足元がぐらつかないように支えるのが私の役割だと考えています。

問 石橋さんの企業家としての魅力は何でしょうか。

草開 無常識人であることです。石橋は普通では考えられないことを平気で提案します。でもそれこそがイノベーションを生み出し、革新的なことができる。石橋のものの見方や捉え方が、常識的になりがちな私にとって非常に勉強になりますね。

問「これは無常識だ」と思ったことは何でしょうか。

草開 例えば、超小型観測衛星「WNI衛星」プロジェクトの構想です。普通なら、気象庁の仕事だと考えます。それを自分達で上げようという考えは無常識ですよね。もちろん石橋は裏打ちされたビジネスの面での計算と、技術的なイノベーションの可能性があった上で言っています。だから非常識ではなく、無常識なのです。そこがとても尊敬しますね。

3つの大規模なプロジェクトが始動

問 ウェザーニューズは世界最大の総合気象情報サービス会社へと成長を遂げています。成長の要因をどう分析されていますか。

草開 3つの成長フェーズがあると考えています。まず創業から10年目までの第1成長期は、気象サービスがどういう業界や分野で活用できるのかを把握することに力を入れました。とにかくお客様から声がかかればどこにでも行くと言う10年でしたね。最初の10年で30程度の業界でニーズがあるとわかったので、次の第2成長期の10年は各業界の市場ニーズを顕在化することに注力しました。

問 その中で培ったウェザーニューズの強みは何でしょうか。

草開 第2成長期までは、間違いなく営業力です。一般的に気象のイメージというと、「晴れか雨か」なので、その結果にお金を払うという考えはなかったのです。我々はそれに対して「気象の情報を得ることは大変価値がある」とお客様に理解していただく必要がありました。苦労もしましたが、だからこそ気象サービスを説明できる営業力が我々の強みになったのです。今ではウェザーニューズの知名度やブランド力も出てきたので、第3成長期は、サポートや運用などのサービス力、そして新しいコンテンツ力が決め手になります。

問 第3成長期の現状と目標を詳しくお聞かせください。

草開 第3成長期は、収益性を重視しています。これは利益を上げることが目的ではなく、自分たちがやりたいことに挑戦するための原資を手に入れたいからです。いままではSI(システムインテグレーション)事業の売り上げが伸びていたのですが、SI事業は継続的な収益が得られにくい。そこで消費者向けの携帯電話ビジネスなど、継続的に高い収益を稼げるトールゲートビジネスに力を入れています。その結果、収益も上がってきました。第3成長期は次なる技術革新のために収益を上げ、今後は満を持して今まで溜めてきたアイデアに挑戦していきます。

問 どのようなアイデアを構想されているのですか。

草開 大規模なプロジェクト構想が3つあります。1つ目は、WNI衛星プロジェクトです。海氷を独自で感測する超小型衛星を2010年に打ち上げる予定です。例えば、北極海の氷を把握し、北極海航路の運航支援などを手がけていきたいと考えています。2つ目は、個人向けサービスの拡充です。例えば、ゲリラ雷雨を監視する気象コンテンツなどを確立し、サポーターの皆様とともに新しい気象コンテンツを次々に創造したい。3つ目は南極観測船の「しらせ」を千葉に持ってくることです。しらせを沿岸に置いて、環境や起業をテーマに多くの人々が集まる場を作ろうと考えています。これからも夢を持って、新しいことにどんどん挑戦していきたいですね。

P r o f i l e

草開千仁(くさびらき・ちひと)1965年3月18日生まれ。87年青山学院大学理工学部物理学科を卒業後、株式会社ウェザーニューズに入社。営業本部CSS(カスタマー・サービス・サポート)事業部長、防災・航空事業本部長、常務取締役、代表取締役副社長を経て、2006年9月に代表取締役社長に就任する。

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